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勇者?との邂逅

前話についてなのですが、御詫び申し上げます。

中途半端で止まっていましたが、これは更新しようとした際にとある事件が発生

し未だに解決していない為、微妙な表現、極端な主張が含まれている続きを上げられずに居ました。ニュースで大きく取り上げられることは少なくなっていますが、それでもまだ治まっていない事態ですので、まだまだ上げることが出来ないと判断しています。

この為、前話とは全く関係ない続きを先にあげてしまおうと判断しました。

前話を一度消してしまうかとも考えたのですが、まだ判断を付けられずにいます。何か良い案がありましたら教えて頂けると嬉しいです。

真に中途半端で申し訳ないことですが、前話を一端脇に置いて、楽しんで頂けると嬉しく思います。

その日、エリーゼは志貴の家に押し掛ける前に一仕事を終わらせようとしていた。


今、彼女が何よりからも最優先して行わなくてはいけないことは真の勇者である志貴をやる気にさせ、あの家から引きずり出す事なのだが、それは本来、少なくとも彼女やこの世界の神が始めに想定していた計画ではしなくてもよかった、想定外でしかない仕事だった。


そして、彼女が想定外に担わなくてはいけなくなった仕事にはもう一つ、28人も招くことになってしまった仮勇者達のサポート、そして監視というものがある。彼等が生活などに困ることが無いように、この世界の基本的な情報を与えたりなどは当たり前の事。彼等が手に入れた力で破壊活動などの罪に手を染めぬように、説き明かしたり、時には物理に訴えそれを押し留める。基本的に、勇者達のもたらす事柄はこの世界に未来を産む重要な要素として、ある程度は黙認されるもののされている。それが例え仮勇者の仕業であろうと、人間レベルで後々に再建可能な程度なら‐この基準における年月が何百年単位なことは、判断する存在がほぼ不死に近い天使だから感覚の違いとしか言いようがない‐別に罪に加算されずに小言程度で修められるのだ。だが、それがもし、感覚の違う天使達をも危惧させる行為で、その上で警告を無視したのなら、エリーゼの指示の下にお仕置きが行われる手筈となっている。

その仕事を円滑に、漏れ一つないように進める為、彼等勇者には一人一人、それなりの力と格を持つ天使が遣わされている。彰人の下に遣わされたオリビエもその役目を与えられて遣わされた、上位の天使の一人たった。

これら遣わした天使達を纏め上げ、日々の報告、緊急の報せ、報告に対してどう対応するかについて、これらを過不足なく遂行していくことも、エリーゼの重要な役割だった。


「我が麗しのエリーゼ。どうか私めの報告にその清らかな御身の一時をお貸し与え下さい」


「それは止めて下さいと、何度言ったら貴方は理解してくれるのですか、ファーヴ」


 ギリッ。最近は彼女自らが補佐に回らねばならない勇者の発作などが原因となって崩れることの多いものの、普段は上品な振る舞いを心掛けているエリーゼにしてはあまりにも品が無い、歯を力強く噛み締める音が彼女の口から漏れ出た。

 この日、前もって予定していた通り報告に上がっていた天使達を順に相手をしていたエリーゼの傍らに、足早に訪れたその男は同僚である天使達を押しのけて進み出た。そして、彼等の驚きや訝しむ視線を浴びながらエリーゼの横顔に向かい、その足に口づけを落とすのかと思わんばかりに跪いて頭を垂れる。

 その行為に対しては、エリーゼに驚きは無かった。

 ファーヴという上位に位置する男の天使がエリーゼに対してそのような事をすることは、珍しいことではない。むしろ、それは何時もと変わらないものだった。エリーゼと顔を合わせる度に跪き、仰々しい物言いで挨拶や報告を行う、という少し他の天使達とは違う性質を持つことで彼は有名だった。だから、エリーゼは提出された報告が記されている一枚の髪から目を離すこともせずに、ファーヴの声だけを耳に収めて、不快であると示す声を絞り出したのだった。

 だから、エリーゼは次の瞬間まで全く気づいてはいなかった。


「麗しのエリーゼ。どうか、この世界しか見知らぬ私が判断を下してしまうには憚られる事なのです」


「…!ファーヴ…なんですか、その姿は?」


 何時も通りの仰々しい物言いには変わり無い。だが、その声に潜むことなく含まれた感情は焦りや不安が混じり、何事か、とエリーゼは報告書から目を足下に跪くファーヴへ移すことにした。

 そして、エリーゼは今の今まで気づいていなかった、異様な光景を目撃する。


 見下ろしたファーヴは真っ白だった。

 頭の先から足のつま先まで、真っ白なダボッと締め付けなど一切無い布で覆われつくした姿。目のある位置には、布と完全に繋がっているゴーグルが。口元には膨らんだり萎んだりとファーヴの呼吸に合わせて動く、人の世界で毒の森や鉱山の中に入る際に時折用いられている浄化マスクと呼ばれるアイテムが、これも布と完全に繋がっているようだった。

 ファーヴは天使の中で一・ニを争う程度に整った顔の美丈夫としても知られている。だからこそ、仰々しくキザな物言いをして、舞台上の役者のような大仰な行動を取っても、呆れられるくらいで不快だと思われることは無かった。

 その美貌を完全に覆い隠して、ファーヴは跪いたままの体勢でエリーゼを見上げていた。


「どうか、どうか。私が偉大なる勇者様にお目通り致しますことをお許し下さい」


 ファーヴの申し出によって、エリーゼは驚愕によって停止していた思考を今一度動かすことに成功した。そして、働き始めた頭である事を思い出すことが出来たのだ。


 あれ?そういえば、この姿を私は見たことがある。


「いいでしょう。志貴さんの所で詳しい話を聞くことにしましょう」

 この場にエリーゼへ、そして移動して志貴やきっと居ると思われる彰人へ、二度説明することも無いだろう。ファーヴの白い布やゴーグルに隠された表情を見えないが、その声の様子からはその時間も惜しいと言っているようにも感じ取れたからこそ、エリーゼはそう判断を下した。






 『天の御方』の宮。

 『放浪の賢者』の馬車。

 一部では『天の御方』そのもの、とさえ言われ始めている、世界の上空を漂い移動し続けている志貴の家。

 その家の玄関の前の僅かに残された足場に降り立った、エリーゼ。彼女は、真っ白な布に覆われたままのファーヴを引き攣れ、まずは当然のことと玄関のチャイムを鳴らす。そして、絶対に許可が降りないことを理解しているからこそ、勝手に玄関を開けて中に入っていった。

 エリーゼだけならば、彼女は玄関の中へと直接降り立つ。初めて会うファーヴを連れているからこそ、この日は玄関の前に降り立って、訪問する呈を整えて見せたのだ。警戒心の強い志貴のこと、この家が空中に浮かび、厳重な護りによって侵入者も何もあったものではないというのに、鍵もチェーンもしっかりと掛けられていた。だが、まるでそれらが何も無かったかのように、エリーゼは扉を開けて室内に入っていった。神に次ぐ上級天使である彼女にとって、何の動作もなく鍵を開けてしまうことなど簡単過ぎた。

 少しだけ、神より与えられた力の何と言う無駄遣いなのだろうと思うこともあったが、志貴との付き合いの中でそんなものを気にしないということにも慣れてしまっていた。


シュコー

シュコー

シュッシュッシュッ


「お邪魔します、志貴さん。今日はこのファーヴから何やら話があるとかで…」


 玄関から廊下を歩いて、リビングへと足を踏み入れた瞬間、最近では当たり前になってしまっているその洗礼がエリーゼと、ファーヴに降りかかった。

 しっとりと湿っていく、エリーゼの髪に服。

 周囲に立ち込めるのは、お酒の匂い。

 目の前には、ファーヴのそれよりもしっかりとした作りであると、その上で布の質も格段に違うことが人目で理解出来る、頭の先から足のつま先まで真っ白な人が立っている。顔を覆うのは、ファーヴのものとは格段に出来の違う、ゴーグルとマスクが一体化しているもの。それが最初にお目見えした際に彰人が呆れ果てた様子で言ったことには、パニック映画などでしかお目にかかったことの無い本格的な防毒マスクと言うものが、ゴーグルから覗き見える目元しか証明されないが志貴である人物の顔を覆っている。

シュコー、シュコー。

シュッシュッシュッ。

 まだ足りないとばかりに、志貴が手に握るスプレーからエリーゼ達に振りかけているのは、周囲に立ち込める匂いからも察することが簡単な、アルコールだった。 


「…志貴君が二人?」


 白い彫像のような志貴の後ろから顔を覗かせた彰人が、この異様な姿をした存在がこの世界にもう一人存在することなど、考えても居なかったのだろう。口元を引き攣らせて、エリーゼの背後に立つファーヴに目を奪われていた。


「志貴さん。毎回、毎回、何度だって言わせて頂きますが!」

 エリーゼは、キッと目を吊り上げて志貴を睨み上げる。

 志貴の性格などはよくよく理解はしているが、これは上級天使の最たる者と自負しているエリーゼの力に関わることでもあるのだ。この行為を何時までも許していては、エリーゼの誇りが貶され続けるということを意味している。そう、エリーゼは考えていた。

「この部屋は私が完璧に護っているのです!貴方が過剰に心配しているウィルスなんて、一切心配することはありません!」


 エリーゼは主張する。

 この家でその話題が何時もの通り志貴の発作という形で持ち上がったのは、彰人が不在の時だった。元の世界でも旅慣れていた事で知識も豊富であった彰人のツッコミなどが無いままに、エリーゼ達天使だけが付き合う羽目となった発作。

 遊びながらではあるものの、それをずっと耳にし、今回は珍しく本を何冊も持ち出して説明し始めた事で否応が無しに見聞きする事になってしまった、志貴によるウィルスについての説明。

 

 面白いことに、エリーゼが何とは無しに覚えてしまった知識は無意識の内に、この家を覆うエリーゼによる護り反映された。

 彼から図説付きで示された人に病をもたらすウィルスというもの全てが、護りに阻まれて室内に入ってこられないという仕様が、無意識の内に執行されていた。


「ウィルス…。あぁ、やはり!!」


 今すぐ完全防御の姿を止め、外から人が来る度来る度にアルコール除菌を試みることを止めろ、とエリーゼが詰め寄っても、志貴は顔を背けて応じようとはしない。

 そんな攻防の中、大仰に手を動かして自身が覚えている感動を周囲にファーヴは知らしめた。


「どうか!私が補佐する勇者、幸希に会って下さい。そして、苦悩に眠ることも出来ない彼に貴方の知力を貸し与えて頂きたい」

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