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十二属性戦士物語【Ⅴ】――幽霊屋敷の亡霊と四神龍――  作者: YossiDragon
裏一章:過去『癒えぬ心と忘れられぬ記憶』篇
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第四話「夢鏡王国二代目国王・月牙」・4

登場人物が多い……。

「月牙君ッ!」


「ひゃ、ひゃいッ!?」


 オーニュオン様が覇気と野太い声音で俺を呼んだので、びっくりして上ずった声をあげてしまう。


「こちらにも、資料をくれんかね?」


「あ、はい」


 と、このように見た所怒っている様子はない。だが、その目つきは凄まじい。まるで、射抜くような鋭い目力には、獰猛な獣であろうと服従するに違いない。俺なんてチビってしまいそうだ。

 俺は恐る恐るオーニュオン様に資料を手渡す。もちろん慎重にだ。


「うむ、すまない」


「そ、そんな滅相もありません」


 思わずヘコヘコしてしまうが、一応俺は二代目国王になったのだ。もっとちゃんとした態度で接しなければならないだろうと、改めて自身を鼓舞した。

 それから自身の席に座る。俺のすぐななめ右には、二代目女王の地位に立ったミーミルが着席している。その隣には、ヒュニールさんもいる。何故か俺を見る視線がうっとりしているのは、気のせいだと思うことにする。で、そこから順に、鳴崎(なるさき)雷落(らいら)明見(あけみ)光蘭(こうらん)金井(かない)鋼鉄(めたる)豪地(ごうち)彪岩(ひょうが)崖淵(がけぶち)砕狼(がろう)石吹(いしぶき)砂唯(さゆ)猛毒雲(もうどくうん)猛辣(もうら)氷威(ひょうい)氷雨(ひさめ)が着席している。

 逆サイドには、俺に近い方から順に、暗冷、水恋、刻暗、炎耀燐(えんようりん)乱火(らか)炎耀燐(えんようりん)妖燕(ようえん)紅夢(くれむ)未來(みらい)旋斬(かざきり)風浮(ふう)大森(おおもり)癒宇(ゆう)草壁(くさかべ)葡豊(ぽぽ)幻宮(げんく)霧矛(むむ)の十人が着席している。

 これで、この場に座っているのは計二十二人ということになる。無論、広間にいるメンバー全員の人数ではない。他にも、護衛の衛兵だったり座っている人間の関係者がいたりする。現に、水恋の後ろには刻暗がいるし、暗冷の後ろには咲夜さん亜夜さん、そして青嵐がいる。他にも、氷雨の後ろには雪羅がいたりいろいろだ。

 にしても、六年ぶりに会うだけあって皆随分見た目が様変わりしている。特に、当時十代前半だったりする面々が特に。

 光蘭も随分大人っぽくなったと言っていい。確か、今は十六歳くらいのはずだ。今ならば、以前鋼鉄が言っていた化けるという話も実現できるかもしれない。


「月牙さん、どうかした?」


 自分の方に視線が向いていた事に気付いたのだろう、光蘭が首を傾げて訊く。つられて金色の髪の毛がサラリと靡き、照明の光に反射して輝く。とても綺麗だ。


「イッヅ!?」


 突如足に痛みが走る。


「ん、いかがされた月牙殿?」


 俺が激痛を訴える言葉をもらしたので、怪訝そうにコーガリック様が質問した。


「い、いえ……なんでも、ありませんッ!!」


 コーガリック様に返答すると同時、俺は犯人の方に視線を向ける。無論相手は俺の妻――ミーミルだ。彼女が俺の足の甲に向かってヒールの先端をブシュと刺してきたのだ。これがもう、堪らなく痛い。

 しかし、向こうは悪びれる様子なし。その証拠に、当然と言わんばかりの顔つきだ。


「大丈夫ですか、月牙さん?」


「あ、ああ。問題ない……それで、資料には目を通してもらえたか?」


 随分話が逸れた気がするが、とりあえず本筋について語る。


「はい。でも、やはり信じられませんね……。疑うわけではないのですが」


「じゃあ、当人の話を聞こう……影明」


「忍っ! 主殿のご命令通り、偵察任務を全うして参ったにござる」


 俺が名を呼ぶと、瞬時に黒い影が俺の傍に現れて片膝を突く。黒い忍装束に身を包むその少女の名は、影虎(かげとら)影明(えみ)。名前に影が二つもあるだけあって影に潜む事を得意とする隠密稼業が専門だ。訳あって命を助けた時からずっと俺の護衛及び、偵察任務などを引き受けてくれている。

 本業が忍びなだけあって、なかなか優秀な働きをしてくれるのは俺としても大助かりではある。ただ、自身の命を少し軽率に扱っているのがたまにキズだ。


「影明、いつまでも(かしこ)まってないで立ってくれ」


「御意」


 俺が言い終わると同時に彼女はその場にスッと立った。それから俺に何枚か紙切れを差し出す。


「これは?」


「余計な所業かと思ったのでござるが、念のためにと写真を二、三枚」


 背中に手を回して組み、キリッとした目つきで説明をくれる。


「なるほど、確かにちゃんと映ってるな。じゃあ、ついでにこれも回してくれ」


 そう言って俺は、暗冷から順番に写真を回した。無論、数枚あるので全部ではなく二つに分けて左右から回す。


「こ、これは……なるほど。確かに、本当のようですね。ですが、未だに信じられません。鎧一族がまだ暗躍していたなど」


 水恋が深刻そうな表情で呟く。すると、暗冷も口を開く。


「そうだな、あのジジイを殺してからしばらくは音沙汰なかったからよ。てっきり全員先の大戦でくたばったかと思ってたぜ」


 背もたれに背中を預けて腕組みをする暗冷。先代及び二代目の王達の御前だというのにこんな態度を取れるのは、彼が二代目国王である俺よりも地位が上にあるからだろう。

 何せ、この場にはこいつも含めて二人の帝王がいるのだから。

 霧霊霜一族の長にしてウォータルト帝国の帝王である水恋と、嵐一族の長にしてリーヒュベスト帝国の帝王である暗冷。この二人がここにいる。まぁ、実際は後一人ここにいるのだが。


「? いかが致しました、ご主人様?」


 鈴華が不思議そうに小首を傾げて俺に近づいてくる。

 そう、本当は彼女――鳳凰鈴華もまた、帝族の一人であり帝王なのだ。フレムヴァルト帝国の。だが、現在彼女はここにいる。ホント、フレムヴァルト帝国の治安が心配でならない。

 それも兼ねての調査だったのだが。調査隊は未だに戻ってきていないという。心配だ。


「お前、本当に戻らなくていいのか? 自分の帝国だろ?」


「心配ありません。私の一族もいることですし……」


 俺の質問に対して答える鈴華は、へらへらしている。余裕の表情だ。彼女が言っている一族というのは、四帝族の一つである鳳凰一族の事だろうが、はっきり言ってどこからその自信がやってくるのか理解できない。


「鈴華さん、ああ可哀想に。そのような哀れなお姿になってしまわれて……」


 よよよ、と水恋が泣いてもないのに、そのような身振りをする。


「おい、話がまた逸れちまうだろ。影明、お前が見た事をこの場で話してくれ」


「承知致したでござる」


 大きく首肯して影明の説明が始まる。

 代弁すると、こうだ。

 六年前、第二次神人戦争によって鎧一族――というか、エレゴグルドボト帝国は壊滅的被害に見舞われた。特に、帝国民や帝国の領地に存在する王国の民も被害を受けたという。まぁ、あの場所が戦地になったからな。

 主に神族と対峙したのは不死身となった鎧一族の面々だったが、そいつらもただの操り人形で、木偶の坊に過ぎず、戦争の中心人物だったオルガルト帝――というよりも、それを操っていた鬼蜘蛛デュオルグスが死ぬと同時に統率が取れなくなって暴走したらしいからな。

 その収拾などにも手を焼いていたと、六年前に聞いた。

 各国の王も消えて、一気にパニックになったらしい。特にエレゴグルドボト帝国の領内にあるフェイルーメニアは、治安がしばらくの間最悪だったらしい。六年経った現在は、なんとか持ち直したらしいが。

 サルパストナム王国は、次の王子が決まる前に暗殺が起こり、パニックに陥っている所をゴルガルゴストス王国のやつに攻められて、陥落した。今となっては、サルパストナム王国は消失して、ゴルガルゴストス王国に取り込まれたとの事。それについて、砂唯も少し悲しそうにしていたが、今ではすっかり平気そうだった。現に今も、幼馴染の砕狼と楽しそうに会話している。

 てか、人の話を聞かんかい!

 エレゴグルドボト帝国のその後だが、壊滅する事はなく次の帝王が決まっているとの事。それが誰なのかと言うと、鎧一族の人物だった。

 鎧一族の中には、更に大きな階級が存在し、上から順に大公、伯爵、公爵、侯爵、子爵、男爵の順だ。それで、その中でも一番上の大公ベラスが皇帝になったらしいのだ。

 名前は『イーグニロ=マドゥーエ=ベラス』何とも怪しさむんむんの名前だが、これは既に決定事項らしい。

 だが、ここまでなら別に大した問題はない。問題はここからなのだ。

 一枚岩じゃなかった鎧一族を上手い具合に統率し、帝国を完璧な物に仕上げだしたのだ。更に大公ベラスは、恐ろしい計画を練っているらしい。

 それが、四聖獣大戦計画。その名の通り、四聖獣を用いた大戦争を引き起こす計画である。

 四聖獣というのは、四帝族が護神として崇め奉っている怪物の事だ。

 鳳凰一族が朱雀、霧霊霜一族が青龍、嵐一族が玄武、鎧一族が白虎だ。白虎と言っても彪岩の持っている白虎とは比べ物にならないくらいのパワーを持っている……らしい。いや、俺も現物を見た事が無いので知らないのだ。

 しかし、暗冷や水恋の話では相当ヤバそうだ。

 そして、そのヤバい怪物を鎧一族のやつが使おうとしているのだ、そりゃあ信じられないだろう。だからこそ、こうして会議をしている。無論、他の事について話し合う必要もあるのだが。


「――以上でござる」


「サンキュー、影明」


「あ、主殿。もう一つご報告があるのでござるが」


「え? そうなの? じゃあ、ついでに」


 まだ話すことがあるらしい影明に発言権を与えると、こほんと咳払いして影明が言った。


「鎧一族もまだ完全に一枚岩ではないようで……ドルーミラという男が、何やら怪しい企てをしているのでござる」


「ドルーミラ?」


 初めて聞く名に、俺は首を傾げて影明の口にした名前を反芻する。


「御意、『オブタミス=ドルーミラ』と言って、伯爵でござる」


「それで、その怪しい企みって?」


「私も気になります」


 俺の質問に、水恋も身を乗り出して意見する。すると、暗冷が気になる台詞を口にした。


「ドルーミラつったら、あのオッサンだろ?」


「暗冷殿、知っておられるのか?」


 コーガリック様の質問だ。俺も驚いた。まさか、暗冷が知っていようとは。


「ああ、ドルーミラはとにかく胡散臭さの塊みたいな男だぜ。あいつが企んでそうな事つったら……そうだな、戦争とかじゃね?」


 う~んと少し思案して、恐ろしい言葉を口にする。


「大公ベラスだけじゃなく、伯爵ドルーミラまで戦争を考えてんのか!?」


 おいおい、鎧一族ってのは戦争大好きなやつしかいないのか? 思わずそのような馬鹿らしい事を考えてしまう。


「……とにかく今は、相手の動きを見るしかありませんね。こちらでも少し探りを入れて見ます」


「やめとけ、水恋。てめぇは詮索とか下手くそだろーが。オレが紫音を使って探っとく」


 水恋を押しやるように手を出し、暗冷が口を挟む。すると、彼の言い草に咲夜さんが口を開いた。


「もう、あっくん? そんな風に従姉を物扱いしないの!」


「けっ、めんどくせぇ」


 実の姉に注意され、暗冷はまるで子供のように拗ねてそっぽを向いた。


「とりあえず、この話は別の機会に回そう。次は、本命……学園の話だ」


『――っ!』


 俺がテーブルに肘を突いて顔の前で手を組み、真面目な表情である言葉を口にすると、皆が目を見開いてこちらを見た。

 無理もない、皆待ち遠しかったのだろう。

 『王立魔法育成教育学校』、RoyalMagicRearingEducationSchoolを略してRoMReS。俺は通称ロムレス学園と呼んでいる。え? 既に学校という言葉が入っているのだから学園はいらないだろうって? まぁまぁ、そこはご愛嬌ってやつだ。


「ついに完成するのかね?」


 コーガリック様が興味津々で尋ねる。


「はい、二年後には完成します。現在は主に講堂などを中心に建設しています。教室を先に完成させたくて」


 と、現在の建設状況を伝えて俺は学園のデザインを皆に配る。代わりに、先程配っていた写真を回収する。


「うむ、なかなかいいデザインではないか」


 そう口にするのは、鎖骨辺りまで伸ばした顎鬚を撫でるオーニュオン様。


「いえ、結構悩んだんで……喜んでもらえてよかったです」


「それで、あちらの研究は進んでいるのかね?」


 次いで俺に質問してきたのは、コーガリック様だった。


「あ、はい。雷落、説明を」


「え、あ、はい」


 まさか自分に振られるとは思っていなかったのか、少しあわあわしながら雷落が説明を始める。


「ええと、依頼された通り、神族に伝わるパワーストーンの研究は進んでいます。これが神力の暴走を抑えるのに使えるかは、まだ検討中ですが……いい結果をお伝えできるかと」


 現状を伝え、恐る恐る席に着く。


「う~ん、なかなかいいんじゃないかしら?」


 ヘーニル様が少し唸ってから笑顔を浮かべる。どうやら、ご満足らしい。


「研究費は足りているのかしら?」


 雷落の隣に座っていたヒュニールさんがそう訊くと、慌てて雷落が返事した。


「は、はい! むしろ多すぎるくらいで……」


 どうも雷落はこういう風に目上の相手に迫られるのが苦手らしい。自分からはグイグイ行くのにな。


「それで、職員の話なんだが……」


「その件でございますか」


 俺が何を話すのか緊張していたのか、癒宇がホッと胸を撫で下ろす動作をする。


「ああ、一応確認しとこうと思ってな。ええと、癒宇は治療・回復系担当教師。葡豊は回復系アイテム合成の伝授教師。猛辣は魔法・魔術精製担当教師。乱火は学園の料理長。妖燕は案内係。彪岩は体術系担当教師……だったっけ?」


「はい、合っておりますよ」


「うん、間違ってないです」


 癒宇と葡豊がゆっくり頷く。


「後のメンバーは、本当にいいのか?」


 俺がもう一度他の面々の意志を確認すると。


「うん、わたしはトレジャー稼業があるし」


「俺は温泉を作るって夢があるしな」


「オレはまだまだキラチビを鍛えてやんねぇとな」


「うん、あたしももっと強くなりたい!」


「オレは帝国の仕事があっからな」


「私も……すみません、月牙さん」


「僕は長になっちゃったし」


「わたしは、人見知りで……先生にはちょっと向かないかと」


「私は、ルナーさんのお手伝いで」


「オレは……他人と慣れ合うのはそこまで好きじゃない」


「ゆきは、お兄ちゃんと一緒にいるから」


「月牙くんごめんね? うちは、慌夜の事があって」


 そう言って砂唯、砕狼、鋼鉄、光蘭、暗冷、水恋、風浮、霧矛、未來、氷雨、雪羅、青嵐が俺の誘いを断る。

 と、そこで俺はまだ一人意見を聞いていない人物がいた事を思いだす。


「そういや、刻暗はどうなんだ?」


「え? ああ、すまない月牙くん。僕は……女性恐怖症が」


「あれ? 克服したんじゃないのか? だって……水恋と」


「うん、そうなんだけど。やっぱり……」


 何かを言い掛ける刻暗よりも先に、俺は彼が言わんとする言葉を理解する。


「あっ、悪い」


「ううん、いいんだ」


 刻暗が浮かない顔になる。彼がこのような表情を浮かべるのには理由がある。そう、六年前の解散式。あの時俺は、てっきり全ての問題は解決されて、しばらくは平和に暮らせると思っていた。

 だが、まだ悲劇は残っていたのである。そう……守ってくれる人が誰もいない無防備状態の人物が一人、ずっと大好きな幼馴染の帰りを待ち続けている事に、六年前の俺達は誰も気づいていなかった……。

というわけで、今回は幼年幼女の出番はなし。結婚式の話なのに式の内容はないという謎。大事な話だけを取り上げているのでご勘弁ください。

また、広間で色々と会議。初代全員はこの場にいません。何人かはお留守番だったり忙しくて来れなかったりです。スポットは当てるので一度はちゃんと出ます。にしても、月牙は何かと女の子に絡まれますね。あっ、もちろんヒュニールさんも含んでます。これは、斑希に早く蘇ってもらわないと。

そして、学園についても触れました。Ⅳで布石を置いてたのでここでちょっと回収。完成後は今後やります。

てなわけで次回予告、やれなかった話を二つ、閑話的な感じでやります。

一つは、四話の最後の事柄。もう一つは、広間会議での事柄です。今回ちょっと早めに更新したので、次回更新は少し遅れると思います。もう一つの方の更新をする予定なので。それではまた次回。

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