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観測録-オブザベーション・ログ-  作者: 海狼ゆうき


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4/5

ダンジョンの夢


 夜。


 都市の外れ。


 古いアパート。


 一室だけ明かりがついている。


 机の上。


 パソコン。


 画面にはダンジョン配信。


 タイトル。


【初心者探索】


 視聴者数

 231


 コメント。


〈がんばれ〉

〈初見です〉

〈モンスター弱い〉


 椅子に座っている少女。


 黒い髪。


 細い体。


 目が静か。


 名前は――


 ノクス。


 彼女は画面を見ている。


 ずっと。


 無言で。


 配信の中。


 ダンジョン。


 モンスター。


 戦闘。


 コメント。


〈余裕〉

〈弱い〉

〈初心者ダンジョンだし〉


 その瞬間。


 ノクスがつぶやく。


「……違う」


 モンスターが止まる。


 画面の中。


「え?」


 配信者が固まる。


 モンスターがこちらを見る。


「今」


「止まった?」


 コメント。


〈ラグ?〉

〈なんだ今〉


 ノクスは画面を見つめている。


 視聴者数

 232

 233

 234


 数字が少しずつ増える。


 その瞬間。


 モンスターが増える。


「うわっ!」


 配信者が叫ぶ。


 コメント。


〈急に増えた〉

〈バグ?〉


 ノクスは首を傾げる。


「違う」


 小さく言う。


「見てるから」


 沈黙。


 彼女は画面を閉じた。


 部屋が静かになる。


 窓の外。


 夜。


 ノクスは立ち上がる。


 ベッドに横になる。


 目を閉じる。


 数秒。


 眠りに落ちる。


 そして。


 夢。


 暗闇。


 何もない。


 広い空間。


 遠くに。


 光。


 石の椅子。


 誰も座っていない。


 その周りに。


 無数の光。


 数字。


 視聴者。


 100

 1000

 10000


 ノクスは歩く。


 椅子を見る。


 そして。


 声。


「見てる」


 ノクスは振り向く。


 暗闇。


 誰もいない。


 また声。


「見てる」


「誰」


 ノクスが言う。


 沈黙。


 そして。


 暗闇の奥から。


 影が現れる。


 人の形。


 顔が見えない。


 影の男。


 ノクスは動かない。


 影の男が言う。


「お前は」


「見えるのか」


「ここ」


「夢?」


「違う」


「観測席」


 影の男が言う。


 ノクスは椅子を見る。


 石の椅子。


 番外編①で出たものと同じ。


「座るの?」


「まだだ」


「お前の席じゃない」


「じゃあ」


「誰の席?」


 沈黙。


 影の男が言う。


「零」


 その瞬間。


 空間が揺れる。


 数字が増える。


 視聴者

 1

 10

 100

 1000


 ノクスは目を細める。


「見てる人」


「違う」


「観測者だ」


「何が違うの」


 影の男は言う。


「世界を変える」


 ノクスは椅子を見る。


 少し笑う。


「面白い」


 その瞬間。


 夢が崩れる。


 朝。


 ノクスが目を開ける。


 天井。


 静かな部屋。


 彼女は起き上がる。


 机の上。


 パソコン。


 画面がついている。


 勝手に。


 配信画面。


 タイトル。


【深層探索】


 視聴者数

 1


 チャット。


〈見てる〉


 ノクスは少し笑う。


「やっぱり」


「夢じゃない」


 画面の奥で。


 ダンジョンが


 ゆっくり


 動いていた。


(番外編④ 終)


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