第0章プライムノア編 0話:レティクルは愛妹の命と引き換えに
周囲の家々がごうごうと燃え盛る炎に包まれ、そこかしこに敵味方入り乱れた死体が転がる集落の中央に、2人の男女がいる。
プレートキャリアと銃火器を装備した男は、うつ伏せで横たわる黒く重厚なバトルスーツの少女の横で跪き、止まらぬ涙を流す。
彼女の体は不規則に痙攣している。
銃撃や爆発の跡がスーツに生々しく残る。
少女のヘルメットは無造作に投げ捨てられており、赤外線スコープは破損している。
「ころ……して……にいさ、ん……!」
「ダメだ、待ってろすぐ助けてやるから!」
「やめ、て……。もう、いやなの、無理やり、動かされるの。だから、ころして……」
懇願する彼女の震える手が地面を押し、強制的に立ちあがらせようとしている。
「首のインプラントボルトを、ねらって……」
「いやだ! いやだセルカ!」
男は泣き叫び、最愛の妹ーーセルカの前で跪く。
「やめ、て。兄さんをころしたく、ない」
「くそ、くそっ!」
男は拳銃でセルカの首に埋め込まれた金属部品を狙う。
その手は小刻みに震え、狙いが定まらない。
「それを、こわして」
視界を滲ませ、歯を軋り、グリップを握り締める。
「はやく……!」
セルカの体が起きあがろうとするのを、彼女自身が力尽くで制御している。
だがそれも時間の問題だ。
「なんで、こんな……っ!!」
男は彼女の背中を押さえ、引き金を引く指に力を込める。
その瞬間。
男の目に点のようなものが見えた。
ソレは震える銃口に合わせるように動きが同期する。
白、青、赤と色を変えて震えている。
そしてソレが赤になった瞬間、雄叫びとともにーー銃弾を撃ち出した。
命中した金属部品は破損、爆発し、セルカの頚椎を破壊した。
「かっ……」
と。
その声だけを残して、セルカはゆっくりと息絶えた。
無理やり立ちあがろうとしていた体は力無く地面に伏せられる。
脳裏に浮かび上がる、ともに笑い合った時間の数々。
炎の音も、死体の焦げるにおいも。
ぼやけた視界に映る妹の姿に遮られ、感じることはできない。
拳銃を握りしめたまま、男は泣き崩れた。
堪えきれない涙と嗚咽を妹の背に浴びせながら。
初めまして、はなkeiです。
読んでいただきありがとうございます。
普段はノクターンでR18作品を投稿しています。
今回のこの作品は異世界転移ものとなりますが、中世+現代+近未来が混じり合った世界観のシリアスなストーリーになる予定です。




