第184話 キューン
『キュイイィィーッ』
卵から飛び出したのは体長二十センチほどの白くて小さなドラゴンタイプの魔物だった。
申し訳程度の小さな翼で宙に浮いている。
するとその魔物は俺の顔を見るなり『キュイイィィ~』と自分の顔を俺の胸にこすりつけるようにすり寄ってきた。
「なんだこいつ……?」
「なんか可愛いですね」
高野の顔がほころぶ。
ドラゴンタイプのその魔物はどうやら俺たちに対して敵意は持っていないようだった。
『キュイイィィ~』
「真琴さんになついてますね」
「魔物になつかれても困るんだけどな……おーい、一旦離れてくれ」
俺はその魔物を引きはがそうとするが魔物は俺の服に顔をうずめたままてこでも動かない。
レベル1に戻って非力になってしまった俺ではこんな小さな魔物にすら力で勝てないというのか。
『キュイイィィ~』
「マジでなんなんだよ、こいつは……」
なすすべなく高野に目をやると、
「……あっ、そうだ! わたし読心魔法でこの子の考えてること読んでみますよっ」
言って読心魔法を唱えた高野はそのまま魔物に話しかけた。
「ねぇねぇきみ、きみは魔物だよね?」
ちょんちょんと魔物をつつく高野。
『キュイイィィー』
魔物は鳴き声で返す。
「ふんふん……へー、そうなんだ~。キューンちゃんね。それでそれで?」
『キュイイィィ』
「うん……ふ~ん、真琴さんと一緒に?」
『キュイイィィー』
「そっか~。いい子いい子」
俺には意味不明な会話を魔物と続けていた高野が魔物の頭を撫でた。
「なあ高野、こいつなんて言ってるんだ?」
「こいつじゃなくてキューンちゃんですっ」
と高野は俺を注意する。
「キューンちゃん? なんだよそれ?」
「この子の名前ですよ。自分で名乗ったんです、おいらはホワイトドラゴンのキューンだよって」
「ほんとかよ」
本当にそんな口調なのか?
俺にはわからないからって適当言ってるんじゃないだろうな。
「大好きな真琴さんと一緒にいたいんだそうですよ」
「大好き? 今さっき会ったばかりなのにか?」
「はい。大好きなマスターの役に立ちたいんだって言ってます」
「こいつがか?」
俺は目線を落とした。
魔物はいまだに俺の胸に顔をこすりつけている。
「キューンちゃんですってばっ」
「はいはい、キューンね」
『キュイイィィーッ』
俺が名前を呼んだからかその魔物、キューンはやっと俺の胸から離れて少し飛び上がると俺の顔の前で翼をぱたぱたさせホバリングし出した。
『キュイイィィー。キュイイィィーッ』
キューンは何か言いたそうだが俺にはまるでわからない。
「高野。キューンはなんて言ってるんだ?」
「えーっとですね、おいらは魔物の中で最強種族のドラゴンの中でもさらに最強のホワイトドラゴンだからマスターの役に立てるよっ絶対、だそうです」
「最強……?」
手乗り文鳥みたいなサイズでよく言うよ。
「……っていうかこいつ俺とずっと一緒にいるつもりなのか?」
「みたいですね」
「マジかよ」
するとキューンは『キュイイィィー』とひと鳴きしたかと思うと俺の右肩に乗った。
「あっ、おい。勝手に乗んな」
『キュイイィィ~』
「マスター、これからよろしくねっ。って言ってます」
俺は1からレベルを上げ直さないといけないってのに、その上言葉の通じない魔物の世話までしなけりゃいけないのか……?
「……勘弁してくれ」
『キュイイィィ~』
俺の心の内を知ってか知らずかキューンは俺を元気づけるように俺の頬にそっと顔をすり寄せた。
『ダンジョン・ニート・ダンジョン ~ダンジョン攻略でお金が稼げるようになったニートは有り余る時間でダンジョンに潜る~』
という小説も書いているのでとりあえずブクマだけでもよろしくお願いいたしますm(__)m




