第二十六話「総てを止めし石化の双眸」・5
【……あらあら、酷い事するわねぇ。せっかく作った玩具だったのに、もう壊してしまったの? いけない子達ねぇ……玩具は大切にしなさいといつも言っているのに……】
まるで玩具を買い与えた子供が、すぐに物を壊してしまったが故、それを優しく教え諭す母親のように、エールが神聖の十戦士を見据える。
だが、そんな彼女の物言いに、赦せぬとばかりに慌夜が口を開いた。
「玩具……だと? ふざけるな! あいつらはどう見ても元はただの人間じゃねぇか! それを物同然に作り替えたのはお前じゃないか!」
【……アハハ、玩具に玩具と言って何がいけないの? 彼女達はただの玩具……人形よ? 死んだ時点で、それは生き物ではなく物でしかない。物と化した人形を玩具のように扱って何がいけないのかしら】
「狂っていますね……」
乾いた笑い声をあげ、妖しく首を傾けるエールの様子を見て、光も思わず冷や汗を流しながら声を漏らす。
【人様の家に勝手に上がり込んだ不届き者に報いを与えてあげたの……当然の罰よ。彼女達は犯罪者なのだから……】
「だからって、こんなのやりすぎだ!」
【あら、それを決めるのはアナタではないわ……これは当事者達の問題なの。部外者は口出ししないでもらえるかしら?】
「……部外者だと? 俺達の家族を、大切な仲間を傷つけておいて……ふざけた事を抜かしてんじゃねぇ!」
まるで自分達は無関係だと言わんばかりのエールの態度に、慌夜は冷静さを欠いて猛烈な怒りを露にした。
しかし、そんな彼の反応を見て、エールも何かを思い出したのだろう。虚空を見上げて口を開いた。
【……あぁ、そう……。そう、だったわね……伝説の戦士……当初の目的を忘れていたわ。全く……あの男が変な事を口走らなければ、あの人があそこまで復讐の念に憑りつかれる事もなかったでしょうに……そうすれば、アタシのカワイイカワイイ子供達がアナタ達に殺される事もなかったのに……】
「あの男……?」
ふと気になるワードを口にしたエール。しかし、それが何者なのかを確かめる前に、エールが動きだした。
【むしゃくしゃするわね……いいわ、だったら……またこのアタシ自ら、直々に相手になってあげようじゃない!】
そう言ってエールが何やら力を溜め始める。またあの石化光線が来るかもしれない。そう思って十人は身構えたが、エールに動きは見られない。
刹那――激しい地響きと共に突如地面が盛り上がり、神聖の十戦士の足元から黒い何かが飛び出してきた。
慌ててその場から跳び退いて、体勢を立て直す戦士達。
舞い上がる土煙の中に浮かぶ不気味なシルエット。それは、巨大な大蛇だった。それも、二匹。
【ウッフフフフ、どう? アタシが生み出した新たな子供達……カワイイでしょう? 双子なのよ? さぁアナタ達、伝説の戦士を食い殺しなさいっ!】
「ちッ、お前自身が戦うんじゃなかったのかよ!」
大剣を構え、腰を深く落とした慌夜が舌打ちする。
【何を言っているのかしら? この子達はアタシが産み落とした新たな子供達……つまりアタシの一部も同然。だから、その子達もアタシと言って過言じゃないのよ!】
「無茶苦茶だな……」
エールの強引な言い分に、呆れた様子で琥竜が呟く。
【さぁ、やりなさい!】
と、エールの掛け声に、二匹の大蛇が大きな口を開けて十人に襲い掛かった。再びその場から回避する戦士達だが、敵が巨大な分その攻撃範囲は広く、あんなに広かった大広間で、逃げ場所が殆どなくなってしまっていた。このままでは遅かれ早かれやられてしまう事は必至。
やられる前にやらなければと、慌夜は闇属性の力で周囲に闇を生み出した。闇の黒煙に周囲一帯が包み込まれ、大蛇の視界が一時的に奪われる。
【小癪な……こんな物、払い除けてしまいなさい!】
エールの指示の下、双子の大蛇が大きな尻尾を振るって風を生み出し、それを以て闇の黒煙を払おうとする。しかし、闇の黒煙は振り払われる事などなく、むしろ大蛇の大きな尻尾に纏わりつくようにしてその場に留まり続けた。
【んなっ!?】
「残念だったな、俺の闇属性にそんな力は通用しない。それにな、俺は嵐一族なんだ……普通の闇属性より一層重厚な闇をプレゼントさせてもらった。そう簡単には俺の闇は振り払えないぜ」
【チィッ!】
悔しそうに歯噛みしたエールの舌打ちが聞こえる。
今がチャンスだと、慌夜は急ぎ周囲に散っている仲間達をかき集めた。
この闇の黒煙は仲間であろうと、闇属性を持たない人間の視界を奪い去ってしまう。そのため、視界不良に陥っている仲間達は、周囲の様子が全く掴めずに右往左往していた。
「こっちだ!」
仲間の手を引き、次々に仮の集合場所である黒煙の中心に集めていく慌夜。闇属性を持っており、さらに嵐一族の持つ夜目のおかげで、慌夜には闇属性の攻撃も暗闇も通じはしない。そのため、他の仲間には申し訳ないのだが、この緊急事態の状況下では、荒っぽいこの手段を取らせてもらう他なかった。これに関しては後程謝罪しようと、慌夜はそう内心で考え、ようやく最後の一人である茜を黒煙の中から見つけ出す。
闇夜であろうと夜目で相手の位置は分かるが、茜の場合、その頭頂部に明るい目印があるからより一層見つけやすかった。
「ごほごほ、嵐慌夜くん? いきなりこんな事をして、どういうつもりですか!?」
突如視界を奪われ、多少なりとも闇の黒煙を無意識下で吸い込んでしまったのだろう光が、闇属性と相性の悪い光属性のためか、激しく咳き込んで文句を言う。
「悪かった、みんなもすまない……ただ、敵を撹乱して時間稼ぎをするにはこれしかすぐに浮かばなかったんだ。もしかしたら、もっと時間的余裕があればいい手段が見つかったかもしれないが、今回ばかりは許してほしい」
「わかったから、とっととこの状況をどうするか考えなさいよ!」
相も変わらず、渚は他人任せにしてちっともいいアイデアを考えてくれない。
「まぁまぁ、渚ちゃん落ち着こう~?」
「あなたはあなたで落ち着きすぎなのよ!」
声を荒げる渚を制する七海に、渚は言い返すように文句を言う。
と、腕組をして何か思案していた様子の琥竜が、静かに口を開いた。
「……あんま自信はねぇが、一か八か……賭けてみるか?」
そう口にした琥竜の声に、さっきまで声を張り上げていた渚も黙り込み、皆が琥竜の方に視線を向け、その作戦内容に耳を傾けた。
――……厄介な闇ね。アタシの目は勿論、あの子達の目でもあの黒煙の中が視えない……それだけ分厚い闇という事? 闇属性の力といえば、多種多様。一重に力の代表例を挙げる事が難しいと言われる属性。それ故に扱いも難しく、その力に秀でた人間と言えば、帝族の一つである嵐一族が真っ先に浮かぶとまで言われてた。暗闇を物ともしない夜目を持ち、夜間の行動を得意とする嵐一族。隠密稼業でも有名だった。だからこそ、脅威になり得る帝族のいる帝国は、なるべく主力を注ぎ込んで壊滅的被害まで追い詰めてあげたのだけれど……まさか、まだ生き残りがいて、その一人が……アタシの所にまでやってくるとはね。完全にしてやられたわ……。恐らく、あれは認識阻害……闇に融ける闇属性の力の一端を用いたものかしら。
エールは内心焦っていた。よもやこの場に嵐一族の人間がいるとは思ってもみなかったのだ。さっきからちょくちょく自分の言動に歯向かって来る小賢しい少年がいたが、それがまさか嵐一族の人間とは。黒髪に赤黒い瞳、焼け焦げたような褐色の肌で察するべきだった。
闇属性といえば、奪い取る力で有名だ。その奪い取る物は五感に留まらず、魔力でさえ奪い取る。そのため、莫大な魔力を持っている人間ですら、闇属性を相手にすると厄介だと言われている。
その上嵐一族ともなれば、彼らの持つ闇の加護で、さらにその闇属性の力は絶大になっているに違いない。それが今エールを悩ませているあの闇の黒煙だろう。
と、エールが頭を悩ませていると、黒煙が薄まり、中から神聖の十戦士達が姿を現した。何やら決意に満ち満ちた表情を浮かべている。さっきまでの焦った様子は、完全に消え失せていた。
【逃がすな、捕らえなさい! 襲撃者は一人残らず殺すのよ!】
捕えるのか、殺すのか、一体どちらの命令を遂行すればいいのか迷ってしまう、無茶な命令。
だが、従順なエールの大蛇達は、その命令にすら準ずるようで、その大きな口から毒液を吐き出してきた。
「にひっ! 効かないよ!」
と、途中まで大蛇に背を向けていた百合が、タイミングを見計らったように身を捻り、正面に向き直って左右に足を大きく広げ、その毒液攻撃を真っ向で迎え撃った。
【なっ!?】
まさか、あの猛毒を逃げ惑うでもなく、払い除けるでもなく、真っ向から受け止めるなどありえないと、エールは目を見開いて衝撃を受けた。
だが、単なる強がりかもしれない。次の瞬間には、あの猛毒で溶かされて跡形もなくなった様子が見られるだろうと、エールはすぐに強気に戻る。
しかし、そんな彼女は再び衝撃を受ける事になった。毒液の中から、ケロッとした様子の百合が姿を現したのだ。
「いやぁ、毒液パックってのは新しいねえ……まさか、こんな全身に猛毒を浴びる事になろうとは。おっと、眼鏡が汚れてしまった」
ただでさえ見にくいであろう瓶底眼鏡を外し、眼鏡拭きを懐から取り出してレンズに付着したやや粘着質な毒液を拭いとる百合。
完全に余裕な態度だ。そのあまりのありえない光景に、エールも黙り込んでしまう。
と、その時、異変が起きた。
「ありゃ……これは不味ったね、私には猛毒は効かないけど、衣服に関しては失念していたよ……」
そう、毒属性を持つ百合には毒耐性があったが、その彼女の身に着ける衣類は毒に耐性がない。結果、その衣類は毒の酸によって溶かされて消失してしまったのだ。途端に露になる百合の肢体。
が、辛うじて彼女を救ったのは、下着類やストッキング、手袋が融けなかった事だろうか。毒属性を持ち、素肌から常に毒を発している彼女は、それに耐えられる下着類を身に着けていた。それが功を奏した。
【くっ……アタシの猛毒が効かないだなんて……】
一気に攻撃の手段を減らされてしまったエールは、急ぎ次の策を講じなければならなかった。
だが、そうしている間に、他の戦士達が動く。
「これくらいで、どうでしょうか!」
光が声を張り上げる。その声にエールが顔を向けると、光が光属性の力で周囲一帯をさらに明るくしている様子があった。目眩ましのつもりだろうか? その眩しさにやや目を細めるエールだが、彼らの目的はそれだけではなかった。
「十分だぜ、明見光ッ!」
と、琥竜が勢いよく地面に手を突く。すると、琥竜の足元に出来た自身の影が伸びていき、目の前の一匹の大蛇の足元の影と繋がった。
直後、大蛇の蛇が石化されたように動きを止める。
【なんですって!?】
ずっと雅曇皇圓邸内にいたエール。そんな彼女は、自分の子供達が持って帰ってきた伝説の戦士の情報を何一つ得ていなかった。常に裏方にいた彼女は、任務を終えた子供達に褒美を与える方で忙しなかったのだ。
そのため、伝説の戦士の子供の中に影属性を持つ人間がいる事も知らなかった。邸宅内に侵入してきた後も、彼女はしばらくの間夫のジャルトゥワを相手にしていた。そのため、襲撃者の情報全ては把握しきれていなかったのだ。
「どうやら、オマエはオレらの事……アイツらより詳しくねぇみてぇだな……おかげで助かったぜ」
【うぐっ……あの人のせいよ! いつもアタシにばかり雑用を任せて! 自分は常に番人だとかでその場からテコでも動かないっ! 生前の夫はそんな事なかった……! それに比べてあの人はっ!】
「やれやれ、自分の都合が悪くなれば、他人に責任転嫁ですか……憐れですね」
【黙れ、黙れ黙れッ! そんな拘束が何よ! それくらい脱せるでしょ!?】
蛇の双眸を一層眩く発光させるエール。すると、それに呼応するように、影で拘束された大蛇が激しく暴れ出した。もう一匹の大蛇も大きな咆哮を上げて、周囲の戦士達を蹴散らそうと体をくねらせ襲い掛かってくる。
「ぐ、まだこんな力がありやがったのか!」
「私も手伝います……!」
影の拘束だけでは逃れられる恐れがあると踏んだ土筆が、急ぎ植物操作で蔓を巻きつけ全身を包み込んだ。
「助かったぜ、草壁土筆」
「まだ、油断できません……翼くん、茜ちゃん、お願い……します!」
お礼を言う琥竜に、押さえ込むのが辛そうな土筆が、次の一手を二人に頼み込む。
「うん!」
「任せて!」
その声に応じ、翼と茜が動いた。
翼が上空へと舞い上がり、空気操作で大蛇の周囲の空気の酸素濃度を爆上げする。そこに向かって、茜が鉈に纏わせた真っ赤な炎を振るった。三日月状に飛んできたその炎は、大蛇を包み込むと同時、一気に火達磨のように燃え上がった。直後、その炎の色が真っ青に変化する。
瞬間、先程よりも凄まじい熱気が周囲に熱風となって向かってきた。
「あっつ!?」
氷属性を持つ霙が堪らず悲鳴を上げ、七海の背後に隠れるようにしがみついた。
「あらあら、大丈夫ですかぁ?」
「ひぃっ、熱過ぎだよ~。うち融けちゃうかと思ったもん。あんがとね、ななみん」
「いいえ~」
熱風を受ける盾代わりにされたというのに、まるで気にも留めていない様子の七海が平然と、笑みを返す。
一方で、その熱の中心。青白い炎の中にいた大蛇の一匹は、あっという間に跡形もなく燃やし尽くされてしまった。完全燃焼……まさにその一言に尽きた。
【そんな……ありえないわ、アタシの……アタシの子供達が負ける? そんなの……認める訳、ないでしょっ!】
と、エールが眼光を光らせる。
もう一方の大蛇が咆哮をあげてエールの下へ向かった。
そして彼女を頭部へ乗せると、近場にいた七海と渚の方へ突っ込んだ。
【アタシは、負ける訳には……いかないのよ! もしそうなったら、あの人に……怒られる。いえ、怒られるだけじゃ……すまないわ! アタシは勝つ、絶対に勝つしか道はないのよッ!】
エールはその両目から赤い血の涙を流しながら、その両目に石化光線のエネルギーを集約させていった。
しかし、大蛇が標的の二人に急接近した直後だった。
微笑みを湛えていた七海が、その笑みを消し、青い双眸を見せた。
【――へ?】
一瞬何が起きたか分からなかった。
エールの足元にいたはずの大蛇は姿を消し、ふと後方を見やれば、大量の水のようないくつもの針で肉体を刺し貫かれた大蛇が、大広間の壁に磔にされている姿があった。
【……う、そ――あぐっ!?】
宙に浮いていたエールは、重力に引っ張られ、床に向かって真っ逆さまに落下。そのまま地面に激突した。
一方で、磔にされていた大蛇は、渚の巻き起こした突風と風刃の嵐で細切れにされ、バラバラの木っ端微塵と化した。
あれほどの戦力数がいたにもかかわらず、気づけばエールの手駒は最早自身のみとなってしまった。
【う、うぅ……ぁ、馬鹿な……ありえ、ない……アタシが、……このアタシが、これほどの力を以ってしても……負けるというの?】
「お前の負けだ……エール=ネーク=ディートヘイゴス! お前を倒して、俺達はこの先に進ませてもらうッ!」
【は、ハハ……ありえない、ありえないわ! アハハハハハ、アナタ達がこの先に進んだとて、あの人をアナタ達が倒せる訳ない! ていうか、そうよ……そうじゃない! アタシは不死身なのよ? 冥霊族なんですもの! 死ぬわけがないっ! もうあんな思いはしなくて済むの! アハハハ、アハハハハハ!】
「こー君……もう、終わらせてあげようよ」
「あぁ、分かってる……猛毒雲、準備出来てるか?」
茜の辛そうな表情に、慌夜も頷いて後方にいた百合に声をかける。
すると、下着姿だった百合が、荷物からスペアの白衣を上着変わりに纏ってやってきた。
「にひっ、勿論だとも……さあ、存分に振るってやるといい。私が精製した強化聖水にたっぷりと漬け込んだ大剣だ。これなら、あの蛇女といえども、一撃さ」
と、慌夜の武器である大剣を、少し重そうに抱えながら手渡す。
それを受け取った慌夜は、確かに普段と様子が変わっている己の得物に確かな手応えを感じ、今度は霙に声をかけた。
「わかった……氷威、頼む!」
「ほいきた! いってきな、こーやん!」
「……こ、こーやん? まぁいいや……ああ、これで終わりにしてやるッ!」
唐突に呼ばれた事のないあだ名で呼ばれて少しばかり気合を削がれるが、頭を振って気合を再度入れ直す。
それから大剣を大きく振り上げた慌夜は、霙の作り出した氷の滑走路を用いて地面を猛スピードで滑走していった。徐々に速度が増し、反り返った足場を利用して高く跳び上がる慌夜。
【な……に……!? ア、ハ……無駄よ、いくら刃がデカかろうと……アタシは死なな――】
上空から迫りくる闇の斬撃波。それは一気にエールの視界に接近して、彼女の視界を真っ赤に染め上げた。次に彼女の視界に映ったのは、硬い床だった。血まみれで、出来たばかりの血だまりや、乾ききった古い血痕もある。
そうだ、ここはあの女性研究員達を改造した場所。彷徨う魂を無理矢理復元した元の器に押し戻し、強引に蘇らせた。
しかし、改造する中で石で失った一部を補う最中、あまりに痛みを訴える悲鳴や絶叫がうるさいものだから、脳をいじくって意識だけを石化させたのだった。
――あぁ、そうだわ。そうじゃない、あの子達は実際に蘇っていた。正気は失っていたといえど、あの子達は紛う事無く伝説の戦士の子供達の手で再び殺された……アッハハハ、おっかしい! 教えてあげようかしら……もしそうすれば、あの子達は一体どんな表情をアタシに見せてくれるのかしら……あら、おかしいわ。声が……出な――い?
エールは気づいた。何故自身の視線が足元を見ているのか。どうして少しも体が動かせないのか。
……既に、身体を失っていたからだ。
――ぃ、いやぁあああああああ!? ありえない、ありえないありえないありえないありえないいいいいいいいいいい! いぎぃいいいいいい、ぐっうぅっ、うううううううううっ!! 許さない、許さないわよ伝説の戦士ぃぃぃぃぃぃ! この、アタシが! アタシがぁあああああああああああああああ、あ、ぁ、ぁぁ………。
それが、エールの断末魔と最期だった。しかし、その彼女の呪詛に近い悍ましいセリフは、少しも神聖の十戦士には聞こえてはいなかった。
闇に解け、ぶくぶくと泡を立てながら熱を発して消えていくエールの、頭部を失った肉体と、斬首されて転がった頭部。
それが完全に終わりを迎えた時、周囲一帯の石化が一気に解かれていった。パラパラと弾け飛んだ小石や瓦礫が、粒となってパラパラと地面に落下する。
これでようやく先に進むことが出来る。
神聖の十戦士は、ようやく目的地となる最上階最奥の間に辿り着ける事と、強敵エールを仲間全員で協力して倒す事が出来た事に、喜びの声をあげるのだった……。
というわけで、神聖の十戦士十人VSエール戦決着です。ここにきてようやく十人全員が協力して戦う初めての戦闘ということで。また、自ずと仮のリーダーである慌夜が指示役として活躍しました。それもあってあまり説明出来ていなかった嵐一族の持つ特性や闇属性の力をもう少しだけお披露目出来たかなと。後半でも恐らくもう少し力の一端が見せられるかと。
エールの蛇女の由来は彼女の死因が毒蛇によって中毒死したのが原因です。
今回の戦闘であまり絡ませられていなかったメンバー同士の掛け合いも出来たと思います。
そして再び冒頭に惨殺されたクロノスの女性研究員達が、変わり果てた姿となって再登場しました。
無理矢理生き返らされた挙句、苦しんでいる所を何も事情を知らない神聖の十戦士に再び殺されるというのはたまったもんじゃないでしょう。
次回予告。ディートヘイゴス一家も残すところ大黒柱の父親のみ。次も彼ら全員の協力の上での苛烈な戦いとなるのか。そして、番人の父の護る部屋の中にいる彼らはどうなっているのか。本当にただ戦うだけで終わるのか。冥霊族篇ももうすぐ終盤。新篇が少しずつ近づいてきました。
更新予定は、この連休中に可能であれば……。




