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「stargazer」  作者: 熊翁
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「STARGAZER」

 飛んでいく。


 ライトクラフトが飛んでいく。


 プラズマの尾を引きちぎって、


 空を覆う塵の天蓋に大穴を開けて、


 水蒸気の爆音を轟かせて、


 ハルカナがその身を削った、十ギガワットのレーザーに押されて、


 秒速九・〇㎞/s目指して、


 高度四百キロメートルの、空の最果てまで、


 重力と、アルシノエの想いと、ファイバに怯える日々と、数々の思い出を振り切って、


 ただひたすらに、飛んでいく。




 カタパルトバレル基部の格納庫内。


 約四千度のプラズマに嘗め尽くされ、オーブンの中のようにこんがりと焼け焦げている。


 カタパルトバレルも、修復不可能なほどに大きく壊れている。


 動くものは、もはや存在しない。


 カタパルトバレルの瓦礫のひとつに、ハルカナの身体がもたれかかっている。


 両腕を失い、右足の膝から下がどこかにいってしまった状態で、打ち捨てられた人形のように、座り込んでいる。


 ハルカナの身体が、力の支えを失ったように、ゆっくりと横にずれて、倒れた。


 仰向けに倒れたその顔の先に、空があった。


 カタパルトバレルによって小さく切り取られた、空があった。


 ライトクラフトが蹴散らしたおかげで空を覆う塵のない、


 どこまでも、どこまでも深い、群青の空。


 その空に浮かぶ、小さな小さな白い星。


 ハルカナの表情が動いた、ように感じたのは気のせいだろうか。


 ハルカナの口が動いた、ように見えたのは見間違いだろうか。


 見間違いでなければ、その口はこう言っていたはずだ。



 た、だ、い、ま、



 見えないはずのその目でハルカナが最後に見たのは、何だったのだろう。



 何も知らないライトクラフトは、どこまでも飛んでいって、


 星になって、消えた。



 あとには、静かな静かな大地があるだけだった。

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