1歳
1歳になったとき、アルフレッド父様もルミニア母様もなんだか忙しそうにしていた。
1歳になる前から忙しそうにしてたのだが、今日はそれ以上に忙しそうだ。
私も使用人に連れて行かれ、最高のおめかしをされる。
すると、美しいドレスを纏ったルミニア母様が自分を抱きかかえた。
どこかに速やかに移動する。
見るともっさりとファーがついた赤いマントを羽織ったアルフレッド父様がいた。
その異常なほどの威厳に「もしや」と今置かれた状況を判断する。
クリス兄さんとエメスト兄さんも今日はいつもよりもきっちりした服を着ていた。
ルミニア母様が抱えたままバルコニーの窓が開かれた。
バルコニーから見下ろす景色にはたくさんの人が押しよせ歓喜の声をあげていた。
「フルブラント・S・セレシアン・レア・ドミニク第3王子が誕生された」
式典の最中に聞こえてきた声だ。
やはり、自分は王子だったらしい。
式典後、たくさんの有力貴族に囲まれて盛大な誕生日会を開催した。
きらびやかな人々にたくさん話しかけられたが、普通の子供だったら嫌になり泣くようなものだった。
「アルフレッド」
会場にさほど大きくもない声が聞こえた。
しかし、国王陛下であるアルフレッド父様を呼びすてにできる存在なんているのだろうか。
幼いながらも首を向けその存在を確認する。
そこには車椅子のようなものに乗った白髪の老人がいた。
するとアルフレッド父様はそれを見て、さっと私を抱きかかえると連れて行った。
そしてにこやかに私をその老人に預けた。
老人は弱い腕でしっかりと私を抱きかかえ、嬉しそうに微笑んだ。
「よい目をしている子だ」
「でしょう父上」
なんと、私の祖父だったか。
この様子だとあまり長くはなさそうだな。
少しだけ不安になる。
「おやおや、怖かったかね?」
「普段は、この程度では機嫌を悪くしたりはしないのですが…」
心配したら勘違いされたので、そんなことないよと言わんばかりにニッコリと笑って見せた。
祖父はその笑顔にとても優しく笑いかけてくれた。
しかし、今まで気にしないことにしていたけれど、私はもう40を過ぎていたおばさんなんだよな。
精神年齢的にはそっちが強いものだから、無邪気に笑って見せたりお世話されたりが少し恥ずかしい。今もそれは変わらず、抱きかかえられているのも恥ずかしい。
まあ、今は赤子なのだからとわきまえる他ない。
「この子はきっと、お前の助けになるだろう」
「父上…」
何かを見極めたかのようにじっと私を見つめる祖父。
その目はどこかで見たことがあるようなそんな気がする。
賑やかだった誕生日会もお開きとなり、疲れ果てた私は父親の腕の中で眠った。