第183話 レインボーエッグ
「伊集院さんって真琴さんに自分のことを認めてもらいたかっただけなのかもしれませんね」
伊集院の姿が見えなくなると高野がそんなことを言った。
「なんだそれ」
俺はそう返しながら伊集院に貰った帰還石を使おうと高野を手招きする。
「高野、帰るぞ」
「あ、ちょっと待ってくださいっ」
「ん? どうした」
高野が駆け出していったと思ったら地面にあったカラフルなダチョウの卵のようなものを拾って戻ってきた。
「これ忘れてますよっ」
「あーそういえば……」
フロアボスのヤマタノオロチを倒した時のドロップアイテムだったな。
伊集院のせいですっかり忘れていた。
「真琴さん、はいどうぞっ」
「サンキュー」
受け取った俺はこれまでの癖で、
「スキル、識別魔法ランク10っ」
と唱えた。
だが目の前には何も表示されない。
「あの、今の真琴さんのレベルは1ですよ。たしかMPは0でしたよね」
「あー……そうだったな」
失念していた。これも伊集院のせいといえば伊集院のせいだが。
MPが0では魔法は当然のことながら使えない。
「高野。代わりに識別魔法を使ってみてくれ」
「わかりました、任せてください」
明るく返事をすると高野は「スキル、識別魔法ランク6っ」と唱える。
しかし、
「あ~、すいません。駄目ですね。これレアアイテムですよ、アイテム名しか表示されませんから」
と高野。
「レアアイテムか……」
ヤマタノオロチのドロップアイテムはランク6の識別魔法でも鑑定できないレアアイテムだったようだ。
「それで名前はなんていうアイテムなんだ?」
「レインボーエッグです」
「レインボーエッグ……へー、じゃあやっぱりこれ見た目通り卵だったのか」
「卵ってことは割って食べるか、孵化させるかするんですよねきっと」
高野が笑顔で俺を見る。
「いや、普通に考えて食べ物ではないだろ」
おそらくは後者のはずだ。
「まあとりあえずダンジョンセンターに持っていって鑑定してもらってからどうするか決めればいいか」
そう考え俺はレインボーエッグとやらを不思議な袋の中にしまい込もうと不思議な袋の封を開けた。
とその時だった。
パキッ。パキパキッ。
手に持っていた卵の殻に勝手にひびが入った。
「えっ?」
俺はびっくりして落としそうになるがなんとかこらえる。
パキパキパキパキッ。
なおも亀裂が広がっていって中にいる何者かの目がぎょろっと動き俺と目を合わせた。
「真琴さん、これって……?」
「ああ、よくわからないけどこの中に何かがいるぞ。今にも出てきそうだっ」
まさに俺がそう口にした瞬間――
『キュイイィィーッ!』
卵の殻が派手に割れて中から小さなドラゴンのような魔物がぽんっと飛び出したのだった。
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