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マイホーム・ザ・アトラス! ~新婚旅行は快適無双なキャンピングロボで~  作者: 雨宮ソウスケ


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第19話 森の中の湖

 ユージンたちの旅は順調だった。

 中継の村を出て街道を進む。街道といっても土を固めた道に一定間隔で柵が設置されている程度の道だ。この道も途中から消えて草原と森が広がる場所となる。

 都市間には距離がありすぎて、道らしき道が自然となくなるのだ。強盗団や魔獣を警戒して独自のルートで進む商隊も多い。

 ユージンたちが進むのは平原ルートだった。

 敵にも見つかりやすいが、反対に敵を見つけやすいルートでもある。全速の《アトラス》ならば追いつかれる心配もないため、このルートを選んだのだ。



『けど、凄い速度で進んでるわね』


 居住キャビン・《アーススフィア》の一階。ダイニングキッチンのソファーにて座るセラフィーナの胸元に吊るされたユキがそう呟く。


『しかももう二時間ぐらいずっとこの速度。何キロぐらいで走ってるの?』


『現在は時速九十八キロですね』


 と、天井辺りからシドの声がする。


『ここは遮蔽物もない草原です。早めに突破した方がいいですから』


『……それは分かるけど』ユキが呆れた口調で返す。


『本当にとんでもない速度だわ。魔導車輛のほぼ最高速度じゃない。人型、しかもこんな巨体でそんな速度を出せるの?』


「ん? 《アトラス》の速度か?」


 セラフィーナの隣でオレンジジュースを飲んでいたトワがユキに視線を向けた。


「最高速度だと三百八十キロぐらいまで出せるぞ」


『え』「……え?」


 ユキのみならず、セラフィーナも驚いた声を上げた。

 そんな二人の様子に構わず、トワはズズズとジュースをすすり、


「まあ、それは戦闘モードの速度だけどな。ユージンにはやりすぎだって言われた。それと精神的に凄く疲れるから、あまり使いたくないとも言ってたな」


 そう告げる。


『……トワ』


 一方、嘆息しながらシドが言う。


『それこそ企業機密ですよ。お二人とも今の言葉はお忘れください』


「え、あ、はい」


 セラフィーナがこくんと頷き、ユキが『分かったわ』と応じた。


『トワ。あなたはやはり浮世離れしているところがあります。あなたの場合は仕方がないことではありますが、以後ご注意ください』


「むむ」トワは天井を見上げた。


「すまない。シド。失言だったか?」


『いえ。少しずつ知っていけばよいことです。ユージンもそれを望んでいます』


 そんな二人のやり取りに、


『(やっぱり特殊な事情を抱えてる感じよね)』


「(……うん。けど、あんまりプライベートに踏み込むべきじゃないし)」


 ユキとセラフィーナは小声で会話を交わした。

 と、その時だった。


『トワ。セラ。聞こえるか?』


 シドと同じく、天井からユージンの声が響いた。

 トワとセラフィーナは視線を声のした方に向ける。


『順調に草原を抜けそうだ。あと十分ほどで一度休憩をとろうと思う』


「あ、はい」セラフィーナが頷く。


「お疲れ様です。ユージンさん」


 魔装機兵にしろ、魔導車輛にしても、長時間の操縦は疲労が溜まる。

 ユージンとしても、そろそろ休憩を取りたいのだろう。

 そう思って声を返したのだが、


『いや、疲労的には特に問題ないんだが、旅程としてはかなり進んでいるしな。二人にしても部屋に中にいるだけでは退屈だろうと思ったんだ』


 そこでユージンは『丁度良かった』と一言入れて、


『休憩に適した場所を見つけたんだ。よければ楽しんでくれたらいい』


 そう告げた。



       ◆



「……わあ」


 窓に映る光景にセラフィーナが感嘆の声を零した。

 その場所は、木々に覆われた巨大な湖だった。

 遠目からは小さな森のように見えるのだが、《アトラス》の視線の高さのおかげで湖を見つけることが出来たのだ。

 徐々に速度を落として《アトラス》は停止する。

 両膝を地に着けて、後部キャビンから地面へと昇降階段が開かれる。

 セラフィーナは階段を降りて湖の前に立った。

 水面を覗き込むと、水底が確認できるほどに澄んでいる。魚が泳ぎ、近くには草食獣の姿もあって水を飲んでいている。


『ちょっと私を水の中につけてみて』


 と、ユキが言う。

 セラフィーナはペンダントのユキを外して湖につけてきた。

 十秒ほどしてから、ユキを取り出すと、


『うん。問題ないわ。飲料水としても使えるほどの水質よ』


 そう報告してきた。


『今日はここで休もうと考えている』


《アトラス》からユージンの声が聞こえてくる。

 セラフィーナは振り向いた。


『旅程としても順調だしな。ここなら釣りも出来そうだ』


 ユージンは言う。


『今夜は魚料理でも振舞おう』


「ホントですか!」


 ポンと手を叩いて、セラフィーナは瞳を輝かせた。

 初めて泊めてもらった日以来のユージンの手料理だった。


『まあ、出来て焼き魚程度ではあるがな』


 一方、ユージンは操縦席で苦笑を浮かべていた。

 料理は出来ないこともないが、元々は傭兵だ。レパートリーはそう多くなく、トワ特製の調味料頼りでそこまで自信もなかった。

 とはいえ、お客さまの前だ。


『お口に合うように精一杯頑張るよ。ともあれ、日が暮れるまでまだかなり間もあるし、今日は気候もいい。セラたちは湖のキャンプでも楽しんでくれ』


 そう告げるのであった。







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