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The ability  作者: 不破陸
The ability
45/112

45.デリンジャー

隣の開店祝いの準備と共に閉業している喫茶店で、青眼の男と銀髪の男がテーブル越しに向かい合っている。

「設計は任せると言ったが隣を花屋にしたのは君の趣味か?」

「店舗の形状が特殊過ぎるため、バーズ様が望まれた建物の構造上そう致しました」

差し出された資料と報告書にバーズが眼を通す。

「私は古物商でもやっていた方が良いと思うが、それはどう考えた」

「スラムから廃品や盗品の売買を持ち込まれる事態を避けるためと申し上げます」

青い瞳が銀髪の男を見つめる。

「花屋の従業員をどう選んだ?」

「近隣に広告を打ったところ応募がございました。ログと知り合いなのは偶然ではないと存じ上げます」

青い眼を光らせたバーズが告げる。

「懸念材料を洗い出してくれて助かった」

「こちらが本業ですから。ですが、閑散としている店を眺めるとなると寂しくも思います」

長い戦争が終わってから二年。売り上げなど見込めない花屋を想い、老境に差し掛かろうとしている銀髪の男が口にした。

「君の時と同じように何かしらの宣伝はしておく。慰霊と花を結びつけるとかな」

「それで救われる命があるのならば、お願いいたします」

怒りとも悲しみともつかない表情をしている男にバーズが答える。

「オズワルド、君自身はそれで不満はないのか?」

「不満を申し上げたところで孫娘は戻りませんから」

青い瞳を見つめるオズワルドと呼ばれた男にバーズが再度答えた。

「そうか」

そう告げて喫茶店から出て行こうとするバーズが、銀髪の男に問いかける。

「二階でルーチェを交えて食事をしている頃だ。君も一緒に食べるか?」

「申し訳ございません。後処理が残っておりますので辞退させていただきます」

そう告げた銀髪の男に振り返らずバーズは喫茶店を立ち去る。

その後ろ姿が消えた後、オズワルドは壁に飾られている絵画を眺めていた。



応接室の奥にあるリビングで鉄板焼きをしている6人の姿が青い眼に入る。

「それ俺のだぞ!!」

「戦場では取ったもの勝ち!」

ルーチェが奪い去っていった海老の隣にある海老をフォークで刺そうとする前に、栗色の髪の少女がそれを箸で掴んだ。

「取るなよ!!」

箸の先で海老を持て余しているシルファがエルの口にそれを運ぶ。

「食べる?」

「うん」

差し出された海老を口に含んだエルの幸せそうな顔を見て、シルファも微笑む。

「俺の分は残っているのか?」

「おかえりなさい。やっと焼けたくらい」

「おひゃえり」

バーズの姿を見て挨拶を交わす二人を見たルーチェが口いっぱいに物を詰め込みながら言葉を発した。

「ひゃひゃいりなひゃいまひぇ。みゅただにゅてみょりまにゅひゅ」

「ルーチェ、口の中の物を飲み込んでから言ってくれ。エル、お前もな。何を言っているのか分からん上に下品だ」

喉を詰まらせんばかりに口内に食物を詰め込んだ赤毛の女に青眼の男が告げる。

口の中に溜まる食料を水で流し込んだ女が答えた。

「おかえりなさいませ!いただいております!!」

「エルには私が食べさせたところなの。おかえりって言うだけ偉いでしょ」

それを耳にした赤眼の男が鉄板に赤身の肉を乗せて言う。

「喰い物ならいくらでもあるぜ?さっきスーパーで買ってきたからよぉ」

「お前、ずっと部屋にいたじゃねぇか」

金眼の少年に指摘された赤眼の男が答える。

「そうだったか?だったら昨日買ってきたんだよ」

そう答えたツェンが更に肉を鉄板の上に乗せた。

「オーナー様、こちらへどうぞ!」

自身が座っていた椅子から立ち上がり、それを引いた青い目の女が言う。

その瞳に青い眼を輝かせた男が告げた。

「そう畏まる必要はない。君はそこで食べていてくれ」

食卓から離れるバーズを眺めて椅子に座り直したルーチェに、黒髪の男達が同時に言う。

「アイツはいつもああなんだ」

言葉が被ったツェンとログに赤毛の女が少しだけ笑顔になる。

「仲良いね」

「ヤツに関する見解が同じというだけだ」

面白くなさそうに答えるログを横目に赤眼の男が肉を焼き始めた。



「飯食うところが随分広くなったなぁ」

プレートをかき混ぜているツェンが言った。

「リフォーム前は食卓などなかったからな」

青眼の男の言葉に、鉄板の上で踊る焼きそばを皿に盛られたエルを見てルーチェが問う。

「以前はどういう形だったんですか?」

「ん-、前は事務所のテーブルで飯を喰っててねぇ」

焼けた肉をヘラでひっくり返しながらツェンが答えた。

「キッチンも同じ部屋にあったから、その分事務所が狭くなったって感じかなぁ」

「客が来ない事務所を広げる理由もない」

青目の女に青い眼を光らせる男に、赤眼の男が言葉を返す。

「ルーチェちゃんはお客さんだぜ?」

「そうだったな」

バーズの言葉に赤毛の女が青い眼の男に声を張り上げる。

「お客様だなんて勿体ないお言葉です!ご飯までご馳走になって、すみません!!頑張ります!!」

「焼けている肉が気になるなら、とりあえず取ってくれ」

焦げかけた肉を気にしていたルーチェが鉄板に残った肉を浚うように自分の皿に乗せる。

「少し俺にもくれないか?」

そう告げたバーズが差し出した皿に、自分が持つ皿の中にある肉を全て移した。

「いや。こんなにも要らん」

「ああ!すみません!すみません!!」

そう言ったルーチェがバーズの皿に乗った肉をフォークで全て自分の皿に移した。

「君は極端過ぎる。悪いが振り分けさせてもらう」

ルーチェの前にある肉を各々の皿に箸で取り分けて青髪の男が言った。

「お手数おかけしてすみません!ありがとうございます!」

礼を言いながら皿から無くなっていく肉をもの惜しげに見ている女にシルファが告げる。

「食べますか?私お腹いっぱいになっちゃって」

「本当!?ありがとう!!」

青目の女が差し出された皿を手にして嬌声を上げた。

「鉢植えのお礼です」

「ん-ん、私の方こそ返しきれないくらいのお礼だよ」

幸せそうに肉を食む赤毛の女にシルファも笑みを浮かべた。

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