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74.誰がために
静かに、ただ静かに黒髪の男がルーチェの亡骸を見つめる。
その光景を見た少女が居た堪れず、少年の手を取ってリビングを後にする。
「射線上にシルファを置けば」
空になった弾倉を確認したログが女の上着のポケットを探る。
「俺は撃てなかった」
一発の弾丸と『ルーチェ=サークル』と刻印された認識票を黒髪の男が手に取った。
「他国にこれを届けたい。一緒に来てくれないか」
沈黙を続ける赤眼の男にログが続ける。
「国境を超えるのに時間がいる。お前ならビザも要らないんだろう」
「野郎と二人旅なんざぁしたくねぇよ」
手の内にした認識票を見つめる男にツェンが告げる。
「後よぉ、いつまでも事務所に死体置かれちゃ邪魔なんだよ」
「片は、付けた」
徐々に温度を失っていく体を腕にした男に、舌打ちをした赤眼の男が言う。
「持ってくもンはそれだけか?」
「ああ」
ログの返事を受けたツェンがルーチェの身体を抱く。
「好きだったぜ、食いっぷりの良さ」
赤眼の男が身体から高熱を発し、女の身体を一瞬にして骨も残さず荼毘に付した。
「バーズに伝えておいてくれ。しばらく任務から離れる」
「野郎の頼みなんざ聞かねぇ。テメェで言え」
赤眼の男のその言葉に、黙ってログが事務所を後にした。




