表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/200

第六話「ロムレス学園」・2

 それから二、三分が経過して、ようやく茜が自分の分のオムライスを運んでくる。


「よしっ♪」


「ん、エプロン外さないのか?」


「あ、そだねー」


 俺に言われて思い出したように茜がエプロンを外す。同時、彼女の茜色の髪の毛がフワッと靡く。


「……」


「どーかした? ぼーっとしちゃって」


「あ、いや何でもない」


 思わず見とれてしまったとはいえない。とりあえず今はオムライスを頂こう。


「じゃあ、頂きます」


「どうぞ、召し上がれ♪」


 だからその不意打ちをやめろっつの!

 と、軽く俺は内心文句をいいつつ、スプーンで掬ったオムライスを口の中へ。


「お、美味しい」


「ホント? よかったー」


 俺の素直な感想に茜が嬉しそうに手を合わせる。


「ああ、卵がフワフワで口ん中で溶けるみたいだ」


「そー言ってもらえると、作った甲斐があったってもんだね」


 少し照れくさそうにしながら茜が俺を見る。


「茜も食ってみろよ!」


「うん♪」


 笑顔で頷いた茜は、俺に勧められるがままスプーンを口の中へ。


「ホント、自分で作っておいてなんだけど……美味しい!」


 頬に手を添えて嬉しそうにする茜。

 そうこうしてものの数分で俺達はオムライスを完食してしまった。


「ごちそうさま!」


「はーい、お粗末さまでしたー♪」


 俺が後ろに手を突いてふぃーと一息ついていると、茜が俺の分の皿を自分のに重ねてキッチンへ持っていく。

 何だかこうしていると夫婦に見えなくもない。いかんいかん、何を想像しているんだ俺は。

 ぶるぶると顔を左右に振り、俺はふと天井を見上げる。同時、今日の出来事が蘇る。

 廊下でばったり出会った謎の二人の少女。見知らぬ二人だが、あのおっとりした少女はどこかで会った覚えがある。だが、名前が思い出せない。

 青い髪の毛に青い瞳……。いや、青に近いだけで実際の色は違うけど。それに、あの豊満な胸に水のように透き通った白い肌。う~ん……。


「まーた考え事してるー。そんなに唸ってばかりいると、あっという間に老け込んじゃうよー?」


「大きなお世話だ。それより、風呂はいいのか?」


「うーん、だってここ男子寮だから大浴場使えないしー」


「じゃあ、いつもみたいにこの部屋の浴室使えば?」


「う、うん……。の、覗かないでね?」


「覗かねぇよ!」


 定番のセリフに俺はツッコミをかます。本来寮生はそれぞれの寮に設置されている大浴場を使う決まりになっている。だが、茜だけは例外だ。彼女が大浴場を使ってもしも他の男子生徒がいたら一大事だからな。

 なので、茜はこの部屋にある風呂を使う。ただ、この部屋防音対策というものが殆ど成り立っておらず、音が結構筒抜けだったりする。無論、隣室の声まで聞こえる訳ではない。聞こえるのはあくまでも浴室の音だ。

 例えば、シャワーの音だったり……。


「じゃあ、入ってくる」


「お、おう」


 わざわざ宣言する必要があるかは定かではないが、俺は一応返事をしておく。


「俺も大浴場に行くか」


 俺は男子なので大浴場を使おうが問題ない。なので、着替えを袋に詰めて肩に乗せ、部屋を後にする。一応防犯の意味で鍵をかけておくことも忘れない。問題があるとは思えないが、部屋に女の子一人は危ない。

 男子寮の一階についた俺は、大浴場の暖簾をくぐって着替えを置く棚へ歩いていく。そして籠に着替えを入れたその時、俺はふと視線を下にさげた。同時、渋面を作る。

 何故か、それには理由がある。その籠には、着替えの上に四角いメガネが置かれているからだ。確かに、それだけでは渋面を作る理由には不十分すぎる。問題は、かけている人物にあるのだ。

 とりあえず、俺はその人物に出くわさないように内心警戒しつつ、大浴場への引き戸を開けた。一気に熱気と湯気が体を包む。

 俺はタオルを腰に巻き、洗い場へ向かった。

 それから体を洗い、広い大浴場へ。

 この大浴場は、伝説の戦士の一人にも数えられている崖淵砕狼という人が作ったらしい。この夢鏡王国に存在する大きな露天風呂も、同一人物が作ったと言われている。


「ふぅー、あー一日の疲れが吹き飛ぶようだ」


「ふんッ、相も変わらずジジ臭い男ですね。あまり私に近づかないでください、老けます」


「老けるかッ!! ……ったく、出くわさないように注意してたのに、さっそく会っちまった。ホント、ツイてねぇ」


「それはこちらのセリフです。全く、よりにもよってあなたに出くわすとは、今日は私の厄日かもしれませんね」


 やけに丁寧ながらも皮肉めいた嫌がらせの言葉をぶつけるこいつは、俺と同じく中等部に通う三年生の男子生徒。

 『明見(あけみ) (ひかる)』、それがこいつの名前だ。初見の大半はこの名前のみを見ると女の子と思ってしまいそうだが、列記とした男である。その証拠に、こうして俺の隣に肩を並べて入っている。ホントは嫌なのだが、わざわざこちらから動くというのは面倒極まりないから却下だ。

 ちなみに、こいつに向かって光というのは厳禁(タブー)に近い。それは何故か……。なぜなら、名前を「ひかる」ではなく「ひかり」と思ってしまう人がいるからだ。だからこそ、名前だけを見ると女の子に間違われるのだ。

 これはあくまで俺の予想だが、こんなにもこいつと仲が悪いのは、光属性と闇属性で相性がよろしくないからだと思う。


「お前、未だにあの事根に持ってんのか?」


「当たり前です、よくも私に赤っ恥をかかせてくれましたね? あの雪辱を払うためにも、私はあなたに勝たなければなりません! 絶対にッ!!」


 その最後の一言の部分を強めて、光が気合を込める。


「無理無理、お前は冷静さを欠いたら点でダメなんだからよ」


「くッ、女子生徒と一つ屋根の下で暮らしている男に言われたくありませんね!」


「なッ、茜は関係ないだろ!?」


「そうやって青春を謳歌するのは構いませんが、はっきり言って真面目に勉学に励む者に対して迷惑です。即刻退学をお薦めします」


 腕を組み、俺にそのような事をお薦めしやがる光に、俺は憤慨してこう言ってやった。


「はッ、どうせ自分が真面目君でモテないから(ひが)んでんだろ? へん、ざまぁねぇな……優等生くん?」


「なぁにぃうぉ~!?」


「やるかぁ~!?」


 額を擦り合わせ、メンチを切り合う俺と光。それからやつは浴槽から立ち上がる。俺もつられてその場に立ち上がった。


「よぅし、サウナ室へ行きましょう、そこで勝負です!!」


「望む所だッ!!」


 負けず嫌いな俺達二人は、無我夢中でそんな事を口走り、サウナ室へ向かった。その道中も、互いに押し合いながらだ。傍から見ると、その光景は毎度の事なので誰も口出しはしない。


「おい、またあの二人やってるぜ?」


「仲が良いんだか悪いんだか」


「ほっとこうぜ? 男のつまらない意地の張り合いは無駄に暑苦しいだけだし」


 などと、好き勝手な事ばかり言ってはいるが、それも俺達二人には聞こえていないに等しい。

 そして、サウナ室へ入った俺達二人は、また互いに隣に座って股を開き、そこに手を突いてひたすら唸った。

 その無駄に暑苦しい気迫に()てられたのか、先にサウナ室にいた男子生徒達がそそくさと室内から出て行く。


「ふぅ、どうやら私達だけのようですね」


「ああ、そうみたいだな。どうする? 降参するなら今の内だぜ?」


「ふッ、何を世迷言を……。この私があなた如きに負けるとお思いですか? 寧ろ生ぬるいくらいです、もっと温度をあげてください!」


「おう、いいぜ?」


 滲む汗をもろともせず、俺は石炭に水をかける。ジュ~と音を立てて、蒸気があがり、室内の温度が上昇する。


「よぅし、だんだんあったかくなってきたじゃねぇか」


「そうですね!」


 実際サウナ室はめちゃくちゃ熱い。頭の中が沸騰しそうなくらいだ。だんだん意識が遠のいてくる気さえする。


「お、おい……そろそろ限界なんじゃねぇの? 早く上がれよ」


「な、何を……言っているんです。そ、そちらこそ上がらないんですか? 目が死んでいますよ?」


「ヘヘッ、これは俺の得意技でな……死んだふりだ。そっちこそ、ヤバそうじゃん。顔からボタボタ汗垂れてるぜ? 熱いんじゃね?」


「ハハハ、違いますよ。私、汗っかきでして……これはそのせいですよ。そう、そうに決まっています」


 などと無駄な張り合いをして一時間後――。


「うぅ~」


「あぁ~」


 俺と光は、脱衣場でゾンビのような唸り声をあげながら、額に氷水の入った袋を乗せていた。とどのつまり、両者リタイアだったのだ。それもそうだろう。体は真っ赤になっており、軽い脱水状態だ。頭がぼーっとしていて、意識が定まっていない。

 はっきり言って、何でこんなバカみたいな事をしたのかも分からない。




 しばらくして、俺達は大分動けるまでに回復していた。すると、先に光が立ち上がって少しよたつきながら口を開いた。


「くぅ、……嵐慌夜くん、今回は引き分けでしたが、次は負けませんよ?」


 頭を押さえながら宣言する光だが、俺としてはどうせ無駄な気がしてならない。今までにも様々な事で勝負をしてきたが、はっきり言って勝敗が決した試しがないからだ。

 とりあえず俺は、その場で光と分かれ自室へ戻った。鍵を開けて中に入ると、茜が腰に手を添えて牛乳を飲んでいる姿があった。


「ぷはーっ! あっ、どこ行ってたのこー君? 探したよー?」


 茜が少しムッとした顔で俺を見る。


「いや、ちょっと大浴場にな? 俺もまさかあいつに出くわすとは思わなくて……」


「もしかして、光君にあったのー? そっかぁ、じゃー遅くなるのも無理ないねー」


 光が絡んだと分かった瞬間、何故かお許しが出た。それほどまでに、俺が勝手にどこかへ行く事はいけない事なのか。


「ところで茜、何で牛乳?」


「そりゃー風呂上がりは牛乳でしょー? あっ、別に胸をおっきくしたいからとかじゃないよ?」


「わ、分かってるよ!」


 何を勘違いしてくれちゃったのか、茜がそのような冗談染みた事を言う。そのせいで、俺は風呂上がりとは別の理由で顔を赤くしてしまった。

 そんなこんなで消灯時間を迎えた俺と茜は、互いのベッドに入り就寝した……。

というわけで、夫婦みたいなやりとりを見せながら二部が始まりました。

そして食事を終えて互いに風呂へ。で、またまた新キャラが登場です。光くん。光ちゃんではありません。光と闇の二人は、相性が悪いようでサウナ室でなんか勝負を開始。挙句の果てには脱水症状でぶっ倒れるという情けない結果に。

てなかんじで、次回予告。ほんわかをお送りしたところで、七話は殺人シーンばかりです。ついに、あのディートヘイゴスが本格的に動き出します。学園の方にいないメンバーがピンチ!? 果たして伝説の戦士は冥霊族に勝てるのか!? で、お送りします。更新は、不明。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ