38.相容れぬ人々
「お前にはお前の考えがあんだろうが気分が悪い」
バーズにそう告げたツェンが車両を移動しようとした。
「私もお供いたしますわぁ、お父さん」
「ついてくるな」
椅子から立ち上がったリネアが赤眼の男の形相にストンと腰を下ろす。
「何なの?あれ」
ツェンが列車の連結部の扉を開けて姿を消した後にリネアが呟いた。
「アイツはアイツなりに君を想っている。君もあの男を実父だと思ってはいるのだろう?」
「お母さんのあの顔を見せられちゃったら、そりゃぁねぇ」
病院で顔を綻ばせながらツェンの話をしていた母親を頭に浮かべたリネアが答える。
「ツェンも出来ることならサラや君と時を重ねたいと思ってはいる。二人共、君のことを大切に思ってはいるのさ。ただログが言ったように状況がそれを許さない」
「私も甘えているところもあるかもねぇ」
柔らかな眼差しでエルとシルファを目にしたリネアが、そう声を漏らした。
「東国で厳しいことを言ったのは悪かった、君とツェンには現状を認識してもらいたかったんだ」
「気にしないでおくわぁ。私は仕事でもあるしねぇ」
青い眼を光らせてリネアの言葉を聞いたバーズが告げる。
「今後は私も君を守るということを約束しよう」
「頼もしいナイト様が増えたってところかしらぁ?」
そのやり取りを聞いたシルファが少し面白くない顔をしながら青眼の男の隣から席を外し、横の座席にいる金髪の少年の前に座った。
「リネアさんとは仲直りしたようよ?」
向かい合う座席の前にいるエルにシルファが問いかける。
ぷいと顔を横に向けた金眼の少年に栗色の髪の少女が告げた。
「不機嫌?」
「別にそんな訳じゃねぇ・・・ねぇよ」
しどろもどろに応えるエルがシルファから目を逸らして答える。
「あの建物、知ってる?」
窓の外を移り行く景色を指して、少女が少年に問いかけた。
「知らねぇ」
「私も知らない。ねぇ。説明して」
薄く笑みを浮かべたシルファが向かい合っているログに問いかける。
「アレは最近建てられた世界一高い建造物だ」
「けんぞうぶつ?」
「後はアイツ等に聞いてくれ」
エルに問われた男が席を立つと、バーズとリネアが空いた座席に座った。
「あの大きいビルみたいなのを言うのよぉ。エル君が住んでたところなんかもそう言えない訳じゃないから家とか建物って意味かしらねぇ」
遠く窓から離れそうなそれを見つめながら、うずうずと体を震わせるエルを見てバーズが言う。
「行ってみたいか?」
「行けるのか!?」
振り返って聞き返すエルにバーズが答える。
「ああ。では降りる準備をしよう」
席から立ち上がり棚から荷物を下ろす青髪の男を見て栗色の少女が、靴を脱いで座席に立ちながら金髪の少年が下ろしている荷物を支えて告げた。
「手伝ってあげましょう」
「邪魔。これお前のバッグな」
エルが軽々と荷物を下ろし、それを渡された少女が何かを言いたげに不機嫌な顔をする。
その表情を見た少年が問う。
「何だよ」
「べーつーにー」




