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漆黒の風  作者: ST
一章 旅立ち
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3話 魔法の存在

今回は説明が多いです。

読むのがしんどいかもしれませんが、すいません……。

 ヤマトは家を出ると、其処には活気のある村があった。

 畑仕事は協力して行われ、井戸の周りには何人も集まり談笑していた。

 奥には綺麗な小川も流れている。


 部屋からも見えていたが、改めて外に出てみると青い空が広がっている。

 広場に出ると5,6歳ほどの子どもが元気良く走り回っていた。

 そんな光景を見ながら広場を進んでいるヤマト達に村の人が寄って来る。



「じーさん。その子が倒れていた子?」


「記憶が……? かわいそうに……」


「ここを自分の村のように思ってくれていいからね!」



 次々に声をかけられて戸惑うが、同時になぜか懐かしいと感じるヤマトは、自分も記憶が失う前はこんな村に住んでたのかもしれないと思った。



「どうしたの?」



 表情を和らげたヤマトに、セラが訝しげな表情を向ける。



「いや、いい村だなーと」



 この村を見る限り、みんな笑顔を浮かべて自らの仕事にとりかかっているので、思った事については誤魔化したが、いい村だとは本心から言った。

 そんなヤマトにソラが頷く。



「確かに三ヶ月前に初めてこの村に来たときはびっくりしたよ。――――バランにもこんな村があるなんて……」



 無法地帯のバランにしてみれば例えここが“バランの表”でも無法地帯には変わりないのだから、ここまで活気ある村は珍しいのだろう。

 最後の呟きはヤマトには聞こえなかった。

 記憶を失ったヤマトにはバラン地方の状態などわかるはずも無く、関心は別のところにいった。



「三ヶ月前? ずっとここに住んでたんじゃないのか?」



 ヤマトからしてみれば、さっきからこちらを見るや手を振ってくれるおばさんやアルに話しかけてくる人が多いので、てっきりこの村の住人かと思ったのだが、実際は違うらしい。



「冒険者というのは町から町に移動する時が多いからのう。冒険者を育てるわしとしては村や町を転々とするのも修行のうちじゃ」



 会話を聞いてたアルはヤマトにそう答える。

(ちなみにヤマトが寝ていた家は、昔の村長の家だったもので宿として活用している。三ヶ月前に村に盗賊が入ったらしいがちょうど同時にアル達が村に到着していて、盗賊を追い払ったお礼にと提供されたものだ)


「そういえば、冒険者っていうのは?」


「……そうか、記憶がないんじゃったのう」



 ヤマトの質問にアルが呆れながら溜め息を吐く。

 記憶がないので仕方のない事かもしれないが、ヤマトの質問はアル達にとっては当たり前の常識であるからだ。



「そうじゃのう……。冒険者とは旅をしながら資金を稼ぐ傭兵と思って置けばよい」


「へ~」



 ヤマトは歩きながらアルの説明を受けていく。

 そうするうちに村はずれの、草が生い茂る広い草原のような場所に来ていた。



「ここが修業に使う演習場じゃ」



「おお~~……!!」



 所々に地面が凹んでいるところがあったり、傷ついた木の丸太が立っていたりと確かに演習場っぽい。

 中々の広さを持つその演習場にヤマトは感嘆の声を漏らした。



「そういえばじっちゃん。稽古って主に何をするんだ!?」



 何時の間にやらアルの呼び方がじっちゃんになっていた。

 それを聞いてアルは小さく微笑む。

 しかし、それを気にしないヤマトは稽古について興味がますます高まって最も気になる部分をたずねた。



「うむ。自分の得意、使いやすい武器を知り、武器の扱いを身体で覚える……じゃ」


「…………。それだけ……?」



 普通とは違い、特殊な方法での修業を期待していたヤマトはあまりに当たり前な修業にがっかりした。



「もっと特殊な修業とかしないの……?」


「バカモノめ、基礎が大事なのじゃよ基礎が。」



「確かにそうだけどさ……」と、どこか納得してないヤマトの横ではロングソード(と言っても13歳の彼が扱えるような普通より小さいもの)で素振りしているサイの姿があった。



「ほれ、サイは文句一つも無くやっとるぞい?」



 してやったりとにやりと笑うアルに文句でも言ってやろうかと思ったヤマトだが、次々と武器を取り出しては準備運動をするセラたちを見て口をつぐんだ。

 ザックの場合は素手でシャドーボクシングをしているが……。



(……そういえば、武道家になるとか言ってたな~)



 そう思ったヤマトはザックから目を離し、他の場所に目をやった。

 そこには赤い髪を揺らしたセラの姿があった。


 セラが握っているのは四十センチ程の短剣グラディウス。(セラの武器もやはり子供が扱えるように細くされている)

 短剣は素早い振りと身のこなしを要するためサイよりも比較的速く振っている。


 その横には短めのショートソードを両手に持って舞いをしているロイの姿があった。

 ソラも黙々と木を的にして弓の練習をしている。

 そして最後にフィーネを見るが……。



「…………んん?」



 フィーネはなにやらアルと話し込んでいた。

 ヤマトは最初「休憩かな?」と思ったがそれにしても早すぎる。

 気になって首を傾げながらヤマトは二人に近づいた。



「フィーネは何をしてるんだ?」


「ひぁああ!!!」



 ひょいと顔を出したヤマトの声にフィーネは悲鳴をあげた。



「何してるか聞いただけなのに……」


「ご、ごめんなさい!」



 軽くへこむヤマトに涙目で謝るフィーネ。

 そんな二人の様子に苦笑を漏らしたアルが答えた。



「フィーネは魔法の才に長けておる“魔道士”での。魔法を習得をするための修行を行っておるんじゃ。」


「魔法!!?」



 魔法という言葉に顔を輝かせるヤマトはフィーネの方を向き…。



「じゃあフィーネも魔法使えるのか!?」


「ひぃぁぁぁ!!!」



 またもや驚かれてしまった。

 再度落ち込むヤマトに深々と頭を下げるフィーネ。

 二人の様子に今度は呆れるアルはフィーネの代わりに答える。



「フィーネも才能があると言ってもまだ修行を始めて一年。簡単なものしか出来んが……。フィーネ、まあ少し見せてやりなさい」



「あっあ……。わかりました……」



 アルの言葉でオドオドと前に出るフィーネ。

 その様子はさながら小動物のようであった。

 何が出るかと期待に満ち顔をフィーネに向けるヤマトにアルがにやりとして言った。



「よ~く見とくんじゃぞ。まずは魔法の初歩をフィーネが見せてくれるからのう」



 アルがそう言った瞬間、フィーネの周りの空気が変わった。

 ヤマトには彼女を中心にそよ風が吹くように感じた。



「燃えよ。炎弾ファイア



 突如小さい火の玉が前方に飛び、そして木に激突した。

 そして炎が木に燃え移り、激しく燃える。



「……!! ど、ど、どうしよう!!!」



 木に燃え移った炎は勢いを増して、一向に消える気配が無い。

 フィーネがオロオロしだしたとき……燃えている木の上に直径五メートルほどの水の球が現れ、炎を消した。



「そして上級者になり魔法に慣れると、詠唱無しで魔法を唱えることができる」



 目の前で魔法を見せられ、ヤマトは口をあんぐりと開けた。

 そしてしばらく経つとフィーネに駆け寄った。



「すげ~!! すげ~よフィーネ!!」


「ひぁぁ!!!」



 目の前の出来事に感激したヤマトはフィーネの手を握り、ずいっと身を乗り出した。

 当然驚くフィーネだが、ヤマトは興奮のあまり彼女の状態を考えることができなかった。



「あんな魔法を使えるってフィーネはすごいんだな!!!」


「で、でも……。おじーちゃんの魔法の方がすごかったし……」



 自分はせいぜい三十センチの火の玉を作るのが精一杯で、アルの魔法とをくらべると歴然の差があるので、尻込みするフィーネだったが、ヤマトはそう思ってなかった。



「何言ってんだよ! フィーネはたった一年で魔法が使えるんだろ!? 今は負けてるかもしれないけど、練習すればもっと上手くなるって! じっちゃんも言ってたけどフィーネは才能があるよ! 俺が保障する!!」



 ヤマトに散々褒められた為か顔を赤くするフィーネ。

 フィーネはその性格や周りの人間が皆優秀(?)であるから、自分に自信をもてないでいた。

 故に自分の魔法をヤマトにここまで褒められて嬉しい表情を浮かべた。


 ……しかしその隣では逆に白髪の老人が落ち込んでいたのだが。



「わしも褒めてもらってもいいと思うがのう……」



 項を垂れるアルがいたのでヤマトとフィーネは「しまった!」と慌ててアルに付け足し励まそうとする。



「あ……。じっちゃんもすごかったよ……」


「そ……そうですよ……」


「わしはついでなのかのぅ……」



 しかし、アルは気分を取り戻すどころか拗ねてしまった。

 頭を抱えるアルにどうしたもんかと顔を見合わせるヤマトとフィーネ。

 だが、一向に立ち直る気配の見せないアルに、もうどうでも良くなってきたヤマトは「そういえば……」と気になったことをフィーネに訪ねる事にした。



「魔法って誰でも使えるのかな……? 俺も使ってみたいんだけど……」



 目の前で魔法を見せられたヤマトは堪らず自分にもできるかを聞いてみた。

 そんなヤマトにフィーネは説明する。


 もともと魔法を習得する方法は二種類あり、一つは長い年月をかけて体の中に眠る魔力(魔法を使う上で必要なエネルギー)を少しずつ増幅させて魔法を習得する“修練”。

 大半の魔道士(フィーネを含む)がこの“修練”で魔法を習得する(長い年月と言っても、フィーネのように才のあるものはわずか半年で魔法が使えるようになる)。


 だが、これとは対照的に突然に自分の中の魔力が爆発し魔力が膨大に増えるもう一つの方法、“覚醒”がある。

 自らが危険な状態に陥った時、防衛本能が作用することによって急激に魔力が増幅するというものだが、だいたいは“覚醒”が起こる前に力尽き、さらには自らに宿る魔力が急激な増幅に耐えられるほどの物を有しておかねばならないため、“覚醒”によって魔力を得るのは本当に稀なケースである。


 フィーネの説明により今すぐ使えることができないのを知って落ち込むヤマトだが、こんど詳しく教えてくれるとフィーネが言った為、今度は嬉しそうに頷く。

 そんなことを話していると休憩の時間か、セラ達がヤマト達の方に近づいてきた。



「あれ? ヤマトとフィーネ、何だか仲良くなってない?」



 ソラの言葉にフィーネが頬を赤くさせる。

 ヤマトは魔法のことについて教えてもらっていたことをソラ達に話した。


 そのことにセラは傍目で苦い顔をしていたが……。

 ヤマトはそれに首を傾けた。

 その様子にソラが溜め息をついているのは何故だろうか。


 しかし、今のヤマトにはどうでも良かった……というよりそれ以上に気なったことがあった。

 なぜならその隣では……。



「――じーさん。何かあったのか……?」


「……どうせ……どうせわしなんて……」




 ……サイが見下ろすその先には、膝を就き、完全に拗ねているアルの姿があったのだから……。






次回は初めての戦闘に入ります。

といっても中々上手く出来ませんが……。

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