アサシンの能力
「やぁ、おはよう。マラ婆さん」
マカンは村の唯一の飲食店を営んでいるマランこと、マラ婆さんに挨拶をした。少しずつではあるが、食料問題も解決に向き始め、各家庭で余った野菜の葉などを貰い、マラ婆さんが調理をしている。
「おはよう。マカンちゃん。」
幼い頃からマラ婆さんにはお世話になっていて、その時の呼び方のマカンちゃんで今も呼ばれている。
「マカンちゃんがくれた『カツオブシ』とかいうので汁を作ってみたんじゃが…どうも味のわかる人とわからない人が分かれるみたいでね、ちょっと味見してくれないかい?」
そう言って目の前に出されたのは、微かに茶色をしている液体だった。
「これがトロスさんの言ってた『カツオだし』ってやつか。」
マカンは一口啜った。
(微かに何か味がした。いや、味がしたというよりは風味を感じたような…。)
「うん。確かに味はするけど、村のみんなはもっと濃い味が好きだと思うな。」
「そういうと思って作ってみたんだ。これも飲んでみてくれ。」
もう一つ、液体を出された。前のものと同じ容器だが、明らかに色が違った。その色はまるで…
「『味噌』みたいな色だな。いや、味噌を溶かしているのか。」
「へぇ、あの塊、味噌っていうのかい。変わった名前だね。」
「じゃあ、いただきます。」
こうして、ウーラン村に味噌汁が誕生した。
その日は胸騒ぎがして、朝、少し早めに起きた。皆が寝静まり、誰もいない村を見て、最近の賑わう人々を思い浮かべた。
「きっと、今日もいい日になる。」
マカンがそう口にした次の瞬間、マカンの背後に巨大な影が現れた。恐る恐る振り返ったマカンの目線の先には、睨み返すドラゴンの瞳があった。
「は?…」
赤い衣を纏ったドラゴン。少し前、フランの出会ったドラゴンよりは少し小さい。だが、小さいと言っても、マカンよりも数倍も大きかった。
「…み、みんなぁぁ!起きろぉぉ!」
マカンは咄嗟に叫んだ。皆が寝ていて静かだったこともあるが、想像以上に大きい声が出た。その声を聞き、何人かの住民が起き始め、「何事か」と外に出てきた。マカンは狙い通りに皆を起こすことができたが、同時にドラゴンを威嚇してしまったようで、ドラゴンはマカンを睨みつけ、口の中から炎を見せつけてくる。
「あ…死んだな。」
容赦なくドラゴンはマカンに対し、炎を吐き付けた。炎が迫る中、マカンは考えた。
(あの炎…おそらくまともに受けたら骨も残らないだろうな…。)
マカンは思考を巡らせたが、戦いなど一切行ったことのないマカンでは、この状況を抜け出す方法など全く思いつかなかった。そして、死を覚悟したマカンは目を閉じた。
(……。)
(……。)
マカンはゆっくりと目を開けた。目の前で吐き出されたドラゴンの炎は全体的に広がりながらマカンに迫ってきている。が、その炎はとても遅く、止まっているように見えた。
「これなら…避けれる。」
バン
何かが弾けるような音がした。風船が割れるような音。その音と同時に、ゆっくりに見えていたドラゴンの炎は瞬く間に辺りに広がった。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。」
マカンは、自分がドラゴンの攻撃を避けれたことに驚いた。そして、ドラゴンもまた同じことを思った。人間に避けれる技ではないと。
「みんなぁ!ドラゴンだぁ!」
マランは叫んだ。声の限り、村長としての役割を果たすために。
「早く、あっちへ!」
マランは指を指しながら場所を示した。あそこまで行けば村があったはずだ。そう自分の中で思いながら誘導を始めた。
村の者は1人を除いて全員出てきた。その1人は、マランの息子マカンだった。
次回「村移動」




