覚醒
戸惑いはやがて油断を生む。本人にしてみれば今は戦闘状態にあるはずでそんなことを言っている余裕はないはずである。と、アルビーは思う。そうこうしているうちに先ほど先輩二人が倒した物体から小さな物体がわんさか飛び出してくる。予期できたはずなのに集中力が一瞬切れていたことで対応が遅れる。なんとか迎撃はしたものの幾らかは攻撃をくらって苦悶の表情を浮かべる先輩二人。
「回復します。そのまま動かないで」
聖女や大賢者が対応する前にアルビーは回復魔法を発動させる。
「なんだこれは!!回復どころかパワーアップしたような気がする。それに剣も新品みたいに治っている。アルビー、お前一体」
驚くワンブラスに対し
「どうやらこの期におよんで目覚めだしたようだな。だがまだまだこんなものではないだろう。より困難な状況になれば覚醒するかもしれない」
カルストンはそう告げる。
「方向性は決まった」
クボタは言う。
「これからあの中に突入する。けどその前にあれをどうにかしないとね」
クボタが見据えるさきには指揮官と思わしき男が立っていた。
「この程度では満足できなかったようだね。だがこれからはそうはいかない。あなた方は私を倒すことができるかな。せいぜい楽しませてくれたまえ」
「典型的な敵方ボスだね。さっさと倒すぞ」
真っ先に男に殴りきらんとするクボタを大賢者が制す。
「指揮官が先頭に立つな。オヌシは馬鹿か」
そう言われてなにか言いたそうにしていたが大賢者の真剣な表情を見て黙りこむ。
「ここでのオヌシの役割は状況を確認してそれぞれに適切な指示をだすことじゃ。いちいち敵の挑発にのるな。それでこれからどうする?」
「あれは許せませんね。死んでまで働かせるなんて」
「あれ、死体を動かしているのか」
「いわゆるアンデッドというやつです。一部ゾンビも混ざっているようです。もう元には戻せません。浄化して魂を神のもとへ送り届けるのが最善かと」
「アルビーさ、やけに自信満々だけどそれってできるってことだよね」
「はい、おまかせください」
そう言ってアルビーはクボタの指示を待たずに魔法を発動させる。
辺り一面光に包まれる。しかしその光は先ほどの激しい光ではなく何か心を優しく包むかのような暖かな光であった。その光は他人のヒールを受けつけなれないクボタの心でさえも癒していく。そして心を癒されたクボタが見たのはアンデッド化された無念さを滲ませながらも残された仲間達の救出を願い穏やかな表情を浮かべて神に召されていく魂であった。その魂に対しこの支配からの解放を誓うのであった。
アルビーによって浄化されたあとには死体は一体も残っていなかった。
「突入!!」
クボタの号令とともに突入するしていく彼らであったが一人残っていた敵のボスに阻まれる。
「これで勝ったと思わないことですね」
放たれた衝撃波によって吹き飛ばされていくクボタ達であるが大賢者が発動した魔法によりダメージは最小限に食い止められる。しかし次の瞬間クボタが敵に捕まる。
顔面を殴られるクボタであるが殴られた瞬間距離をとったことにより大したダメージは負わなかった。しかも自動修復機能が発動しすぐに回復する。
「クボタさん、大丈夫ですか」
あわてて駆け寄ろうとするアルビーを制しクボタは言う。
「こいつは俺との勝負を望んでいるようだ。受けてたつ」
かくして一対一の大勝負が始まろうとしていた。




