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妖たちの頼み事  作者: 宙音
一章 中学編

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三十二話 風邪を引いた雪女

冬休みが終わり、学校が始まって数日が経った頃。悠月は帰る支度をし、秋人達と共に昇降口に向かいながら他愛もない話をしていた。


「今日暖かかったな~」

「そうだな~。一月にしては暖かったな」

「あ~雪降ってくんねえかな~!雪合戦やりたい!!」

「俺はスキーかスノボやりたいな~」

「俺は家で炬燵で丸まって寝てたい」

「え、猫?」


そんな会話をしていると、誰かが声を掛けてきた。周りを見るが誰も居ない。不思議に思っていると、またもや誰かが話し掛けてきた。声が下の方から聞こえたため下を向くと、そこには笠をかぶった子供が居た。悠月は驚きの声を上げ一歩後ろに下がった。秋人達は何事かと思い悠月を心配の声を掛けたが、悠月は咄嗟にはぐらかした。


「本当に大丈夫か?」

「う、うん!ズボンに虫がついてて吃驚しただけだよ!」

「え!?悠月が吃驚する程のでかい虫が居たのか!?」

「あー・・・いや、カメムシがついてたから驚いただけだよ。直ぐに取っ払ったし」

「うわぁ・・・カメムシか・・・たまに服の中に入っていたりするから嫌なんだよな・・・」

「わかるわ~」


何とか誤魔化した悠月は、2人に休養を思い出したから先に帰ると言った。2人は、不思議に思いながらもまたなと言い別れた。悠月は子供について来るように周りには聞こえないくらいの声で言い、猛ダッシュでその場を離れた。



暫く全速力で走り、学校からある程度離れた所で周りに誰も居ないことを確認した後、子供に自分に何か用か聞いた。すると、子供は少し落ち込んだ様子で話し始めた。なんでも、とある方が風邪をひいてしまい寝込んでいるのだという。


「風邪って・・・風邪薬とか飲ませたの?」

「はい・・・ですが、中々治らなくて・・・」

「病院とか行った?」

「一応行こうとは思ったのですが・・・実は風邪の影響なのか、力が暴走している状態でして・・・」

「力?」

「はい。その方は雪女なのですが、力が暴走してしまっている以上、外に出て医者の下に行った所でこの町一帯が氷漬けになってしまう可能性があり、外に出す事が出来ないのです・・・」


確かにその状態では氷漬けどころか、凍死する可能性がある。悠月は子供の話を聞き納得した。病院に行く事も出来ず、市販の薬も効かないならば万能薬でしか治す方法がないという訳だ。何処から情報を手に入れたのかは分からないが、悠月が薬を持っているという情報を掴み悠月の下に向かい助けを求めてきたようだ。


「あの万能薬さえあれば、あの方の風邪を治すのだって容易いだろうに・・・」


そう言った子供はさらに落ち込んでしまった。そんな子供を見た悠月は、子供に優しく話し掛けた。


「今は手持ちに無いけど、俺の部屋に行けば薬があるからそれを持っていけるけどどうする?」

「ほ、本当ですか!?」

「うん。まずは一回家に帰らないとね」

「ありがとうございます!」


ありがとうと何度も言っていた子供の目には涙が浮かんでいた。悠月は子供の頭を撫でながらも、一緒に家に向かったのだった。



玄関まで来た悠月は子供に直ぐに戻るからここで待っているようにと伝え家に入っていった。部屋に戻り、学校の荷物を置き制服から着替えて出かける準備し玄関に向かったその時、洗濯籠を持った母と遭遇した。


「あれ、悠月。どこか行くの?」

「へ、あ、うん。ちょっと散歩にでも行こうかと思って!」

「今から?あともう少ししたら暗くなるから早めに帰ってくるんだよ?」

「はーい!行ってきます!」

「気をつけてね!」


家を出た悠月は子供にお待たせと言い、早速風邪を引いている人の下へと向かった。悠月は着替えている時にどんな人なのかが気になり子供に聞いてみると、とにかくとても美しいとのこと。浮世離れしような美貌の持ち主で、口は悪いがとても優しい方だという。悠月は感心しながらも、昔近所にそんなお姉さんが居たなと思い出していた。


「悠月様!着きましたよ!」


懐かしい記憶を思い出していると子供が着いたと言ったので顔を上げると、少し古い家で自分の家より大きいと思ったと同時に見覚えがあるような気がした。表札を確認すると、そこには『静原』と書かれていた。


(静原ってもしかして・・・!)

「なあ!この家に住んでいる人の名前って・・・」

雪依(ゆい)様の事ですか?」


悠月は目を丸くした。それは何故かというと、先程悠月が思い浮かべたお姉さんの名前が『静原雪依』と言うのだ。目の前にある家に住んでいる人はその人しかいないため、直ぐにピンときたという訳だ。それに、この家から悠月の家までの距離は徒歩で来れる距離だ。数分で着く。まさか、風邪を引いているのがお姉さんだったとは。


「悠月様?どうされたのですか?」

「あ~実は俺、雪依さんの事知ってるんだ」

「そうなのですか!?」

「うん。小さい頃、雪依さんに遊んでもらったり、絵本とか読んでもらったりしてくれてさ。俺にとってはお姉さん的な存在だったなって。もちろん今でも思ってるんだけどさ」


子供は悠月が雪依の事を知っている事に驚いていたが、悠月にとって雪依はどんな存在なのかを聞いて同じ事を思っていたのだろう。嬉しそうな顔をしながら同感だというように首を何度も頷いていた。


そして子供が家に入るように促し、遠慮しながらもお邪魔しますと言い家の中に入ると、家の中が寒い。外は日がもう沈み始めている為か、先程よりも寒くはあるが外よりもこの家の中の方がとても寒い。玄関に飾ってある温度計らしきものを見ると、マイナス5度と表記されている。


(いくらなんでも寒すぎないか?)


なぜこんなにも寒いのか聞くと、力が暴走している為暖炉に火をつけても火が凍ってしまうようで暖める事が出来ないらしい。半信半疑ではあったが、雪女という事もあり納得した悠月は子供の案内で風邪を引いている雪依の下へと向かったのだった。

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