71.赤
「ただ」
喜び合う二人が落ち着いた頃、青眼の男が口を挟む。
静かになる二人にバーズが続ける。
「エル、お前にはいずれ両親と一緒に暮らしてもらいたいと思っている」
口を結んだ少年にバーズが告げる。
「深く考えなくていい。無理ならここで暮らせ」
「・・・うん。アンタがそう言うなら、やってみる」
それ以上、二人の間に言葉はなかった。
「冬は鍋だねぇ」
「鍋は好きだけど狭すぎないかしらぁ?キツいんだけど」
ソファにぎゅう詰めにされているリネアが告げた。
「俺を見て言うな」
隣に座るログが言う。
「入れた傍から具がなくなっちゃうし」
「ひゅみゅません!すみません!」
ログの隣で肉を喉に流し込んでいるルーチェが無駄な謝罪をした。
「大体、この人数に鍋一つってのがおかしいんじゃないのぉ?」
「仕方がないだろう。7人の会食を想定していない」
「せめて椅子くらいご用意していただきたかったわねぇ」
対面するソファに座っているバーズにリネアが苦言を呈した。
「ツェンに言ってくれ。俺は年越しパーティの話など聞いていない」
「いいじゃねぇかぁ。身を寄せ合っての鍋なんて最高に体が温まるだろ?」
「狭いって言ってんの!エル君とルーチェちゃん以外ほとんど食べられないし!」
「さぁて、ここでお立合い」
両の掌を打ち合わせた男に全員の視線が集まる。
「火鍋の登場だ」
ツェンが指差す方へ視線を移すと、一部が真っ赤に染まった鍋が出現していた。
「すごすぎます!いただきます!!」
対面に座るエルとルーチェの間にあるそれを、二人が猛烈な勢いでかっ食らう。
突如として動きを止めた二人が悶え始める。
「み・・・水を・・・」
「水くれ・・・」
「へぇへぇ、取ってきますよ」
鍋に具材を入れ終えた赤眼の男が席を立った。
キッチンへ向かう途中、食卓に向き直って告げる。
「後で喰い方教えてやるよ」




