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The ability  作者: 不破陸
The ability
76/112

76.再生

白樺が立ち並ぶ冷涼の地。

薄く雪が積もっている道を歩き、黒髪の男が教会に入る。

木造の、古い造りの、その建物は何も変わっていなかった。

窓から差し込む光さえもログには当時と同じく感ぜられた。

人の気配に、祈りを捧げていた修道女が振り返る。

「お久しぶりですね」

男を一目見てそう言った女にログが言葉を返す。

「覚えて・・・いましたか」

「ええ、大戦の頃にお会いしましたね」

「あの時は失礼致しました」

長い黒髪の男が儀式的な礼をする。

「あの箱は、中身は・・・まだありますか?」

「ご友人の形見の、銀のプレートですね」

視線を落としてこくりと頷く巨躯の男に女が言う。

「お持ちします。掛けていて下さい」

修道女の背中を見送ったログが長椅子に腰を下ろした。







「生き残っている子供がいます!!」

「回収!!撤退!!」

砲撃が降る街中で軍服の男が指示を出した。

威嚇射撃を淡々と続ける男の背を、誰かの腕の中で目にしていたことを俺は覚えている。



「左利きなのかァ?丁度いい、こいつをやるよ」

隊を仕切る男が俺にリボルバーを渡す。

「そいつはなぁ、左利き用なんだ。こんなご時世じゃ滅多にない珍しい銃だぜ」

笑いながら男はそう言った。



「はぁ?戦争なんて適当にやってりゃいいんだよ」

「はぁ?」

隊長の言葉に俺は意味が分からず生返事を返した。

「いいか。あっちがこっちを撃ってくる。こっちがあっちに撃ち返す。当てる必要はねェ」

「当てなきゃ勝てない」

爆笑しながら隊長が告げる。

「当たらなきゃ死なねぇ!お互いそういうおままごとなんだよ!それやってりゃカネが入るんだ」

黙る俺に隊長が言う。

「生き残ることが全部なんだ。勝ち負けなんざどうでもいい。死ぬくらいなら逃げろ」




「何で俺の苗字をつけるかねぇ?」

「語呂が悪い」

『ルーチェ=サークル』と彫った認識票を、俺は戦場で拾った子供の首にかけた。




「せっかく安全なとこで暮らせンだ。そんな気にすんなよ」

あっけらかんと笑う男に俺は言った。

「アンタの方が寂しそうに見えるが?」

「テメェはいつまでも馬鹿だな。いつも言ってンだろ?生きることが全部だってよ!」

赤毛の女を施設に預けた夜の出来事だった。



「アレは・・・人間じゃない・・・赤い眼の・・・」

血の海の中、生き残っていた仲間が最後の言葉を絞り出す。

「死神・・・」

銃創と裂傷、火傷にまみれた死体から俺は認識票を集めた。







「こちらでお間違いありませんか?」

思い出に耽っていた男に修道女の声が届く。

木箱の中に収められている認識票を黒い瞳が眺める。

「確かに」

『ログ=ジェネクト』と刻印された認識票を自身の手に取る。

代わりに『ライス=サークル』と刻まれている認識票の上にルーチェのそれを置いた。

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