裏ギルド討伐へ
ロマクのパーティーが返り討ちにされてから数日後。ギルドの役員はムラサメとリミス、ロマクとその同期の戦士であるアングを呼び寄せた。
「今日、皆さんを集めたのはゴリマーチョさんたちを返り討ちにした裏ギルド、アンガータイラントの討伐をお願いしたいからです」
「やっぱりその話か」
ムラサメは両手の拳を握りしめて呟いた。病院でゴリマーチョの妻が泣き叫ぶのを目撃したため、ムラサメはアンガータイラントに怒りを覚えていたのだ。リミスがムラサメの拳を触り、首を振った。
「今、ここで怒りを爆発させるタイミングじゃないわ」
「理解しているよ。あいつらのアジトで俺の怒りを大爆発させる。暴れてやるぜ」
「話を続けます」
ギルドの役員は咳ばらいをし、話を続けた。
「アンガータイラントは、ウターンから車で三時間ほどの山道付近に存在する洞窟をアジトにしています。奴らは誘拐、強盗、殺人などを繰り返すとんでもない極悪人です。こちら、資料になります」
ムラサメたちは役員から資料を渡されたが、ロマクだけは受け取らなかった。
「おいロマク、資料はいらないのか? 役員の人が作ってくれたのに」
「一度戦った相手だ。申し訳ないが、僕に資料は必要ない」
「そうかいそうかい」
無愛想なロマクを見て、アングは笑った。リミスはアングを睨み、笑っている場合じゃないと伝えた。
「では話を続けます。この前の戦いで、何人かの団員を倒すことができました。一部の団員は怪我を負っており、戦えない状況だと判明しています。そのせいで、奴らの戦力はかなり弱くなっている状況ですが、そのまま野放しにしておくと、怪我から回復した奴らはまた暴れ出します。それに、奴らは定期的に近くの町にやって来ては、バカなヤンキーや人の道を外した人に声をかけ、スカウトをしています。戦力もまた、回復するでしょう」
「完全復活するその前に潰すってわけか。分かりやすい」
ムラサメの言葉を聞き、ギルドの役員は頷いた。
「どうやら皆さんも話の意図を理解したようですね。これからアンガータイラントのアジトへ向かい、奴らを殲滅してください。緊急依頼です。ボーナスは弾みますし、リーダーであるワルザーを倒して捕まえたらボーナスはもっと出ます」
「イヤッホー! こりゃー張り切らないとな! ロマク、お前もそう思うだろ?」
「え? あ……ああ。確かにね。僕だけ生き残ったから、ゴリマーチョさんたちの仇討ちをしないとね……」
この時、リミスはやけにロマクの様子がおかしいと思った。ムラサメの<イビルアイ>のスキルを使って、何を考えているのか喋らせたいと考えたが、いくら何度も勧誘してくるしつこいロマクでも、変なことは考えていないし、ギルドの戦士だから信頼しないと。と思ったリミスは、考えるのを止めた。
「今から三十分後、駐車場に集まってください。あいつらのアジト近くまで、車で送ります。皆さん、十分に準備をお願いします」
「了解!」
ムラサメたちは返事をし、支度をするため部屋から出て行った。
アンガータイラントのアジトへ向かう車の中、ムラサメは何度も呼吸をしていた。リミスはムラサメが緊張しているのかと思い、心配になった。
「ねぇ、初めて人と戦うから心配しているの?」
「いや。どうやってアンガータイラントって連中をぶちのめそうか考え中。俺の<イビルアイ>を使うのもいいが、この時のために考えた技があるから、それを使おうかどうか……」
「技?」
「披露する時に披露するよ」
ムラサメがこう言うと、アングが笑い出した。
「ムラサメちゃんよぉ、悪いがそれは適わない願いだ。アンガータイラントは俺が全員ぶっ倒す。ムラサメちゃんもなかなか強いけど、俺の方が強いかもね」
「そうかい。俺より強いなら、頼らないといけないな。俺はこの快適な車の中で、リミスの乳を枕にして寝て待っているぜ」
「おいおい、少しはムラサメちゃんも働いてくれよ」
「どさくさに紛れて変なこと言わないの」
リミスはムラサメの頬を引っ張り、心配して損したと心の中で思った。にぎやかな車の中だったが、アンガータイラントのアジトが近付くにつれて口数は減った。
「余裕気取りだったけど、あいつらってゴリマーチョさんたちを殺したって言っていたよな?」
「そうだ。僕も一緒に戦ったが……あの時は、勝てなかった。奴らは……強すぎた」
「いざとなったら、俺が乳見せてあいつらを動揺させるから。その間に攻撃してくれよ」
「敵が全員スケベな男って決まったわけじゃないわよ! ゴリマーチョと戦った時のように、恥を捨てた戦い方は止めなさい!」
「勝つためには恥を捨てる!」
ムラサメの言葉を聞き、リミスは呆れてため息を吐いた。その時、車が止まった。
「あれ? アジトまではまだ距離が……」
「皆さん、前を見てください!」
運転手が叫んだ。ムラサメは前を見て、謎の集団が車に向けて銃を構えている姿を見た。
「あいつらがアンガータイラントか」
「まだアジトまでは距離があるのに」
「はは。早速俺の出番か」
アングは武器を座椅子の上に置き、車の外に出た。ムラサメもその後ろに付いて行く形で外に出た。
「おーい。俺は武器を持っていない」
「俺も持ってないぞ。そもそも、元から持ってないけど」
ムラサメとアングの言葉を聞いた謎の集団は、銃を構えたままムラサメとアングを取り囲んだ。その直後、ムラサメは<イビルアイ>を発動した。
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