表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/200

第八話「襲撃!伝説の戦士(中編)」・3

今回も長い上に、そこそこグロいです。

「お姉ちゃん、もしかしたら……なんだけど、襲撃してきたこの人達は恐らく――」


 そう言い掛けた瞬間、連絡通信魔方陣がガラス細工の様に粉々に砕け散った。そして同時、腹部に痛みを感じた。


「ぐっ!? うっ……ごぽぁ!?」


 急激な嘔吐感に似た物がこみ上げてきて、霧矛はたまらず口から何かを吐いた。それは、大量の血液。霧矛は腹部に感じる激痛に何とか耐えつつ、腹部の方に視線を送る。すると、腹部から真っ赤な鮮血がべっとり付着した何かが生えていた。いや、背中側から腹部にかけて貫通しているというべきか。恐らく、臓物の幾つかはダメになっているだろう。未だ尚、口から血がとめどなく溢れ出てくる。

 痛みに気を持っていかれぬように耐えていると、スッとメモ用紙が目の前に現れる。そこにはこう書かれていた。


『油断した……仲間に助けを請うとはな。だが、仕留めてしまえば問題ない。さて、霧矛殿。そろそろ諦めはついたか? 貴女が拙者に勝つなど到底不可能。なぜなら、拙者は強い……貴女達侑属性者の様に、力に頼らずとも戦えるのだ』


「ど、うして……そこまで、有属性者を……わたし達を、憎む……の?」


 最早視界が霞んできている。そんな中でも、これだけは聞きたかった。

霧矛の問いに対し、ジャックのペンを走らせる音が聞こえてくる。そして、再びメモ用紙が見せられた。

霞む視界と意識の中、霧矛は最期の気力を振り絞って字を読んだ。


『有属性者は拙者達の忌むべき敵だ。拙者達の主を殺した伝説の戦士、そしてその元凶を生んだ有属性者は皆殺しだ。無論、その関係者もまた同じ』


「わたし達は……殺してなんて、ないのに……」


『気づかぬのならばそれでも構わん。だが、その罪だけは贖ってもらうぞ』


 最早、こちらの言い分は無視の方向らしい。せめて道連れにするか、一矢報いる事が出来れば嬉しいのだが、生憎とそんな体力も残っていない。霧矛は途方に暮れて諦念した。


「……はぁ、もういいや。内臓の損傷が酷い……ゲホ、ゴホ! わたし、負けたんだ……」


『貴女が拙者に勝てると思っていたのか? だとしたら、それは思い上がりだ。二度とそのような考えなど、出来ない様にしてくれる!!』


 そのメモ用紙が最期だった。霧矛の体から腕を引き抜いたジャックは、長剣を二本抜刀した。


「うくっ……はぁ、はぁ」


 既にフラフラ状態の無矛は、朧気な表情で敵を睨んだ。視界がぐらつき、ジャックが何人もいるように見える。

と、瞬間鎧騎士(メタルナイト)――ジャックが動く。


ザシュンッ!!


 二本の長剣を薙ぐ。一本は霧矛の右足を切断し、もう一本は霧矛の左手を切り飛ばした。


「ぐぁっ!?」


 凄まじい激痛が二つ同時に襲い掛かる。が、その痛みで僅かに敵の標準が定まった。


――ここっ!!!!



ヒュンッ!!


 霧矛は無理やり最期の気力を振り絞り、残った手足で一矢報いた。


【――ッ!?】


 ジャックも予想だにしていなかったのだろう。霧矛の一太刀は、彼女の手元から離れてジャックの頭と体を断ち切り分断した。


――や……った。



 自分の攻撃が通った事に、霧矛は嬉しさと達成感を感じていた。が――。


ジュンッ!! ズパンッ!


 鋭い斬撃。霧矛がそれを視界で捉える事は出来なかった。ジャック同様首をはねられ、既にカカシ状態の霧矛の体は、後方へ倒れる。そして、真っ白な濃霧の広がる谷に、真紅の鮮血を噴水の様に撒き散らしながら、真っ逆さまに落下していった。


【あれぇ? もう片付いちゃったー? せっかく暇だから手伝いに来たのにぃ】


 不意に聞こえてくる少女の声。だが、鎧騎士は既にその声の主を知っているのか、平然とペンを走らせてメモ用紙を掲げた。


【ん?】


 小悪魔の様な格好をしている少女は、きょとんとした表情を浮かべてジャックのメモ用紙に書かれた文面を黙読した。


『貴女の仕事は終えたのか? レイラ……』


【もっちろんだよー♪ お兄ちゃんに心配されるほど、わたしはドジじゃないもんねぇ~】


『その”お兄ちゃん”というのは止めろ。そもそも、拙者達には血の繋がりはないのだからな』


 そっけない態度は見た目だけでなく、文面も同じだった。その態度が少々気に喰わないのか、レイラは頬を膨らませて抗議する。


【いいじゃん! 一応わたしたち、ディートヘイゴス一家って名乗ってやってるんだからさー! それに、あなただって内心嬉しいんじゃないの? ”剣丞さん”】


 その名をレイラが口にした刹那――。


ジャキンッ!!


【――っ!?】


 ありえない神速で、ジャックがレイラの喉笛に長剣の切っ先を突きつけた。一歩でも動けば喉を切り裂かれる事必須だ。

思わず息を呑むレイラ。同時、喉が動いたために少し切れて出血する。

相手が観念したのを感じ取ったのか、ジャックはメモ用紙をバッと突き出す。


『その名で呼ぶなッ!! 拙者はその名などとうに捨てた! 今はジャックだ。その事……ゆめゆめ忘れるな』


【な、何よ……ちょっとからかっただけじゃん。んなコトでいちいちキレないでほしーんですけど……】


 ジャックがそこまでムキになる理由が分からないレイラは、口調を変化させてボソリとひとりごちる。


『拙者の任務は終えた。これより帰還する……レイラはどうする?』


【わたしにはもう一つ任務が与えられてるからねぇ~。女性恐怖症……か。ふふっ、面白いコトになりそうだわ】


『せいぜい油断せぬようにな』


 そう言ってジャックは、一足早くその場から消失した。


【油断なんてしないっつーの。わたしを誰だと思ってるワケ? 超絶美少女夢魔のレイラちゃんだよ♪ きゃは♪】


 消えたジャックに対して陰口を叩いたレイラは、またもや猫被りな言動をすると、とある場所へと瞬間移動(ジャンプ)した。




――▽▲▽――




 時刻は真夜中過ぎ。ウィロプフロストの衛兵二人が、レイラに出会うより前。分厚い曇り空の一部に空いた大きな雲間から、淡い月の光が差し込む。それに照らされる巨大な建物のシルエット……。所々にポツポツと点在するのは、照明の光。

ここは自然が豊富なウォータルト帝国。水力を主なエネルギーにして文明を発達させている、元五大帝国の一つだ。

 現在、この場所に不穏な空気が流れていた。光在る所に影が在る。影の暗さは心を冷やし、闇を生む。心の穢れは憎しみとなり、命を削る事で暗黒と化す。

 だが、まだ彼らは気づいていない。かつての英雄に迫りつつある危機に……。


「明日も忙しいし、そろそろ寝ようかしら」


「ええ、それがいいです。夜更かしは美容の大敵ですからね」


「……学園に通っているのはいいけれど、七海……一人ぼっちで泣いていないかしら?」


「あの子ももう子供ではないのですから、大丈夫でしょう」


 蒼い髪の毛に青い双眸を持つ細身の少女と、殆ど同じ様な蒼い髪の毛に、これまた同じ様な青い双眸を持つ、グラマラスな女性。互いに腰元辺りまで伸ばした髪の毛を手で()きつつ、鏡を見ながら会話していた。風呂上がりで濡れた髪の毛は、とてもキラキラと輝いていて、青い髪の毛だけあって川のせせらぎの様に見える。まさに、二人が古の四帝族の一つで、水の力を操る霧霊霜一族の人間である事を体現していた。

 今より約一年前の二代目帝王就任式から多忙な日々を送っている少女――『霧霊霜(むりょうそう) 鳴海(なるみ)』。彼女は一つため息をついてこう言った。


「お母様、私……どうして七海みたいに特別な力を持たなかったのかしら?」


 娘にふとそんな問いをされて、母親である水恋は思わず全ての挙動を停止させてしまう。が、すぐに我に返って返答する。


「そ、そうですね……。やっぱり、遺伝子的問題もあるのでしょうが、運命ですかね? 恐らく、七海には七海の、鳴海には鳴海の、定められた使命とかがあるのでしょう」


 少しアバウトな気もするが、水恋にはこの回答が精一杯だった。すると、鳴海がさらに口を開く。


「では、お母様も何かの使命を帯びていたの?」


「え!? え、ええと……まぁ、その。この世界を破滅から救う使命……ですかね?」


 人差し指で頬をかきつつ、少々どもりながら答える水恋に、鳴海は嬉々としながら言葉を発する。


「知っているわ! 確か、第二次神人戦争を仲間と共に食い止めたのよね? すごいなー、私……お母様の娘として鼻が高いわ!」


「そ、そんな……そこまで褒められるような事ではありませんよ」


 娘があまりにも褒めちぎるので、水恋は照れくさくて謙遜する。


「お父様もその一人なのよね?」


「……ええ」


 お父様――刻暗の事をふと思い出し、水恋は彼に関するある事柄を思い出していた。

 今から十六年前……。まだ、鳴海と七海が産まれていない時代。第二次神人戦争をなんとか収める事に成功した伝説の戦士は、大事な仲間を二人失い、伝説の戦士の一人は、大切な従妹を失った。その大切な従妹というのが、刻暗の従妹である鎖神奏翠だった。

彼女は一人、浚われた父親と従兄の帰りを待っていた。それも、そこそこの力しか持ち得ない衛兵のみのタルマルーク王国の城内で。

最初は誰も思いもしなかっただろう。一度襲撃した場所に、まさか二度も訪れるなどとは。それに、最初の襲撃の時点で彼女は対象に入っておらず、あくまで目的物は彼女――奏翠の持つペア懐中時計だったのだ。

 だからこそ迂闊になっていたのだろう。よもや、二回目の襲撃の目標は、奏翠自身だったなんて。

 結局、たった二名ではあるが、その実力差は歴然であり圧倒的で、伝説の戦士の一人であろうと、刻暗一人では太刀打ち出来ず、成す術もなく目の前で奏翠を殺されたという。

その後、刻暗は虚ろな状態でウォータルト帝国を彷徨い歩いており、その道中偶然通りかかった水恋の妹、水歌に保護されたそうだ。

 そして、水恋達の補助もあって大分女性恐怖症も緩和し、現在に至る。


「思えば不思議ですね。女性恐怖症である刻暗さんが、まさか私と結婚して、あなた達を授かったのですから」


「そうだよね……お母さん達が結婚してなかったら、今頃私と七海は産まれてないんだもんね」


 水恋の言葉に、鳴海もなるほどと納得の声をあげる。


「人間どういう事がきっかけで、出会ったり結婚したりするか分かりません。もしかすると、こうして出会えたのも何かの縁? なんてのも、あながち本当なのかもしれませんね」


 ふとそのようなロマンチックな事を口にしだす水恋に、鳴海は面白そうに小さく笑った。


「何がおかしいのです?」


「ううん、何でもない」


 水恋の問いに対し、そう返す鳴海。水恋は何だかよく分からず、首を傾げた。

 と、その時だった。ドォンッ! と、異常なくらい大きな音が聞こえた。同時、凄まじい地響きが伝わってくる。


「きゃっ!?」


「くっ、こ、これは一体!?」


 鳴海が悲鳴をあげて頭を抱え込み、水恋が真剣な面持ちとなって事の対処につく。


「もしもし、これは何事ですか!?」


 本来こういった行動に出るべきなのは、二代目帝王となった鳴海の仕事なのだが、まだ就任して約一年ばかりのルーキーである彼女には、荷が重過ぎると判断したのだろう。水恋が慣れた手つきで連絡通信魔方陣を展開させて連絡を行う。


『水恋様、大変です! 何者かが帝国内に侵入してきました!!』


 魔法陣越しに悲鳴めいた女性の声が聞こえてくる。


「侵入者は何名ですか?」


 慌てる女性に対し、水恋は落ち着き払った様子で尋ねる。すると、女性が息を整えながら答えた。


『はい、一名です!』


「――っ!?」


 答えた人数に絶句する水恋。爆発の数は一つや二つではない。とても一人で爆弾テロめいた事をしでかせるとは思えないのだ。しかし、見張りの役目を担う警護の女性は確かに一人と口にした。彼女が嘘の情報を流しているとは思えない。それに、この反応から察するに、敵の姿を見たのだろう。とても声が震えている。


「敵の姿は見ましたか?」


『はい、とても大きいです! この城の大きさには敵いませんが、恐らく5Mはあるかと……』


 5M……確かにその大きさには驚愕せざるを得ない。一体何が目的でやってきたのだろう。


「人間なのですか? それとも人外?」


『……分かりません。暗がりでシルエットしか……ただ、人ならざる者の気配はします。既に死んでいるかのような……』


 そう女性が答えた刹那――。


ドドォオンッ!!


 一際大きな爆発音が、魔法陣越しと実際の耳で木霊した。轟く大きな崩壊音と響き渡る重低音。その二つが不気味な共鳴を果たし、ウォータルト帝国にいる帝国民全員を恐怖のどん底に(おとし)める。


「一体、何が起きているのですか……?」


 自分自身訳が分からず、水恋は自問する。すると、傍で頭を抱えて震えていた鳴海が震えた声で話しかけてきた。


「お、お母様……外で一体何が起こっているの?」


 その怯えた瞳に、水恋はとても本当の事を話せる状態ではないと判断した。


「何でもありませんよ。すぐに終わります……鳴海はここにいてください」


 そう言って水恋は武器を顕現させる。そして、その矛先を地面へ向けて軽く一突きした。同時、ペタンとアヒル座りをしている鳴海を取り囲うように、半円球のドーム状の水の膜が展開する。


「この水の性質は硬水ですから、そう易々と壊れはしないはずです。いいですか? ここから動いてはいけませんよ?」


 愛する娘に念押しすると、水恋は外へ向けて鋭い視線を向け、目的地へ向けて駆け出した。

その勇ましい母親の姿を見届けた娘の鳴海は、両手を組み。


「お母様……どうかご無事で」


 と、水恋の無事を祈るのだった。




外に出た水恋は、周囲を見渡して現状を確認した。そして、その凄惨な地獄絵図に目を見開いて唖然とした。

 美しい景観で有名なウォータルト帝国のあちらこちらが、爆発によって崩壊し、噴水なども原型を留めぬまで破壊され尽くしていた。

煌々と赤い炎が光を出しながら、あちこでもくもくと黒煙を立ち上らせている。

倒壊した建物の下敷きになった多くの女性達は、燃え上がる炎の光によって惨たらしい死体を晒されていた。

帝国民の住む家屋も、殆どが何か硬い物でもぶつけられたかのようにぺちゃんこになっている。人々の助けを請う声や、痛みに泣き叫ぶ声、家族と離れてしまった幼き子供の嘆き声が、鼓膜をやかましく震わせる。


「ひどい……どうして、このような事を……」


 あまりにも目を逸らしたくなるような悲惨な有様に、水恋は口元を手で覆いながら酷く狼狽した。先ほどまでの冷静さなど最早皆無。それほどまでにこれは異常だった。そもそも、これを一人でやったというのか? もしもそれが真実ならば、敵は十中八九人外だ。人の成せる業ではない。でも、襲撃の理由が分からない。鎧一族の仕業だとも考えにくいし、5Mもの怪物を使役していたという話も聞いた覚えがない。

 と、そこで水恋はふと思い出した。そういえば、以前フレムヴァルト帝国が襲撃された際、鎧一族が巨大な怪物を使役していたと言っていた。フレムヴァルトの凄惨な現場に赴いた事もある。しかし、あの現場と今目の前に広がる現場は、少し異なる。それに、怪物の足跡がない。これではまるで、浮いているかのようだ。

 と、その時、どこからともなく奇妙な声が聞こえてきた。


【うぷ~っくっくっくっく! ようやく見つけたよぉ、伝説の戦士】


「私に何の御用ですか?」


 気味の悪い野太い笑いに、水恋は怖気を感じながら巨体シルエットに尋ねる。すると、その宙に浮かんだボディをフワフワと浮遊させながら、謎の人物が口を開いた。


【そっけないねぇ~。わざわざ挨拶に来てやったのにさぁ~】


 肩を竦めやれやれという動作をする敵に、水恋は下唇を噛み締めると叫んだ。


「ふざけないでくださいっ!! このような挨拶許されませんっ!! そもそも、これが挨拶だなんて……。どうしてこのような非道な真似が出来るのですか?」


 とても道徳心のある人物とは思えない。まるで周囲にいる人間を物同然の様に扱っている節がある。


【うぅ~ん、それはねぇ……ボクちゃんが人間じゃないからさぁ】


 ソーセージくらいの太さがある人差し指をぶくぶくに膨らんだ顔の顎辺りに添え、男が言った。


「くっ、訳の分からない事をっ!!」


 冗談……そう思っていた。だからこそ、水恋は得物を構えて目前の敵に向かって振るった。水属性の衝撃波が三日月型を形成して巨大な標的に直撃――と思われたが、その衝撃波はまるで標的をすり抜けるようにしてそのままどこかへ行ってしまった。


「なっ――!?」


 信じられない出来事にさしもの水恋も動揺する。


【うぷ~っくっくっくっく! 君達ってほんっとバカだよねぇ? ボクちゃんは死んでるんだからそんな攻撃効くはずないのにさぁ~|】


 至って真剣な攻撃のつもりだった。しかし、敵にとってはそれがどうにも馬鹿げているように思えるらしく、水恋の攻撃に対して嘲笑した。


ひゅぅ~っ。


 ふと風がやってくる。しかし、なぜだろう。やけに嫌な風だ。まるで誰かの死を告げているかのような……。


――風といえば、風浮くんですけど……まさか、ううんそのような事ありえません! 悲観的に捉えてはいけませんっ!!



 どうにも周囲の凄惨な現場が視界に入ってくるためか、ネガティブ思考になってしまう。

水恋はそんな考えを払拭しようと首を激しく左右に振った。同時、それにつられて青い長髪が揺れ動く。


【うぷ~っくっくっく! どうやら、また一人お仲間が死んじゃったみたいだねぇ~】


 挑発めいたその言葉。と、ふと敵の方に視線を戻せば、その巨大な体躯を包んでいた漆黒のシルエットが取り払われていた。周囲で未だ燃え盛る炎の煌きが、その敵の全貌を顕にする。

 巨大な体躯はうっすら水色で、そのぶくぶくに膨れ上がった体には贅肉が余分についている。腹部が異様に巨大なためか、逆に顔が小さく見えてしまう。そして、何よりも一番の特徴は、宙に浮いている事よりも、その体が透けている事にあった。


「ど、どういう事……ですか?」


 酷く狼狽する水恋に、敵は気味の悪い笑い声をあげた。


【言ったでしょう? ボクちゃんは既に死んでる……死人――即ち幽霊(ゴースト)なのさぁ。冥霊族のディートヘイゴス一家が一人、ボブ=

ドムル=ディートヘイゴス。以後、お見知りおきを……な~んちゃってぇ。うぷ~っくっくっくっく!】


「め、冥霊族!? どうしてあなた方がここに!? それに、冥霊族が現世に現れるだなんて……ありえませんっ!」


【まぁ、驚くのも無理はないだろうねぇ。けどぉ、契約召還で顕現してるとしたらどうだい?】


 ボブにそう言われ、水恋はハッとなった。


「そういえば、以前聞いた事があります。嘗て滅んだ皇族の一人に、冥霊族と契約した方がいると……。まさか、あなたは」


【ご名答……ボクちゃんはその主に仕えてたのさぁ】


「仕えてた? ではやはり……最後の皇族、雅曇皇圓景楼は死んだのですね」


 ボブの言い方に疑問が解決したのか、水恋がそう口にする。すると、彼女の言動が気に喰わなかったのか、ボブがいきなり攻撃を仕掛けてきた。


ドォンッ!!


「きゃっ!?」


 自分の体を包み込める程の大きさがある手のひらから大量の爆弾を放るボブの攻撃を、水恋は小さな悲鳴をあげて躱した。


【おやぁ、躱しちゃったかぁ。面倒だからあまり躱してほしくないんだけどなぁ】


「躱さなければ死んでしまうではないですか!」


 崩れそうになる体勢を整えつつ、水恋が声を荒げてそう言った。


【そりゃそうさ。ボクちゃんは君に死んでほしいんだよぉ。この意味が分かるよねぇ?】


「さっきから気になっていました。どうして私を……この帝国を狙ったのですか?」


【はぁ? そんな事も分かんないのかい? 帝王ってのは馬鹿でもなれるんだねぇ。帝国はあくまでついでみたいなものさぁ。さっきも言ったように挨拶代わり。本来の標的は君だけで十分だったんだよぉ】


「なぜ私を?」


【正確には君達伝説の戦士さぁ。君達はボクちゃん達のボスを殺した。その責任はとってもらわなくちゃならない。この意味が分かるよねぇ?】


 首を傾げて理由を問う水恋に、ボブは口の端をつりあげて答えた。


「……死んで詫びろと、そう言いたいのですね?」


【おっ、そうだよぉ! 分かってくれたって事は死んでくれるんだね!】


「断固お断りですっ!!」


 歓喜の声をあげるボブに、水恋が間髪入れずに否定の言葉を口にする。


【もぉ~、何でさぁ】


 不満気にしかめっ面になるボブに、水恋が開口する。


「私は……いいえ、私達はあなた方のボスを殺していないからです! そもそも何を根拠にそのような事を言っているのですか?」


【なるほど……あくまでシラを切るんだねぇ。あんまりいい選択じゃないなぁ。けど仕方ない……知ってるよ? 君達伝説の戦士は、有属性者よりも優れている代わり、神力の暴走と呼ばれる状態になって怪物染みたパワーを出せるって。恐ろしいねぇ……それで今まで何人の人間を殺したんだい?】


「何を言っているのですか? あの力で誰かを殺した覚えなどありません!! 言いがかりはやめてください!!」


 あまりにも身に覚えのない事を言われ、水恋は憤慨して否定の言葉を述べる。

が、ボブは首を左右に振って言った。


【何でも暴走中は記憶が曖昧になるらしいねぇ。もしかしたら、その曖昧になっている間にサクッと殺っちゃったかもしれないよぉ~?】


 皮肉めいた口ぶりで不敵に笑むボブ。


「くっ……」


 言い返したい、その気持ちは十二分にある。だが、言い返せなかった。というのも、ボブの言っている事はいくらか合っているのだ。確かに暴走中の記憶は曖昧で、鮮明に覚えている部分は殆どと言っていいほど残っていない。つまり、もしかすると最悪誰かを暴走中に殺している可能性もあるのだ。

水恋は、もしも自分が誰か見知らぬ第三者を殺していたらと考えて表情を暗くした。

 と、その時、肩に誰かが手を置いた。そちらを見やれば、そこには見知った顔の人物がいた。


「しっかりしてお姉ちゃん! 敵にいいように惑わされちゃダメだよ! 気をしっかり持って! 例え神力の暴走を起こしたとしても、お姉ちゃんはそんなのに我を忘れて人を殺しちゃうような人じゃないでしょ?」


 両肩を掴まれ体を揺さぶられる。目を幾度か瞬かせてしっかりと相手を見つめる。


「……水兎」


 そう、必死に水恋に呼びかけていたのは、実の妹である『霧霊霜(むりょうそう) 水兎(みなと)』だったのだ。

水兎は姉に名前を呼ばれてコクリ頷いた。


「あの怪物に一人は危険だよ! 私達も加勢するっ!!」


「私……達?」


 妹が口にしたセリフの一部を反芻し、ふとその背後を見やる。そこには、同じく霧霊霜一族の血を引く少女達が各々武器を手に立っていた。


「水恋様、鳴海様は?」


「心配ありません、私の水結界で守ってあります」


 一人の少女の質問に、水恋が頷いて答える。


「ならば、心配ありませんね。それよりもこいつは……」


 目の前に浮遊する巨大な幽霊――ボブに、少女達が一層表情を険しくさせる。


【およよぉ? これはこれはぁ、霧霊霜一族のかわい子ちゃん達がぞろぞろいるじゃないかぁ。しかも、みんなとびきりのナイスバディ美少女ときたもんだ……じゅる。さっすが、女しか存在しない霧霊霜一族は、素晴らしいねぇ。ここに来て正解だったよぉ】


 十数人はいる霧霊霜一族の美少女達を見て、ボブは興奮気味に涎を啜る。


「水恋様……何ですか、あの気色の悪い幽霊は?」


 顔をしかめる少女の一人が水恋に問う。


「私にもよく分かりませんが、少なくとも人外なのは間違いありません。先ほど攻撃してみたのですが、通用しませんでした。恐らく、物理攻撃は全て無駄だと考えていいでしょう」


【聞こえてるよぉ、ひっどいなぁボクちゃんに対してキモいだなんて……。ま、それもご褒美と考えれば嬉しいかもぉ】


『ひぃ!?』


 はぁはぁと荒い息遣いをするボブのあまりにもいやらしい表情に、少女達が自身の貞操に危険を感じたのかザザッと後ずさる。


【うぷ~っくっくっくっく! そんなに怯えちゃってぇ~。怯えた顔もたまんないねぇ。君達の中からボクちゃん好みの()を見つけて、愛玩奴隷(コレクション)に加えてあげるねぇ?】


 ニヤニヤと下劣な笑みを浮かべたボブが、五指をワシャワシャと動かしながらにじり寄ってくる。それに合わせるように、水恋を含めた少女達が後退する。


「水恋様……一体どうすれば?」


「とりあえず攻撃ですっ!!」


 このまま後退し続ける訳にもいかない水恋達は、攻撃を繰り出す事にした。武器を構え、巨大な標的に向かって幾多もの水魔法の攻撃をお見舞いする。しかし、どれも標的をすり抜けてあらぬ方向に行ってしまう。


【むだむだぁ~! そんな攻撃、ボクちゃんには通用しないよぉん?】


 口元に手を当て嘲笑するボブ。その馬鹿にした様な態度に、水恋はムッとして再度攻撃を繰り返す。


【ぷっはっはっはっはっはっは! 無駄だって言ってるのに、君もしつこいねぇ~? そんなんじゃ、君も暗冷くんの二の舞だよぉ?】


「――っ!?」


 呵呵大笑するボブの野太い声。が、その言葉の中に、水恋は気になる言葉を見つけ出した。


「暗冷……くん?」


【およ、気づいたみたいだねぇ。そうさ、ボクちゃんはここに来る少し前にリーヒュベストを襲撃してきてねぇ? そこで戦ったのさぁ、お馬鹿な元帝王君とね】


「暗冷くんが……。ですが、それならどうしてあなたがここに?」


 不思議だった。同じ帝王であると同時、あちらには暗冷以外にも心強い戦士が数人いた。紫音率いる集団もいたはずなのに、それでも倒せていないのだ。本来ならば、傷一つついていてもおかしくないのに……。


【うぷ~っくっくっくっく! ボクちゃんが負ける? ありえないねぇ。ボクちゃんは一度死んで不死身なんだぁ。何者の攻撃もすりぬけてしまう。誰もボクちゃんを傷つけられやしないさぁ】


 くるんとカーブを描く口ひげをいじりながら、ボブが自慢気に威張る。


【いやぁ、ホント楽しかったよぉ? 暗冷くんなんて、実の姉二人と妻を殺されてもうカンカンだもの。いやぁ、あの時の顔……傑作だったねぇ~ぷっはっはっはっはっはっはっはっは!!】


 ゲラゲラと、贅肉たっぷりの腹を抱えて大爆笑するボブに、水恋は顔を俯かせてプルプルと震えていた。不意に、拳を強く握り爪が手のひらに食い込む。が、その痛みよりも今は、仲間を侮辱されて傷ついた心の方が、酷く痛んだ。


「お姉ちゃん……」


「水恋様……」


 仲間を馬鹿にされている悔しさに同情しているのだろう、悲しげな表情を浮かべて水恋の方に視線を向ける一族の少女達。

 すると、水恋が面をあげた。同時、キッとボブを鋭く睨めつけた。


【おぉ、怖い怖い……。うぷ~っくっくっくっく! 仲間を馬鹿にされて怒ったかい? でも残念……今時それだけじゃあ敵は倒せないんだよねぇ】


 ぶっといソーセージのような人差し指を振り子のように動かして、ボブが不敵に笑む。


「暗冷くんのお姉さんを……亜夜さんと咲夜さんを……そして、青嵐さんを殺したんですか?」


 わなわなと体を震わせながら、水恋はいつになく表情を険しくさせていた。その普段見ない表情に、周囲にいた一族の面々も息を呑む。


「水恋様が……あんなにも」


「お姉ちゃんのあんな顔、見た事ないよ」


 妹の水兎でさえ、姉の初めて見る表情には畏怖するしかなかった。

しかし、ボブは臆するどころか嬉々としてこう言った。


【ああそうだよぉ? ボクちゃんが殺しちゃった。伝説の戦士を殺すのはもちろん、その関係者も……って話だったからねぇ? うんと愉しませてもらった後に、大爆発させちゃったよぉ。うぷ~っくっくっくっく! あぁ、思い出しただけで笑えちゃうよぉ! ぷっはっはっはっはっはっはっは!!】


 やはりこいつが、仲間の大切な身内を殺したんだ。そう聞いただけで、もう耐えるに耐えれなかった。限界を、迎えてしまったのだ。心がズキリと痛み、その痛みが熱を帯びて周囲を蝕んでいく。蝕みは闇を生み、魔力を異様に増幅させた。


「す、水恋様っ!?」


 異変にいち早く気づいた一人の少女。その声に、水兎も目を見開き驚愕する。

彼女達の手前にいた水恋の体から、視認出来るおどろおどろしい闇のオーラが発生しているのだ。


「お、お姉ちゃん! 神力の暴走を起こしちゃダメだよっ!!」


 必死に叫ぶ水兎だが、既に正気を失っているのか、水恋からの応答はない。


【およぉ? それが噂に聞く神力の暴走かい? その様子だと、確かに正気に戻っても記憶が曖昧だってのも頷けるねぇ。けど、例え暴走したところでボクちゃんを倒す事は出来ないよぉ?】


「どうしよう……」


「水兎様落ち着いてください! そ、そういえば……水歌様はどこに行かれたんですか?」


 ふと一人の存在を思い出した少女が、水兎に問う。


「そうだ! 水歌ちゃんがいたんだ!!」


 そう、水恋と水兎の姉妹にはもう一人妹がいる。それが、三女の『霧霊霜(むりょうそう) 水歌(すいか)』。一族特有の水の力に加え、水恋同様水属性を所持している。


「どこにいるのか分からないんですか?」


「う~ん……水歌ちゃんは結構好き勝手に生きてるからなぁ」


 親指と人差し指で顎を挟むようにして、水兎が唸る。その言葉に、他の面子も納得の声を漏らす。

 と、その間にも水恋の神力の暴走は進んでいた。


「うぅ……ぐぅ……!」


 苦しむ様な呻き声をあげる水恋。だが、誰もその状態から開放してあげる術を持っていない。一族の少女の何人かは、悔しいのか下唇を噛み締め握り拳を作る。

 と、その時だった。


パシィッ!


 乾いた平手打ちの音。それはまるで、誰かの頬を叩いたかのようだ。そして同時、この場にいる霧霊霜一族の面々全員が驚愕して目を丸くした。目の前にいた水恋の体を包む禍々しいオーラが消失したのだ。

セミロングの髪の毛の左右を、貝殻をモチーフにした髪留めで結っているその少女は、少し目つきが鋭く強気そうな性格ではあるものの、どこか優し気な雰囲気が漂っていた。が、今は目の前にいる水恋に対し、怒りを示している様子だった。現にその片手は、水恋の瑞々しい色白の頬に薄桃色の紅葉を咲かせている。


「お姉ちゃん……何やってんの?」


 信じられないと言った口調で、少女が口を開く。

一方の水恋は、未だ現状がきちんと理解出来ていない様子だった。恐らく、記憶が曖昧になって必死に脳内処理を行っているのだろう。

そして、ようやくその処理が終了したのか、やや下向きになっていた顔をあげて目の前の少女を視界に捉えた。


「水……歌、さん?」


 そう、先ほど水恋の頬を平手打ちした彼女こそ、水恋と水兎の妹である水歌だったのだ。


「どうして、ここに?」


「当たり前じゃん、ここはあたしの故郷なんだよ? 故郷でいきなりたくさんの爆発なんて起これば、やって来るさ!」


 水恋の質問が馬鹿馬鹿しいとでも言わんばかりに、水歌が腰に手を添え嘆息混じりに言う。


【いきなり現れて何なのさぁ、君?】


「ふんっ、デブゴーストは黙っててくんない?」


 まるでゴミを見るかのようなキツい眼差しで、水歌が吐き捨てる。


【およよぉ、何だか変な扉が開いてしまいそうになる眼差しだねぇ。さっき、水恋ちゃんの事をお姉ちゃんって言ってたって事は……さしづめ君は妹ってとこかなぁ?】


「あんた如きに名乗りたくはないけど、ええそうよ。あたしは水恋お姉ちゃんの妹の水歌」


【ふぅん、君が……。君みたいな強気な女の子を愛玩奴隷(コレクション)にするのも悪くないねぇ。うぷ~っくっくっくっくっくっく!】


 口ひげをいじりつつ、水歌を品定めするかのように眺めるボブ。その視線が、舐め回すかのように感じたのか、水歌は嘔吐(えず)く真似をして口を開く。


「あんたなんかお断り! どうせならもっとカッコいい男の人がいいし! お姉ちゃん達も何やってんの? どうしてあいつをとっとと倒さないの?」


「水歌……そうしたいのは山々なのですが、少し事情がありまして」


 そう言って水恋が、疑問符を浮かべる水歌に事の顛末を説明した。


「――と、いうわけなのです」


「ふぅん、そりゃ確かに戸惑うわね」


 説明を聞き終えた水歌がなるほどと半眼を作って腕組する。


「ですから……無駄なのです。いくら頑張ったって……全て、水泡に帰すだけ」


「すぅ……、ぶぁっっっっっかじゃないのっ!?」


『――っ!?』


 ネガティブ発言する水恋の言葉をひっくり返すかのような大音量で、水歌が叫ぶ。


「お姉ちゃん、それでもあの伝説の戦士の一人なわけ? 信じらんないっ!! お姉ちゃん達は今まで、たくさんの無茶苦茶な敵を相手にしてきたじゃん! それでも頑張って、仲間と力を合わせて退けてきた……それなのに、こんなデブ相手に怖気づいてるわけ? そんなのあたしの知ってるお姉ちゃんじゃない! あたしの自慢の、霧霊霜水恋じゃないっ!!」


 息を継ぐ間もなく、一気に息の続く限りで思いを吐露した水歌。

そんな妹の気持ちを聞いて、水恋は感涙して涙を目じりに浮かべた。


「ぐす……そうですね。こんなところで怯むなど、元帝王の名が泣いてしまいますね。ありがとうございます、水歌。あなたのおかげで思い出せました。ようやく、本気を出せそうです!!」


 そう言って再度目の前に浮遊する幽霊(ゴースト)――ボブを強く睨めつける水恋。それに合わせる様に、水歌や水兎、霧霊霜一族の面々が敵をしっかりと網膜に焼き付ける。


【やだなぁ。そんなに見つめられたら恥ずかしいよぉ!】


 心にも思っていない事を口にし、顔面を両手で覆い隠すボブ。その仕草が癇に障ったのか、水歌がいの一番に攻撃に打って出た。

それにつられて一族の面々も次々に攻撃に打って出る。

 自分も動こうとしたその時、ふと連絡通信魔法陣が水恋の耳元に展開した。


「?」


 この緊急事態に何事だろうと、水恋は応答した。


「もしもし?」


『……はぁ、はぁ。もしもし、水恋お姉ちゃん?』


 聞こえたのは従妹――霧矛の声だったしかし、どこか疲労感の入り混じる声だ。何かあったのだろうか?


「はい、どうかしましたか霧矛? こんな遅い時間に……こちらは、少し手が離せない状況でして……」


 と、そう答えた瞬間、霧矛が声を荒げて叫んだ。


『な、何かあったの!?』


「実は、敵に襲撃を受けてまして……。ちょうど今、皆さんで撃退を試みています」


目の前で必死に戦っている妹二人や仲間の姿を見つつ、水恋が状況説明した。が、直後、不穏な空気が漂い始める。


『水恋お姉ちゃんもなの?』


「も? という事は、霧矛の方も襲撃を?」


 ふと疑問に思った言葉を口にする水恋。まさか、こんな怪物を向こうでも相手にしているというのだろうか? しかも、向こうはフォッグ・フォレストで一人しかいないのだ。人手が入用かもしれない。

と、水恋は霧矛からかいつまんで現状の説明を受けた。


「……そうですか。今すぐにでも助けに向かいたいのですが、なにぶん敵が強く」


『相手は何か言ってた?』


 霧矛の質問だ。もしかすると、何か気になる点があるのかもしれない。


「ええ、冥霊族のディートヘイゴスの者だと……。既に、リーヒュベスト帝国が襲撃を受けたそうです」


 役に立つかは不明だが、一応自分が知り得ている情報を霧矛に話す。すると、少し間が空いて霧矛が声を発した。


『お姉ちゃん、もしかしたら……なんだけど、襲撃してきたこの人達は恐らく――』


バリンッ!!


「きゃっ!?」


 突然だった。いきなり連絡通信魔法陣が粉々に砕け散って足元に散らばる。


「ま、まさか……霧矛の身に何か!?」


 確認しに行きたいが、今は目の前の現状をどうにかしなければならない。それに、元帝王という立場が、私情で動くのを躊躇わせていた。

というわけで、三部です。開始早々に霧矛が大変な事に。そして、レイラがジャックと合流。どうやら、彼に対して剣丞という言葉は禁句みたいです。そして、レイラが口にしていた女性恐怖症。これだけで次の標的丸わかりですねw

また、ウォータルト帝国のほうでも襲撃が。全員分の名前は公開してませんが、霧霊霜一族の美少女達がボブと戦います。この異常性癖所持者と戦わせたら大変な事になりそうで、気が気じゃないですね。さらに、ボブがリーヒュベスト帝国も襲撃したと聞いて、激おこプンプン丸どころかテラおこサンシャインまで行き着きそうな程激怒する水恋。ついには神力の暴走を引き起こしそうになる始末。と、そこにようやく三女が登場です。おそらく、初めてはここだと思います。口調がちょっと某王国のツンデレプリンセスみたいですね。

てなわけで、四部に続きます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ