作戦会議と歯車
相変わらず昼頃に起き出した本条零は、遅めの昼食などを済ませてからVNOへとログインした。
ギルドホームの扉を開けると、リビングには相変わらずメンバーが全員揃っていた。
「おっす〜。……私が言うのもなんだけど、みんな昼間からログインしてて大丈夫なの?」
「なんのために平日に仕事を頑張ってると思ってるのよ! こうして休みに楽しく遊ぶためなんだからいいのよ!」
胸を張るカイゼの言葉に、全員深く同意するように頷いている。
これ以上この話題に触れると何か踏んではいけない地雷を踏みそうな気がしたレイは、すかさず話題を切り替えることにした。
「そ、そういえばギルド対抗戦の公式情報が出てたね」
「うむ、我らのギルドはかなり難儀な戦いになりそうだな」
「だね。特に私とレイは最初から位置がマップ全体に晒されるみたいだし、どうしたものかね」
「それなんだよね……私は範囲攻撃スキルを持ってないから、大勢のプレイヤーに一気に囲まれたら流石に厳しいかも」
「でもよ、プレイヤーを倒すことによる報酬もあるんだろ? そっちのことを考えると、悪い話ばかりでもねぇだろ」
そうして、ギルド対抗戦に向けた本格的な作戦会議が始まった。
「問題は当日どうやって立ち回るかだよね。レイがみんなの装備を新調してくれるから基礎スペックは上がると思うけど、私の弓じゃ多数を相手にするには限界があるし」
「そこは私の魔法でカバーできるんじゃない? 広い範囲攻撃も持ってるし」
「だな。カイゼとアイ以外は前衛で戦えるし魔法を打つ隙を作れはするだろ。……だが、一番の懸念はMP問題じゃねぇか? ひっきりなしに敵が来たら、ポーションを飲む暇すらねぇ可能性があるぞ」
「確かに。我らのギルドは最初から位置が2人も割れている関係上、他ギルドの軍勢が一斉に押し寄せて来てもおかしくないからな」
その言葉を聞き、レイは先日ドレッジの工房で手に入れたあのアクセサリーの存在を思い出す。
(MPか……まぁ、みんなには見せても大丈夫よね)
「MPなら何とかなると思うよ。カイゼ、とりあえずこのアクセサリーを貸してあげる」
そう言って、レイはストレージから【魔導輪廻】を取り出し、カイゼの手元へと差し出した。
「え?」
手渡された装飾品を目にした瞬間、カイゼの動きがピタリと硬直した。
「どうしたの? あ……もしかして、このゲームにこんな機械的なデザインのアイテムがあるとは思わなくて驚いた?」
「う、うん! ソウダネ……! コ、コンナハグルマヲツカッタアクセサリーガアルナンテ、オモワナカッタヨ……! ね、ねぇアイ!?」
「だ、だよね……! ケントマホウノセカイダトオモッタカラ、スッゴクビックリシタワー……!」
唐突に振られたアイも、ロボットのような棒読みで全力で同意する。
渡されたアクセサリーに使用されている歯車は昨日アジーンが欲しがっていたそれだったのだ。
しかし、幸いにもレイは単にデザインに驚いただけと受け取ったらしく、特に追求してはこなかった。
「で? このアクセサリー、一体なんなんだよ?」
ライカの問いに、レイはふふん!と誇らしげに胸を張る。
「ふっふっふ、聞いて驚くがいい! これは装備しているだけで、やばい速度でMPが急速回復する超チートアクセサリーなのだ!」
「ふ〜ん? その『やばい速度』ってどれくらい? しょぼかったら私の料理バフと大して変わらないわよ?」
「私が試しに使ってみた感じだと、MPを使ったそばから一瞬で補給されて、実質MPが減らなくなる感じだったね」
「「「「「……は!?」」」」」
その言葉を聞いた瞬間、メンバー全員の目が点になり、驚愕で口を開けポカンとしている。
「マ、マジで!? そんなアクセサリーなら、もういっそのこと私にこのまま頂戴!!」
「ダメに決まってんでしょ! 私が苦労して作ってもらったやつなんだから、欲しければ自分で探しなさい〜」
「ぐぬぬぬ……!」
悔しそうに身悶えするカイゼを横目に、作戦会議は続いていく。
「まぁでも、この【魔導輪廻】があれば魔法の乱発が可能になるし、敵プレイヤーの大群を返り討ちにするのもかなり楽になるんじゃない?」
「相変わらずレイは、どこからそんな壊れアイテムを手に入れてくるのだ……」
「だな! だがこれで迎撃の目処は立ったし、あとは欲を言えば宝箱もガッツリ集めたいよな」
どのような特殊フィールドになるかは当日まで不明なため、ひとまず「押し寄せるプレイヤーを返り討ちにしながら、周囲のモンスターや宝箱を回収していく」という作戦会議した意味があったのかわからない基本方針が決定した。
「そういえば……昨日カイゼとアイは二人でどこに行ってたの?」
「ふんだ! アクセサリーくれなかったから教えませ〜ん!」
「はぁ……まぁ、ちょっと気になっただけだから別にいいけどさ」
ぷいっと横を向くカイゼに苦笑しつつ、レイは立ち上がった。
「で、この後はどうする?」
「とりあえずレベル上げを兼ねて、東側の森の探索に行こうぜ。例の『鮮血の花園』とやらも探してぇし、あの森ならまだ他のプレイヤーも全然入ってねぇからな」
「そうだな。あの森の広さは相当なものだ。未踏のダンジョンなどもたくさん眠っているだろう」
こうして、シーカーズの一行はギルド対抗戦前の総仕上げとして、東側の魔境エリアへの攻略へと繰り出すのだった。
◆
「アハハハ! このアクセサリーほんと凄い! 魔法が打ち放題だぁぁっ!」
「ちょっとカイゼ! そんな調子に乗って大技連発してたら、やばいモンスターが集まってきちゃうでしょ!」
「大丈夫、大丈夫! 周りに大きな足音とかもしてないしね!」
――しかし、そんな不用意なセリフは絶好のフラグでしかなかった。
ドシン……ドシン……!
「ヤバいぜ! こっちから何かすごい勢いでデカいのが来てる!」
「「「こっちからもだよ!!」」」
ライカの叫びに続き、バスタとオニオン、アイからも悲鳴のような声が一斉に重なる。
「ちょっとぉ! 一気に押し寄せすぎでしょ!? カイゼ! 責任取って全部引き付けて食べられてきて!」
「まさかここまで酷いことになるとはね〜! そんじゃ、私はお先に逃げるから……【黒より黒き漆黒の翼よ――】」
「おいーっ!? 一人だけ翼生やして逃げるのはズルすぎるでしょ!!」
――そんなドタバタ劇もありながら、一行は夜遅くまで森の探索を継続。
だが目ぼしい成果は得られず、森の圧倒的な広さと凶暴な恐竜たちに追い回された挙げ句、最終的には全員でサメに美味しく召し上がられて全滅し、この日の探索を終了するのだった。
実際にこんなアクセサリーがあったらゲームバランスの調整難しそう……




