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ウターンに迫る悪の手


 ムラサメがウターンのギルドに加入してから三カ月が経過した。もともと転生前に人助け、もとい何でも屋をやっていたムラサメにとってギルドの仕事は天職だった。数々の依頼をこなしては、リミス以外のギルドの戦士ともコミュニケーションを取り、打ち解けていった。だが、その輪の中にロマクはいなかった。


 ムラサメは付近でグループを組んで各地を襲うゴブリンの群れの討伐を終え、共に戦ったギルドの戦士と食事をしていた。そんな中、ムラサメはロマクがしつこくリミスに話しかけるのを見かけた。


「あいつ、まーたリミスを口説いてるよ」


「本当に懲りない奴だなぁ」


「俺、ちーっとあいつを叱ってくるわ」


「おー」


 ムラサメは席を立ち、ロマクの元へ向かった。


「嫌よ。あんたと一緒のパーティーには入らない」


「どうしてさ? 君も僕の実力は知っているだろう?」


「私の力がなくても、あんた一人でも戦えるじゃない。私とこの剣の力に頼りたいって本性はバレバレなのよ」


「そんなことはないさ。頼むよリミス、僕と一緒に組んでくれ」


「おいロマク。テメーいい加減にしたらどうだ?」


 リミスとロマクの間に入るように、ムラサメが割って入った。リミスは小さくありがとうと言って、その場を去った。ロマクはリミスを求めるように手を伸ばしたが、ムラサメはその手を掴んだ。


「毎日毎日こんなことしてよくもまぁ飽きないな。何度も告白しても結果は変わらないぜ」


「チッ、うるさい! 格下のくせに!」


 ロマクは叫びながら、ムラサメの手を振り払った。


「お、どうした?」


「喧嘩か? もっとやれ!」


「ムラサメ、あの野郎を一発ぶちのめしてやれ!」


 周りに集まったギルドの戦士たちが、ムラサメとロマクを煽った。ムラサメはため息を吐き、ギルドの戦士にこう言った。


「煽るなよ。俺はこいつの顔面を殴りに騒ぎを起こしたわけじゃない。とりあえず、この騒動はこれでおしまい。ロマク、またしつこくリミスに言い寄るようなら、上に伝えるからな」


 と言って、ムラサメは去って行った。ギルドの戦士にどうして喧嘩をしなかったと言われるムラサメの背を見て、ロマクは悔しそうに歯を食いしばった。




 後日。ムラサメはリミスと一緒に薬草採取の依頼を終え、ギルドに戻っていた。


「薬草採取の依頼も久しぶりな気がするなー。いつもはモンスター相手に戦ってたから」


「モンスター退治じゃなくて悪かったわね。たまにはのんびりするのも必要よ」


「俺も同意見だ。騒ぎがない日が一番いい」


 話をしながらギルドセンターに入ると、入り口付近でギルドの戦士たちと役員が騒いでいた。


「何かあったのかしら?」


「様子を見に行ってみようぜ」


 ムラサメはリミスと一緒に人だかりの中央へ向かった。そこには、ギルドの役員に話をしている負傷したロマクがいた。


「ロマク。あいつは確か、ゴリマーチョと一緒に近くにいる裏ギルドを倒しに行っていたはずじゃあ……」


「裏ギルド? ああ。確か悪い奴らか」


 ムラサメがそう呟くと、ロマクがムラサメとリミスの存在に気付き、近付いた。


「リミス……大変なことになった」


「何かあったの?」


「その様子だと、裏ギルドを討伐するために向かったけど、返り討ちにあったみたいだな」


 その言葉を聞いたロマクはムラサメの方を向き、睨んだ。視線に気付いたムラサメは手を動かした。


「おいおい、バカにしているわけじゃないぜ。誰だってミスはする」


「あんたは無事みたいだけど、他の戦士は?」


 リミスの言葉を聞いたロマクは、少し間を開けてこう言った。


「剣士のサラナイと魔法使いのクジマが重傷を負って病院に。ゴリマーチョは……」


 ロマクが口を閉じた瞬間、役員がロマクに近付いた。


「戦闘現場を確認した戦士、アクスアさんから連絡です。皆さんが逃げる時間を稼ぐため、現場に残ったゴリマーチョさんですが……ズタズタに切り刻まれた状態で死んでいるのを発見しました」


 役員の言葉を聞いたムラサメとリミス、ギルドの戦士たちは驚いて声を上げた。だが、ロマクは表情を変えなかったが、下を向いて悔しそうに唇を震わせていた。




 その後、ムラサメとリミスは負傷したギルドの戦士たちが運ばれた病院へ向かった。ムラサメが病院の役員に話をすると、運ばれたサラナイとクジマがついさっき、息を引き取ったと報告を受けた。


「そんな……」


「そんなに酷い傷だったのか」


 ムラサメがこう言うと、病院の役員はムラサメに近付いた。


「ええ。二人の体中には無数の切り傷があり、背中には銃で撃たれた跡がいくつもありました。火の魔力を使う人がいたのか、火傷の後も多数見られました」


「サラナイとクジマは結構なベテランの戦士よ。私も一緒に戦ったことがあるけど、あの二人を倒すなんて」


「ロマクが戦った裏ギルドは、かなり強かったってわけだな」


 ムラサメがこう言うと、入り口から子供を連れた女性が走って病院内に入ってきた。


「私、ゴリマーチョの妻のリラーチョと申します。夫は、夫はどこにいるんですか⁉」


「落ち着いてください奥さん。旦那さんは……霊安室にいます」


「そんな……」


 ゴリマーチョが死んだことを知ったリラーチョは、その場で泣き崩れた。


「ねぇ、お父さんはどうしたの? ねぇ、ねぇ?」


 自身の父親の死を理解できていない幼い子は、泣き叫ぶリラーチョに質問を続けていた。


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