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The ability  作者: 不破陸
The ability
13/112

13.原罪

「集まってもらったところ悪いがやることができた。五人で楽しんできてくれ」


 青い眼を光らせながらバーズが言った。


「何かあったのか?」


「その何かの調査に行く」


 青い眼の男の言葉を不思議に思ったツェンが口を開く。


「珍しいな? そういうのは俺に任せとけよ」


「取りつく島もない調査になる。何か分かってからお前には探りを入れてもらおう」


 青い眼をツェンに向けるとバーズが告げた。


「夕方までに何事もなければそちらと合流する」


「何があったのか知らねぇけど、せっかくの旅行だ。気楽に楽しんだらいいんじゃねぇの?」


 丸眼鏡をかけた男の言葉にバーズが言う。


「元々の名目は旅行ではないしな。それにどうもこの国の様子がおかしい。俺の力が及ばない者もいる。今のうちにその調査だけでも終わらせておきたい」


「そういうことなら俺も行こう」


 話を聞いていた黒い長髪を後ろで結った黒目の男がそう申し出た。


「協力してくれるのはありがたいが君はエル達と一緒にいてくれ」


「バーズが行くなら俺も一緒に行くぞ」


 青い髪の男を見上げながら金髪の少年が言う。


「敢えてお前を危険に巻き込むような真似はできない。お前はシルファを守ってやってくれ」


「だったらよぉ」


 寂しそうな目をしたまま無言の少女を見て、頭に布を巻いた男がリネアとログの肩を抱きながら意地の悪い笑みを浮かべて告げた。


「こう分かれるか? ガキ共はお前が守ってやれよ」


「悪くない提案かもねぇ。三人で調査に行きましょ」


 その腕を振り払いながらそう告げるリネアに続き、同じくツェンの腕を払いながらログが言う。


「どの道俺は一人で行かせてもらうが」


「調査には俺が行く。君達は五人でいてくれ」


「調査調査ってどうせ当てもねぇんだろ? お前のことだから訊きまわるって訳でもないンだしよ。だったら俺達と一緒にいながら探したって同じことじゃねぇか」


「そういう訳には」


 そう告げるバーズの言葉を遮ってログが言った。


「いいや、単独調査には俺が行く。お前が突然何を調べようと思い立ったのかは分からないが俺はレーベルク、極東についての情報を抑えておけば良いんだろう?」


「いや、しかし」


 青い眼の男の言葉を最後まで待たずに黒眼の男が告げる。


「そこの死神の言う通りだと思うが?闇雲に歩き回るならお前が子供達と一緒に観光を続けながら調査をするのも変わりはしない」


「そういうこった。お前一人歩き回らせておくより、俺と一緒にガキ共のお守りしながら調査をする方がよっぽど安全に観光できるだろ。テメェが引き取ったガキほったらかして何一人で行こうとしてんだ」


 円い縁のサングラスの男にそう言われた青眼の男が口を開く。


「安全に関してはお前等が五人でいればいいと」


「そんじゃあ俺達は三人で行くわ。バーズ様のご加護があればエルやシルファも安心安全だろ?」


 そう言って立ち去ろうとするツェンを尻目にシルファが言った。


「仕事なのは分かるけど、当てもない調査をするなら私もバーズと一緒がいい」


「じゃあ三人で調査だな!」


 仕事の手伝いができると思い歓声を上げるエルに、彫りの深い顔を渋くさせたバーズが立ち去ろうとするターバン風の男を呼び止めた。



「端っからこうしときゃいいんだよ」


 後頭部から垂れ下がっている布をエルに掴まれそうになったツェンが、頭に巻いてある布の前部を引きながら言った。


 収納されていく布を見てエルが今度は頭に飛びつこうとするが、リネアに窘められる。


「俺には優先すべきことがある。エルとシルファの安全が確保できるのなら、ログに任せるより俺が行った方が早く済む」


「お前さんの目的が途方もなく遠大だってのは知ってるがよぉ、途中で拾った小さな期待にまで応えないでやることか?」


 隣を歩くサングラスをかけた男の言葉にバーズが答える。


「ならばお前にも今夜は調べに行ってもらうことになるが?」


「あー……」


 リネアとの約束を思い出したツェンが呻いた。


「適当な男だ」


「テメェに言われたくねぇよ」


 そう言い合って苦笑する二人にリネアが告げる。


「貴方達、仲良いわねぇ」


「そりゃ七年も一緒にいりゃあ夫婦みてぇなモ」


 口元を押さえてツェンが言葉を続けた。


「自分で言ってて吐きそうになっちまった」


「同感だ」


 そのやり取りを見ていたシルファがエルの頬をつついて言う。


「あの人達、私が来る前からあんな感じだったの?」


「ツェンは朝飯と夕飯の時以外ほとんど家にいないからよく知らねぇ」


 無表情になったブラウンの瞳の少女を見てリネアが告げた。


「あら、嫉妬かしらぁ?」


「別にそんなんじゃ……」


 リネアから顔を反らしたシルファの両頬を掴むとエルが言う。


「アイツ等が仲良いことなんて飯食ってる時でも分かるだろ」


「そうじゃないの! 離して!」


 栗色の髪の少女が金眼の少年の手を振り払った。


「どうかしたか、シルファ」


 声を上げる少女に青い眼を光らせるとバーズが告げる。


「分かるでしょ」


 拗ねた表情をしてみせた少女の手を取ると青い髪の男が歩き出した。



「貴方が突然調べようとしたことって何なのかしらぁ?」


 店頭で服や装飾品をツェンと選んでいる子供達を尻目にリネアが問う。


「不審者が眼に入った」


「それならあそこにいるじゃない」


 バーズの答えに頭に布を巻きつけた男を手で示すと長い黒髪の女が言った。


「アレがマシに見える程の危険人物だ」


 淡々と言葉を返すと青い眼の男が再び周囲に眼を光らせる。


「冗談よぉ。何が見えたのかしらぁ?」


「それを調べている」


 バーズの返事を不服に思ったリネアが言った。


「貴方さっきから辺りを睨んでいるだけじゃない。私は何が見えたか聞いたのだけれどぉ?」


「危険人物だとは答えただろう」


 その答えに納得がいかないといった表情でリネアが言う。


「私には話すことなんてないってことかしらぁ?」


「説明のしようがない」


 鼻白んだ表情を見せたリネアは子供達の下へと歩いて行った。



「どうだ! 格好良いだろ!」


 ツェン程ではないが異国風の格好をした少年がバーズの前でそう告げる。


「ああ、似合ってるよ」


「どう、かな?」


 同じく異国風の格好をした少女がはにかみながら青眼の男に問いかけた。


「ああ、可愛いと思うよ」


 生返事のような褒め言葉だったが少女は嬉しそうに笑う。


「相変わらず淡泊な野郎だな。俺様のプロデュースだぜ? 似合わねぇはずがねぇんだよ」


「お前の格好も胡散臭い露天商のようでとてもよくお似合いだな」


 そう告げる青眼の男にサングラスをした男がターバンを目深に被せた。


「俺の時だけ一言多いんだよ。テメェはこれでも被っとけ」


「うわっ」


 思わず声を漏らした一同に青い眼を光らせると低い声でバーズが告げる。


「お似合いかな?」


 自分が被せた手前、眉毛どころか瞼さえ隠したターバンのせいで殺人鬼のような眼つきにしか見えなくなった男にツェンは何も言えなかった。


「さすがツェン君のプロデュースだ。言葉も出ないほどとはな」


 そう告げてバーズが歩き出すと、道行く人込みが割れる。


「あれは怒ってるの?」


「ンな下らねぇことで怒りゃしねぇよ」


 シルファの質問に答えると、歩きやすくなった大通りをツェンが子供達にバーズの後についていくように手で促した。



「で、何か見つかったのか?」


「特に不審な情報は入っていない」


 遊園地のゲートを潜りながらツェンの問いにバーズが答える。


「何を探してるのかねぇ」


「説明はし難いが、悪夢のような感情がこの眼に映った後にそれを捉えられなくなった。この国で犯罪やテロを起こそうとしているだけなら俺も関与しないが、感知してから忽然とその存在を消した点が気になっている」


 走り出すエルの手を掴むバーズを見てツェンが言った。


「見間違いじゃねぇの?」


「俺は視力でそれらを捉えている訳ではない」


「何話してるんだ?」


 話し合う二人にエルが問いかける。


「あそこにいるお姉ちゃんがいいケツしてるなぁ、とね」


「興味がねぇ」


背後から刺すような視線を感じたツェンが足早に先へと歩いて行った。



「俺、あれやりたい」


 バンジージャンプを指差すとエルが告げる。


「いきなりあんなのやるのぉ?」


「エルがやりたいって言ってるんだからいいじゃない」


 バーズとエルの手を取るとシルファがアトラクションの入場口へと向かっていった。


「私、シルファちゃんに嫌われてるのかしらぁ?」


「良い女ってのは僻まれるもンだ」


 アトラクションの入場口へ向かっていく三人を見てリネアが言う。


「理由がそれだけなら良いけどねぇ」




「体重制限にひっかかるため俺にはこのアトラクションはできないな。一緒に行ってやってくれ、ツェン」


「リネアも行くか?」


 頭に布を巻いた男にそう問われた黒眼の女が答える。


「私はご遠慮しておくわぁ」


「そんじゃ俺様の華麗な舞いでも眼に焼き付けておいてくれ。それとちょいと失礼」


 エルに向き直ったツェンが少年の腋に腕を差し込んでその身体を持ち上げる。


「何だ?」


「お前ウチに来た頃は30kgくらいしかなかっただろ。飛べねぇんだよ、それじゃ」


 サングラスの男がアトラクションの注意書きを見やると体重制限38kg~105kgと記されていた。


「40kg弱はあンな」


 エルを降ろすとツェンが入場口で手続きを始める。


「先生は飛べるのか?」


 金眼の少年にそう聞かれた少女はツェンの後ろを無表情のまま無言でついていった。



 眼下に広がる光景を見て少女がこの場についてきたことを後悔する。


「どうしたんだ、先生」


「景色が綺麗だなぁ、と」


 恐怖心をエルに覚られないようシルファがそう答えた。


「でもそろそろ飛べよ。お前五分くらいそうしてるぞ」


「押さないで!!」


 その様子を見た円い縁のサングラスの男が口を開く。


「無理に飛ばなくてもいいんだぜ?代わろうか?」


「もう紐も結んだし行くわよ」


 深呼吸をした少女が目を閉じてゴムで固定されている足を踏み出す。


「ああああぁぁぁぁぁーーーーー!!!!」


 思惑ではもう一歩地面があった少女の足が空を蹴り、落ちていった。

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