二人の兄
目の前には変顔をして笑わせようとする長男クリスと次男エメストがいた。
長男のクリスは父親譲りのシルバーの髪をミディアムショートにし、瞳は母親譲りのローズクオーツ、エメストは母親譲りのピンクゴールドの髪を長男のクリスよりも伸ばし、瞳は父方の祖父譲りの琥珀色をしている。
長男は現在7歳で次男は現在5歳だ。
なぜ分かったか、それは長男と次男の誕生日の方が先だったからだ。
私は11月の下旬生まれで、生前の記憶が正しければ射手座だ。
長男は8月上旬のしし座、次男は5月中旬のおうし座だ。
だから誕生日祝いの時に年齢が7と5であることが分かったのだ。
クリス兄さんは貴族の通う学院、生前でいうなら小学校のようなところにいつも勉強しに通っている。今は二年生だそうだ。
剣技も学んでいることから、この世界の科学力は期待できないことが分かった。
…まあ、灯りが全て蝋燭なあたりで気がついていたことだ。
エメスト兄さんはまだ学院には通うことができないが、王家のお抱え教師に教えてもらっており、時にクリス兄さんとその知識比べをしては負けている。
私は生前中卒なので、勉強のほうは自信がない。
今回は行きたかった高校や大学、大学院あたりまでの勉強を思う存分できる。
これは願ってもみないチャンスだ。
「レアが笑った!」
「僕が笑わせたんだよ」
「絶対にクリス兄さんじゃないもん!」
生前は兄弟もいなかったから、賑やかでとても嬉しい。
どっちの変顔も楽しかったよと言いたげににこにこすると、二人もにこにこしていろんな話をしてくれた。
「クリスお兄さんが本読んであげるからね、エメスト何かリクエストある?」
「じゃあ、魔法使いのリッシュの本ー!」
「わかった!」
どんな絵本かなとワクワクして待っていると、絵本ではなくてそれ辞書でしょと言いたくなるほど分厚い本を持ってきた。
生前読んだことのある名前を呼んではいけないあの方とメガネの魔法使いの話の本が2冊分ぐらいの厚みはある。
彼らは勉強の賜物でなのか、難しい言葉もサラサラ読めるらしく、7歳とは思えない。
本の内容は、どこにでもあるおとぎ話というより実話を基にしたフィクションといった感じだ。
リッシュという男の子が魔法使いに弟子入りし、ある日死んでしまった師匠の仇を討つためにドラゴンに立ち向かうというものらしい。
しかし、決して子供向けというわけではないらしく、途中「返り血が~」とか「脳髄が~」とかなりグロテスクに描写されていた。
普通泣くよ、こんなお話聞かされたら。
しかし二人は全然平気そうで子供らしく怖がったりしないから不安になる。
「クリス様!」
するとメイドの一人がそれに気がついたらしく、本を取り上げ叱った。
どうやらこの本は子供は読んではいけない本だったらしい。
悔しそうなクリス兄さん、エメスト兄さんもつまらなさそうだ。
「だって普通の絵本ってさ、女の子ぐらいしか読まないもん…」
「ねー、冒険!って感じがしないんだもん」
ぶーぶー文句を言いながら「レアは楽しかった?」や「次はもっと面白いの持ってくるね」と懲りていないようだった。
頼むから心臓に悪い本はやめてほしい。
しかし、この世界での生き方や生き様は学べたと思うのでたまになら読みたいと思った。
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今日はルミニア母様と買い物だ。
買い物という名の見せびらかしだが…そこまで可愛いのか?自分の姿は見れないからわからないが。
買い物先は仕立て屋で、ベビー服を購入し、その場で着飾った。
少し窮屈だがこの程度はどうということはない。
ルミニア母様は女の子が二人欲しかったらしい。
一緒にお洋服を選んでみたり、可愛いドレスを着せてみたり、生前でいう双子コーデなどをさせたいそうだ。
もう一人頑張るからとルミニア母様は言っていた。
……何を頑張るのかは触れないでおこう。
洋服の他にもおもちゃを買いに行き、ちょっと大きめのガラガラを買ってもらった。
帰りはルミニア母様がいつもお忍びで言っているカフェに行き、少し休憩してから帰った。
外に連れ出されて分かったことは、意外にもこの王国は治安がいいということだ。
貴族やら身分やらがあると生前のようにはいかないだろうと思っていたが、この国はそういうことはなく、盗賊になってしまう人数も一番少ないらしい。
国王といってもそこまで堅苦しいわけではないそうだ。
少しだけ安心した。
家…というか城に帰ると、子供部屋のベビーベットに置かれ、おちおちハイハイの練習もできない。
まあ、大概メイド達がお世話しているので、ハイハイしたり掴み立ちをしたりするのは練習できるが…こんなもんだったのか?と生前の記憶を探ってもここまで放置する親は珍しいと思った。
しかし後で分かった。ものすごく忙しそうにしていたからだ。
来年から次男も学院なのだそうで、その準備でとてもじゃないが構えないとかなんとか…
ならなぜ外出したんだ母よ…
でもまあ、それだけ嬉しかったのだろうと気長に待つことにした。
幸いなことに精神年齢は分別のつくおばさんなのだから。
「学院行ったらクリス兄さんなんか越えてやるんだからな」
「できるもんならしてみろよ」
子供部屋で遊ぶ二人が言い合いをしてじゃれあって笑っていた。
なんだかとても微笑ましい兄弟だ。
外出のこともあり、疲れていたので小さくあくびをして眠った。
兄弟二人もあくびがうつり、目をこすってねむそうにしていた。




