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その日、風呂上がりに寛いでいたところへ一本の電話に呼び出された。まあ、嬉しいお強請りなので喜んで出掛けるのだが。
|いつもの店《Falcon's Nest》ではなく、指定された内郭街のホテルを訪れる。大通りにはそこそこ高級なホテルが建ち並び、指定されたここも庶民が利用するには敷居が高いホテルだ。豪奢な造りロビーを通って階上へ上がり、ワインレッドの絨毯を敷き詰めた廊下を進むとその部屋のドアを開けた。
「あーセスさん………もしかして怒ってますか?」
先に部屋で待っていたのは、純白の羽を広げて腕を組み、仁王立ちする天使。いつもの熱い眼差しは何処へやら、冷ややかな水色の瞳が寒いです。部屋に入った途端、いや俺の姿を見た途端、室内の温度が確実に数度下がった。
「もしかしなくても怒ってるけど?」
ドアを背に突っ立ったまま身動きすることさえ許されませんよ。
「あぁー…こ、心当たりが」
「無いとでもいうつもり?」
ずいっと近づいてきたセスは、両手をバンッと俺の顔の横に置いて凄む。
近い近い、顔めっちゃ近いって。いや、怒った表情も可愛いのだが…。
両手を万歳して降参する。なぜかは知らんがバレてるっぽい。
「あー、そのー、ごめんなさい?」
「へぇー何で僕が怒ってるか自覚あるんだ?」
「えっと…一応聞くけど何で??」
くわっとセスの瞳が開いて、お怒りモードで首を絞められた。
「絞まる絞まる…ほんとに死んじゃうから…」
セスの両手を掴んで、絞殺されそうになるのをとりあえず防ぐ。
「こんなに他の男の匂いを付けて僕に会いに来るなんて!!」
「セスの鼻は獣人並みか?」
というか何故、男だとで分かったのだろう?
「シノブの身体から他の人の魔力を感じるっ!!この浮気者!!」
「魔力?誰の??」
「僕が知ってるわけないでしょ!!でも、シノブから他の人の魔力がぷんぷん匂ってるよ」
心当たりといえば、昼間にちょっかいかけた赤毛の騎士だ。
「えっと浮気すると、相手の魔力が感染るのか?」
そりゃ浮気がバレる訳だ。
「体液とかを取り込んだら分かるよ。僕が気付いたのは相手も同じ属性の魔力持ちだったから」
そういえば奴は風刃という風属性の魔術が得意だった。
けど、体内に入れる??
「えっと…俺は入れられる方じゃなくて、入れるほうで…」
しかも確かにタチだが、セーフセックスの為にちゃんとゴム装着してたし。
「そういう問題じゃないでしょっ!!」
「はい……ごめんなさい」
だとしたら何でバレたのだろう?
「大方、口で御奉仕でもしてあげたんじゃないのぉ!!」
「あっ………それか」
またもやセスに首を絞められた。
「っぶない!!ほんとに危ないから」
「誰に御奉仕してたんだよ!!」
「えっと…ちょっと成り行きで?……据え膳だったので」
異世界に来た当初は色々と?方々で??関係を持ってはいたが今はセス一筋。ただ、時々ちょっとした出来心が働くだけで……。
セスの両手を空で掴んだまま、攻防が続く。
「えっと、セスさん……どうしたら許してもらえるかな??」
「許してもらえるとでも思ってんの!!」
両手を力任せにセスの後ろへ回して腰の辺りでまとめると、掴んだ腕ごと自分の方へ引き寄せた。
怒ったセスは背を逸らせるようにして、距離を取ろうとするが、頬を寄せ耳元で懇願する。
「セスに嫌われたら生きていけない……どうしたら許してくれる?」
「くっ……僕は怒ってるんだからね」
「うん……反省してます」
「……も…………てよ…」
「……っん?」
「僕にも御奉仕してよ」
「………仰せのままに」
昼…1回だけにしておいて良かった。まあ、相手は何度も……げふん、げふん。
その夜はたっぷりと御奉仕させていただきました。ええ、朝まで。




