ニューヒロイン②
「調査じゃと? 単なる調査ならわざわざ白服が出向くほどのものでもなかろう。何が目的だ」
「さあ、私はただ調べてこいと言われただけですので」
「そんなわけあるか、本当の事を話せ」
再び怒気を込めて神官に迫る大賢者す
「どうした婆さん、何を焦っている」
クボタは大賢者に問う。
「教会は自分の存在を脅かすようなものを決して認めようとはせん。お主の存在を知れば確実に消しに来る」
「別に教会を潰そうとは思わないけど」
「お主がそうでも教会はお主をそういうものだと認識する。大きな組織というものは自分より力を持ちそうなものを極端に恐れる傾向にあるからのぉ」
「そういうものか、だったらあなたの敵ではないとはっきり言えばいいのでは」
「そう簡単なものではない。あいつらは猜疑心の塊だからじゃのぉ」
「神を信じても人は信じないのか?」
「大きな力を持った者は大きな力を恐れる。お主とて例外ではない。力の大きさや影響力をまだ理解できていないお主の存在を快くおもわない者は一人や二人ではない、心に刻んでおけ」
「初めて師らしいことを言われたような気がする」
「茶化すな、お主の持つその力は毒にも薬にもなる。使い方を間違えるなと言うことじゃ」
「あの、師弟の話し合いの最中申しわけありませんがこちらの話も聞いてもらえませんか」
神官は会話に割って入るが大賢者はにべもない。
「異常なことはなにもない、と伝えておけ」
「子供の使いじゃあるまいし。こちらの方のことといい、異常だらけじゃないですか」
「これからのことは教会には関係ない。しゃしゃりでてくるなとワシが言ってたと伝えてればいい」
「これだけの力の存在を黙っておけと。どうやら話し合いは決裂のようですね。こうなったら力付くでも」
「やはりそう来るか、相手になってやる。かかってこい」
大賢者は戦闘態勢に入る。
魔法で攻撃を仕掛けるかと思いきや神官は剣を振りかざし大賢者に斬りかかる。が、大賢者はそれをかわすと同時に至近距離から火の玉をぶつける。
一瞬怯んだ神官に大賢者は魔弾を連発する。魔弾は全弾神官を直撃するが一切ダメージを受けていない。
「さしもの大賢者もこの聖衣を貫くことはできないようですね。何せこの聖衣は魔法攻撃を無効化しますからね」
大賢者と神官が戦っている間に聖女はみんなを連れて安全な場所に避難させる。
「大賢者のことだから大丈夫だとは思うけど。魔法が効かないとなると」
聖女は少し心配そうだ。
「だったら」
クボタには何か考えがあるようだ。
「ちょっと助けに行ってくる、エレノア、俺の考えは実行出来るか?」
「たぶんいけると思うけど」
少し不安そうにエレノアは答える。
「ならやるぞ、好きなだけ魔力を持っていけ」
「わかった」
「まずはゼロ・グラビティ」
クボタがそう唱えるとクボタの体が宙に浮く。
「地に足ついていないと制御するのが大変だ」
「それもこっちでやるから魔力と精神を集中させて」
エレノアがそう忠告する。
「婆さん、そこから離れろ」
上空からクボタの声が聞こえたことに大賢者は驚いたが言われた通りにその場から避難する。
「グラビトン」
クボタがそう唱えると神官を中心としたあたりの地面が重圧に押し潰されたように陥没する。その陥没に巻き込まれたように神官は押し潰され立てなくなる。神官は全身の骨格や筋肉が砕けるような感覚を感じた。このまま死んでしまうのか、白服として初めての任務、それすらも果たせぬままこのまま果ててしまうのか、そう思うとなんのために白服になったのかと情けない気持ちと申し訳ない気持ちが神官の心に浮かんだ。そしてこのまま意識を失うのだった。
「相反する2つの魔法を同時発動するとは。お主はどこまでもワシの想像を越えてくる」
大賢者は半ばあきれたように言った。
「ベテランになればできるのでは、大賢者ともなれば簡単でしょう。もしかしてできないの?、大賢者ともあろう人が」
「調子にのるなよ小僧、その伸びた鼻っ柱へし折ってくれようぞ」
「望むところだ。師匠越えをやってやる」
聖女に治癒魔法をかけられ意識を取り戻した神官が目にしたのはお気に入りのおもちゃを与えられてはしゃぎまくる子供のようになっているクボタとそれに付き合う祖母のようになっている大賢者の姿だった。
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