8.記憶
「俺はここでやることがある」
太陽が照りつける夏の北国でバーズ=クィンファルベイがそう言った。
「少し時間がかかる。子供たちの路は頼んだ」
「へぇへぇ、ご心配なさらなくてもちゃんとお送りいたしますぜぇ」
赤眼の男のおちゃらけた言葉を背に受け、バーズが去っていく。
艶やかな黒髪の男が、体躯の良い男と二人の少年少女と共に歩き出した。
「あなたが来た頃は、まだ純粋だったのですけどね。メイル」
「今でも思い出すぞ。あの闘いは」
ソーマの発言に興奮したシェルアードが言った。
「それだけの戦力を迎え入れても世界の真実に関する情報は梨の礫だからな。荒れんのは分かるが元々は俺達兄妹と孤児の避難所なんだからもう少し丁寧に扱えってんだ」
ガンシュートの言葉にメルが反応する。
「助かってることもたくさんあるじゃない」
「まあ、な」
二人のやり取りを受けてエルが言う。
「メイルが来た時のバーズは死に物狂いだったからね」
「その頭領は退室してしまいましたし、たまには昔話でもしますか」
銀髪の男が巨大な甲冑を見ながら言った。
「おお、ならワシに語らせてくれ」
そう言ったシェルアードが自身の武勇伝かのように当時のことを語り始めた。
「どうじゃった?」
アジトに帰ってきたバーズに白い胴着姿の少女が聞いた。
「収穫は無ぇ」
透き通る刀身が2m程もある大剣を肩に担いでいる青髪の少年が答える。
「姫にも会いにいったのじゃろう?」
「ああ。何か知ってるような気がするんだが。クィンの話をすると表情が暗くなる」
「それならいっそのこと、その眼の力を使えばよろしいのでは?」
「殺されてぇのか?」
銀髪の男に青い眼を光らせ始めた少年が告げる。
「クィンと違って君の能力は人を抜け殻にしてしまいますからねぇ」
バーズの瞳を見つめながらソーマが告げる。
少年が意図的に視線を外す。
「意地悪だよ。ソーマは」
青髪の少年の隣にいるエルが言った。
「我が主には道を選んでほしいのですよ」
「覇道を征けってことか?冗談じゃねぇ」
「いえ、そうではなく」
ソーマの発言を轟音が掻き消した。
大地を震わせたそれに6人の盗賊達がその方を向く。
どうやら天から降ってきたらしい。地面に大穴を空けた3m程の甲冑がそこに在った。




