73.ノクターン
「は?意味分からないんですけどぉ?」
「俺も意味が分かるように話してはいない」
「それこそ意味が分からないんだけど」
バーズがリネアに青い眼を光らせる。
「何・・・これ・・・」
「俺は記憶を人と共有することができる。その一端だ」
TVの画面を見た赤毛の女が軽快に告げる。
「そろそろ年越しだねー」
ソファに座ると赤毛の女がシルファの肩に腕を回した。
「あの・・・?」
距離感が近すぎるルーチェに栗色の髪の少女が疑問を呈す。
「騒がないでね。首の骨折っちゃうから」
こうなることをシルファは知っていた。
「だったらアンタが・・・ルーチェを止めればいいじゃない」
吐き気を堪えたリネアが青い眼の男に告げる。
「俺が決着をつけて何になる?」
右手の袖から拳銃を滑り出し、少女の頭に突きつける。
「ルーチェ、何してんだ?」
そう問いかけるエルの言葉に二連の銃口から弾丸が飛んだ。
「次は当てるよ?」
シルファの顔を掠めた銃弾に、その場にいる全員の動きが止まる。
「ツェンでもアンタでも誰でもいい!止めさせろって言ってんの!」
席を立つリネアの腕をバーズが掴む。
「今、彼女を止めたところでいずれ誰かを殺す」
「だからって」
「だから何だ?俺にルーチェを殺せと言うのか?」
「そうは言ってない!!」
「ここで殺さなければ同じことだ」
バーズの光る瞳を見たリネアが静かに告げる。
「誰かがやらないと、エル君と・・・シルファちゃんが巻き込まれるんだね」
「それだけではすまない」
全てを理解し、それ以上何も言わないリネアにバーズが言葉を放つ。
「ログがケジメをつけることに意味がある」
エルに銃口を突きつけたまま、シルファの首を絞めている赤毛の女が口を開く。
「バーズを連れ
銃弾が飛ぶ。
それは光よりも速かった。
物理的な意味ではない。
皮肉な以心伝心。彼等の心は何より強く通じ合っていた。
ボクサーのジャブより速い少年の拳も、音速を超える鬼神の動作も
それ等が動くより早く、認識さえ置き去りにした衝動がルーチェの頭蓋を貫いた。
左の手に持ったリボルバーが白煙を上げている。
命亡きその肢体にログが歩み寄る。
誰も何も、言葉が出なかった。




