40.帰路
「アレぁ数か月前に落成したビルだ」
駅を行く赤眼の男が遠くに見える摩天楼を指差し、手を繋いでいる金眼の少年に告げた。
「らくせい・・・?」
「建て終わったってことだよ。新し物好きな奴等が集まってんのが見えるだろ?」
ツェンの言葉にエルが問う。
「アレ、入れるのか?」
「なにか見えるの?」
常人離れした視力を持つ二人のやり取りに、その視線の先を薄目で見つめる栗色の髪の少女が口を挟んだ。
「パレードみたいにすげぇ人込みだ。先生見えないのか?」
更に眼を凝らしてタワーを見つめるシルファにエルが言う。
「アレくらい見えろよ」
悪びれる様子もなく笑顔でそう言い放たれたシルファがふくれっ面をする。
「本とか書類や端末の見過ぎで目が悪くなったのかもしれませんねー」
「貴方達ほど目が良くないから私にもよく見えないのよねぇ。でもアレって慰霊碑みたいな建物じゃなかったかしら?一般公開はされてないはずだけど、野次馬根性って凄いのねぇ」
「全員がタワーに集まっている訳ではない。建物から伸びている人影は見えるか?」
青眼の男の言葉に、遠方へと眼を凝らしたリネアが答えた。
「行列みたいなのは見えるわねぇ」
「私もそれくらいなら」
「2km以上に渡り戦没者の墓碑が並んでいる。人混みのほとんどはその参列者だ」
一瞬、顔を顰めて青眼の男が答える。
「あのタワーはその横にあるだけで関係ねぇんだよ。リネアちゃん、最近の情勢に疎いのかぁ?」
「はぁ?」
赤眼の男の言葉にリネアが怒気を含んだ表情を向けた。
「悪ぃ悪ぃ。ただそれくらいはテレビとかでもよく見る話だぜ?」
「アンタ達と関わってからそんな暇はないのよぉ」
そう反論した黒髪の女に、武骨な顔面をした青髪の男がリネアに言う。
「忙しい君にも楽しんでもらえるコースを用意してある」
「貴方が言うと何でも物騒に聞こえるのよねぇ」
その言葉を聞いたツェンがバーズの頭に東国の被り物を乗せる。
「物騒になるのは、ここから何だよ」
東国で買い与えた衣装を身につけている子供達を見やると、男が口に出しそうになる言葉を呑み込んだ。




