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妖たちの頼み事  作者: 宙音
一章 中学編

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三十九話 恐怖と怯え

部屋から出た後、悠月達は未だに血眼になって自分達を探しているであろう彼らに見つからないよう移動していた。途中、鉢合わせになりそうになった時が幾つかあったが、奇跡的に相手が見ていなかった事もあり回避しながら順調に進んでいた。


暫くして、漸く目的の場所まで来ることが出来た悠月達だったが、悠月は見覚えのある場所だということに気づいた。


(あれ、ここって社長室がある階じゃ・・・・・)


奥の方を見てみると社長室の扉が見える。どうりで見覚えあるなと思った悠月だったが、ここで1つ疑問に思った事がある。それは、何故あの時この子は反対方向に逃げたのか。恐らく、話しかけられたことに驚き咄嗟に逃げたためだと思うが、一応聞いてみるとやはり悠月の推測は間違っていなかったようだ。


子供にとって、自分に話しかけて来る人間がいる事と、ましてや妖の姿が見える人間なんて初めてだろう。怖くなるのも当然だ。


もし自分がこの子と同じような事をされたら同じような行動を取るだろうなと考えていた時、子供が悠月の服を遠慮がちに引っ張り心配そうな顔をしていた。


「大丈夫・・・・・?」

「え?あ、大丈夫。ちょっと考え事してただけだよ」

「ほんと?」

「うん。本当だよ。さあ、行こう!」


そう言って目の前の扉を見た悠月は扉を開けようとドアノブに手をかけたが、鍵が掛かっているようで開かない。


漸く助けることが出来ると思ったのに、鍵が掛かっているのでは仕方が無い。悠月は社長室に向かい社長室にノックして入るが、外へと行ってしまったのか母も社長も居なかった。恐らく、先程まで逃げまどっていた社員達を落ち着かせるために外へと移動したのだろう。


悠月は子供に事情を話し、子供を抱えて外に居るであろう社長の元へ向かった。



社長の下へ向かう道中、未だ自分達を探している者達を見かけた。彼らの眼は先程と変わらず怖い眼をしていた。その光景まるでゾンビゲームの世界に迷い込んだのかと思ってしまう程だった。


(俺・・・・・生きて帰れるかな・・・・)


何処か遠くを見つめ、諦めたような眼をした悠月。それを見た子供は不安な顔をして悠月の服をギュッと握った。それに気付いた悠月は、気を取り直し彼らに気付かれないように移動した。


何とか見つからずに外へと出る事が出来た悠月達。幸いにも、今も捜しまわっている彼らに見つかることも無く移動する事が出来たため胸を撫で下ろす。すると、何か怯えたような声が聞こえた。声の聞こえた方を見ると、此方を見ながら怯えている社員達が居た。


「いや!こっち来ないで!!」

「お、おい!君!その狐を何処かにやってくれ!!」

「頼むから絶対に近づくなよ!!」

「・・・・え?」


悠月は思わず呆然としてしまった。これ程までに拒絶されているなんて。確かに、彼らにとってはいきなり現れてはいつの間にか消えている得体の知れない生物だと思うだろう。怖がる気持ちもわかる。だが、この子にも事情がある。人間に助けを求めて、母親の居る場所まで連れて行こうとしていたのだ。


今の悠月は人間は勿論、妖怪たちの気持ちも分かるようになってきたのだ。何方の想いがわかるからこそ、今から自分がする事に良くないと思う人も中にはいるのだろう。どうしようかと悩んでいると、声を掛けてきた人物が居た。顔を上げると、母が居た。社長も一緒だ。


「大丈夫!?悠月・・・って怪我してるじゃない!!」

「その怪我どうしたんだい!?何があったんだい!?」

「あー・・・えっと・・・実は・・・・」


悠月は社長室から出た後から現在に至るまでの出来事を話した。社長は、呆れて申し訳ないと悠月に謝罪した。悠月は大した怪我では無い事、子狐も無事だと言う事を伝えたその時。後ろから怒鳴り声が聞こえた。振り返るとそこにはつい先程まで悠月達を探していた者たちが居た。


「見つけたぞ!!!その狐を此方に寄こせ!!!」

「そいつを殺せば、俺達は怯えなくて済むんだ!だからそいつを寄こせ!!!」

「寄こさないのならお前諸共殺してやる!!!」


そんな罵声を浴びた子供は悠月の腕の中で震えていた。悠月も彼らに恐怖を抱いた。


逃げ出したい。早く家に帰りたい。一人になりたい。和馬と秋人と一緒に居たい。父さんと母さんと一緒に居たい。



怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。





「君たち、少し落ち着きなさい。この子が怖がっているじゃないか。腕を降ろしなさい。これは社長命令だ。」


恐怖に支配されていた悠月の意識は社長の言葉によって意識が戻った。目の前には悠月と子供を守るように前に立つ社長と、悠月を抱き寄せ彼らを睨むように見ている母が居た。悠月は安心したせいか涙がポロポロと零れ出てきた。


母は悠月が泣いている事に気付き、一層睨みをきかした。だが、悠月は自分は大丈夫な事と落ち着くように母を宥めた。


「俺は大丈夫。ホッとしたら涙が出てきただけだから。心配してくれてありがとう。社長も俺達を守ってくれてありがとうございます」

「悠月。無理しないで。・・・手が震えてるよ」

「・・・っ。確かにまだ怖いよ?でも、皆に知ってもらいたいんだ。この子がどうして皆の前に姿を見せていたのかを教えてあげたんだ」


悠月は無茶をしてる。傍から見れば怯えているのが分かる程だ。だが、悠月は無茶をしててでも彼らに伝えたいのだ。この子の事を。この子の事情を。


悠月は母から離れ社長の下へと向かった。母もその後を追い悠月の隣を歩き共に向かった。そして、意を決し彼らに話し掛けた。


「皆さんに話したい事があります。とても大事な事なんです。お願いします。お話だけでも聞いてくださいませんか」

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