やわらかなるホワイトデー生活♪①
バカなバカたちによるバカな日常(* ̄∇ ̄*)
以下の御話はとある県の、とあるワカメしか特産品がない名も知れぬ町の、これまた名も世間様ではあまり知られていないとある中学校での出来事を綴った、大いなるバカたちの物語である。
空が碧く晴れ渡り、すっかり山々が春の匂いに変わった三月中旬。痩せ形細面の黒縁メガネの男子中学生は独り、屋上設置の給水塔の網柵にしがみつき、そのコンクリートの縁を演台と決め直立していた。
『……あの、独り者にとっては災厄以外何者ではない、屈辱の忌まわしき【2月14日のバレンタイン・ドゥ・ウェーイ\(・o・)/】の災厄から幾星霜。気の移り変わりが激しいことに定評のある世間様は既に、【ホワイト・ドゥ・ウェーイ(/・ω・)/】の祭典を微笑みを以て迎え撃たんとしている。この暴挙に対し、我らが噛みつかないでいったい誰が噛みつくと云うのか!!』
「「異議なぁ~~し!!」」
同志と呼ばれた同じ背格好で同じ黒縁メガネを着用した男子中学生二人が、演台下から同意の意思を高らかに示す。
『ふむ。さて、屋上に集いし【ホワイト・ドゥ・ウェーイ(/・ω・)/叛逆同盟】の同志諸君。今日も今日とて我ら黒縁メガネの革命同志三人衆は、ヒトっ子一人いない校舎屋上でいつものようにたむろをし、叛逆の英気を養うため、命を懸けた宿命の【禁断のしりとり合戦】に全身全霊、『進め一億火の玉だ!』の合言葉を心に深く刻み付け!この難問に対し果敢に挑み掛かり、吶喊し粉砕し、命の炎たぎった雄たけびを咽びあがらせているのだぁー!!だぁー…!ぁー……。。』
自分でエコー音を声で演出しつつ、まことに悦に入った表情をリーダーメガネが足下の同志二人に見せつけた。
ん?【ホワイト・ドゥ・ウェーイ(/・ω・)】の祭典に義偽を申し立てる話はどこいった?
実は彼ら一同は、【ホワイト・ドゥ・ウェーイ(/・ω・)/】に深い関係性を持つ、麗しのカップル大量生産日【ヴァレンタインデーイ】に何ら関与出来ていなかった。と云うか、関与出来る要素が彼らには一切備わっていなかったのだ。
なぜならば、彼ら自身にモテる要素が絶無だったのだ……( ;∀;)
しかし、貰った!貰った!と喜んでいたチョコレートは、チョコでコーティングされただけの大辛のカレールーだったのだ。
阿呆は、いや黒縁リーダーっぽいメガネは、まったくそれと気付かず笑顔で食し、吐き下し、更には学年主任以下の先生に騒がしいと追いかけられて捕まり、十日間に及ぶトイレ掃除の刑に服されていたのだ。
斯様な屈辱、許されようか?いやさ、赦されていいわけがない!!
しかも、彼を貶めた犯人は、足下の同志二人であったのだからたまらない。
この話は、そんな傷心な彼の大いなる復讐劇でもあるのだ!!
閑話休題
『故にもし、この壮大にして神聖なしりとりに失敗すれば、そのものには死を与えねばならないのだ!!』
「いやいやいや!そんな重たいゲームじゃねーからしりとりはさ!!」
「もう!どっかの赤そうな党の書記長気取りメンドクサイ!!なんでもいいから早く次言えよ!」
『あ、うん、ごめんね。吾輩興奮しちゃった。。えっと次なんだっけ、毛だっけ??』
「「毛の話はすんな!!禿げたらどうする!!」」
『言葉だけで毛根死滅っちゃいそうなの?ごめんね。吾輩気を付けるね。じゃあ、毛じらみで』
三人のリーダー格らしい黒縁メガネは、あくまで〝毛〟に何かしらの性的なこだわりを持っていた。んで、ついでに、勝手に一人称が【吾輩】名乗りになっていた。
「んじゃ、ミミズ千匹」
「き、亀甲縛り?」
対する二人の黒縁メガネたちは、もはや〝毛〟のことなどどうでもよくなっていた。
バカだから、ついさっきのやり取りなぞ忘れてしまったのである。
しかし皆さまお気づきであろうか?そう、彼らが執り行っている“しりとり”はただの“しりとり”ではない。
思春期まっさかりの男子中学生らしい、〝禁断〟の【エロい言葉しりとり】に興じているのだ。
『両刀使い』
「医療プレイ」
「インポ、怖いよね」
『怖いな!ポ、、、ポ?!ポ、ポ?。。あっ!ポポ・ブラジル!』
「「誰!??!」」
『ププッ!ダメだね君たちは、世の中の勉強が全然足りないな。コホン!ポポ・ブラジルとはブラジル出身の有名なプロレスラーではないかね♪』
リーダー格メガネは薄ら笑い、これ見よがしにメガネのツルをクイっと持ち上げて見せた。
その顔は、腹立たしいくらいのドヤ顔である。
「「アホはお前だぁ!!エロ縛りはどこ行ったぁーー!!」」
【ボボ・ブラジル(1924~1998)本名ヒューストン・ハリス】は、アフリカ系アメリカ人。20世紀を代表するプロレスラーで日本での愛称は〝黒い魔神〟であった。もちろんブラジル出身でもなければリングネームも〝ポポ〟・ブラジルではない。〝ボボ〟である。
ちなみに、DBに登場する【ポポ】は、彼がモデルじゃないかとか言われたり言われなかったり、リングネームの【ボボ】が特定の地域では〝女性の大事なとこ♪〟を指す言葉なので、日本でのアナウンスは【ブラジル】で統一されていた事実は、また別の話である。
「「ボボってなんかエローい♪♪」」
『なら、しりとりはクリアだな!!』
「「アウトだよ!!」」
『なにゆえ?!』
現在時刻16:30。
この時間をもって、三人組のリーダー気取りだった勘違い黒縁メガネの復讐劇はあっけなく終焉を迎え、代わってこれより、同志二人による党規に則った私刑が執行されることとなった。
ちなみに彼らにより設立された【党】とやらは、いったい何を為すために産み出された党なのか、書記長気取りのメガネを除いた残り同志二人のあいだてはまったくもって意味不明であることは、公然の秘密であった。
ドンドコドコドンドン!ほっ!ドンドコドコドンドン!ほっ!
二人の同志のうち一人が指で鳴らすでんでん太鼓の音程に、もう一人が合いの手をいれ、たった二人ながら息のあったマスゲームをはじめ、リーダーメガネにグイグイ迫り出した。
『ちょっと待って!ちょっと待って!マジでアレ、吾輩にやらせる気なの?ねえノリじゃなかったの?ねえ!ねえ!ちょっと聞いて?!』
「海苔は有明産か江戸前でおいしいです我が党の元書記長」
「そうです。舌切り雀は糊にした米粒を喰らったからこそ、意地悪ばあさんに舌を抜かれたのです我が党の元書記長」
『えっ!?俺、今から舌抜かれる方向性なの??いや、違うの引っこ抜かれるのも嫌だけどさ!!』
過去・なんかぁ~リーダーぽかったぁ~元書記長メガネはぁ~。あまりのぉ~、事態に驚愕していたぁ~。
そう、事前に彼ら3人と取り交わした罰ゲームとの落差に彼は困惑していたのだ。そんな話、ボキは聞いていないと。。
だが、彼はまだ知らなかった。
変更点など実はなかったことを、そしてなにより彼の意見なぞに聞く耳をハナから持っていないことを……。
よって、直ちに刑は執行された。