第130話 神代家
「お帰りなさいませ閃一様。ご学友の方もようこそいらっしゃいました」
「ただいま、九曜さん」
大きな門扉を抜けると玄関前で着物を着た三十代前半くらいの和風美人が俺たちを出迎えた。
神代はその女性に軽く手を振ってから俺に家に上がるよううながす。
「さあどうぞ佐倉さん、遠慮せずに上がってください」
「あ、ああ。お邪魔します」
戸惑いつつも俺は神代に従って家へと上がり込んだ。
広く長い廊下を歩きながら、
「さっきの人は?」
訊ねると、
「九曜さんですか? 九曜さんは住み込みのお手伝いさんです。といっても僕が小さい頃からずっと一緒なので家族みたいなものですけどね」
前を行く神代が振り返り言う。
「ふーん、お手伝いさんね……」
さすが金持ちは違う。お手伝いさんが家にいることを当然のように話すのだから。
☆ ☆ ☆
おごそかなサーキュラー階段を上り二階に上がると、
「ここが僕の部屋です」
神代が階段横の部屋のドアを開けた。
「ん……?」
「どうかしましたか?」
「あ、いや、別に……」
神代の部屋は想像していたよりだいぶ狭く普通の男子高校生のそれとほとんど大差がないように感じた。
大豪邸の一室とは思えない簡素で質素な造りに逆に面食らってしまう。
神代はカバンを机の上に置くとふすまを開けた。
そしてその中にしまっていたアイテムを取り出す。
「これらのアイテムの中から佐倉さんに合うものをお貸ししたいと思います」
言って俺の目の前に武器や防具、アクセサリーを並べてみせた。
「だからさぁ、俺はバレずに上手く手加減する方法とかが知りたいんだよ。さっきも言ったけどこんなのを装備して今より強くなっちゃったら元も子もないだろ」
「ふふっ。まあ騙されたと思って試しにこの靴を履いてみてください」
神代はそう言うとサッカー選手が履いているようなスパイクのついた靴に手を向ける。
「騙されたくはないけどな……」
言いながらも俺は神代の指示通りそのなんの変哲もない靴を両足に履いてみた。
すると、
「ぉおっ!?」
体が急に重たくなった気がした。
「なんだこれっ?」
「それは鈍足のシューズといって装着した者のすばやさを0にする呪われたアイテムです」
神代はさらっと言ってのける。
「うぉい、変なもん履かせるなよっ。これちゃんと脱げるんだろうなっ」
「大丈夫ですよ。僕も試しましたから」
「まったく……」
俺は慌ててその鈍足のシューズとやらを脱ぎ捨てた。
途端に体が軽くなる。
「もうおわかりのようにここにあるアイテムはすべて呪われたアイテムです。これらを装備して大会に出場すれば佐倉さんがいくら本気を出しても誰も殺めることはありませんし本当のレベルがバレることもありませんよ」
神代は手を広げそう言い放つのだった。
『ダンジョン・ニート・ダンジョン ~ダンジョン攻略でお金が稼げるようになったニートは有り余る時間でダンジョンに潜る~』
という小説も書いているのでとりあえずブクマだけでもよろしくお願いいたしますm(__)m




