↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
生首の神饌  作者: 西季幽司
第一章「生首村」
PR
16/60

串刺し②

 MCの宮崎にカメラが向けられる。

「殺害方法まで、生首伝説と同じということですね?」

 宮崎は今回の事件が源平時代の生首伝説を模倣して行われていることを、羽田への質問を通して視聴者に印象付けようとしていた。

「はい。伝説と同じ殺され方で、碇屋恭一氏と東野正純氏は殺害されています」

「高階泰章という武将は碇屋嘉平の生首を神社に供えて、いずことなく去っていったんですね?」

「はい。碇屋恭一氏は頭部を切断され、首が神社に供えられていました。今回の事件は、その状況を酷似しています」

「そして、東野利右衛門という人物は木に吊るされて殺された?」

「はい。これも東野正純氏の遺体発見状況と同じす」

「驚いた~正に伝説通りですね!」

 息の合った芝居を見ているかのようだ。視聴者は伝説通りに人が殺されていることを意識したに違いない。モニタールームで西脇がにやりと笑った。

「鬼牟田さん、先生のご依頼で、番組が独自に入手した生首伝説、どうご覧になりますか?」宮崎が圭亮に質問を振った。

「大変、興味深い話だと思います。犯行が伝説を倣って行われているとするなら、二つの事件の犯人は同一人物である可能性が出て来ます」

 これが番組の言いたかったころだ。危険な賭けだ。

「なるほど、一見、手口がばらばらで、無関係に見える二つの殺人事件が生首伝説というフィルターを通して見ると共通性のある連続殺人事件として見えて来ると言うことですね」

 宮崎が巧みに圭亮の言葉をフォローする。

「はい。それに犯人は伝説のことを良く知っている人物だと言えます」

「なるほど~なるほど。生首伝説のことを良く知っている人間が犯人だと」

「もし伝説と同じように、犯行が同一犯の仕業だとすると、この手の連続殺人犯はパターンに拘ると言います。三件目の殺人事件が起きる可能性が高いのではないかと、それだけが心配です」人の良い圭亮は心から心配そうな顔をした。

「事件はまだ終わっていないと言うことですね?」

 更に危険な一歩を踏み出す。東野正純が犯人であった場合、番組はパッシングを浴びることになるだろう。

「その可能性があります。伝説では振袖村を支配していた三家の人間が、それぞれ高階泰章により殺害されています」

「鬼牟田さんは行方不明になっているA家の人間がターゲットとなる可能性があるとお考えなのでしょうか?我々の調査でA家には娘さんがいて、更に長男が一か月前より失踪していることが分かっています。彼らの身に危険が迫っているとお考えですか?」

「その可能性が高いのでは無いでしょうか?いずれにしろ、行方不明となっているA家の息子さんの安否を確かめることが目下の急務だと考えています。それに、碇屋氏、東野氏が亡くなっている以上、事件解明の糸口を握る非常に重要な人物なのかもしれません」

「他に何か生首伝説から分かることはありませんか?」

「そうですね。犯人が生首伝説をなぞらえて犯行を行っているのだとすると、犯行の動機は復讐なのかもしれません」

「復讐ですか!」宮崎が声を上げる。

 碇屋恭一、東野正純、それにA家の長男の三人が誰かを傷つけ、その復讐が行われているのではないかと言っているようなものだ。

 圭亮のコメントは即興だが、事前に宮崎がどういう質問をするのかは、予め伝えてあった。ここまではほぼ、打ち合わせ通りに進んでいた。すでに十分、効果はあった。

 これ以上は危険だと宮崎は判断した。「分かりました。今後も警察の捜査の進展を待ちたいと思います。ところで、鬼牟田さん。事件の取材のために現地入りを考えていらっしゃるとお聞きしましたが?」

 話題を変えた。この質問は事前に用意されていなかった。宮崎のアドリブだ。西脇の顔が曇る。もともと西脇が世間話のついでに宮崎に話して聞かせたものだ。報道局長の了解を取っていない。今、番組で取材旅行のことをしゃべられてしまうと後々、面倒だ。

 不意打ちをくらった圭亮は「えっ⁉」と戸惑いの表情を浮かべた。「いえ、まだそこまでは・・・」

「我々、サタデー・ホットラインと致しましては、鬼牟田さんの現地入りを全面的にバック・アップして行きたいと考えます。鬼牟田さんが現地でこの事件を快刀乱麻、解決してくれることでしょう」

 宮崎が厳粛な表情でニュースを締めくくった。

 生首伝説殺人事件の後、一週間のニュースが続き、週間天気予報のコーナーに入った頃、久美がモニタールームにやって来た。

「西脇さん。凄い反響ですよ。問い合わせやら、何やらで、電話が鳴りっぱなしだそうです」と顔を赤くして教えてくれた。

「よしっ!」と宮崎はガッツポーズをした。

「うちにすっぱ抜かれた他局が、今頃、慌てて確認に走り回っているみたいです。美嶽社長からも先ほど電話があって、他局から取材の申し込みが殺到しているけど受けても良いのかと聞かれました。どうします?」

「そりゃあ、うちの専属でお願いしたいところけど強制は出来ないよね~そう答えて」

「はい」久美がスキップをしそうな勢いで出て行った。

 番組が放送を終えた。

 スタジオに顔を出すと、圭亮が「宮崎さん。勘弁して下さいよ~いきなり番組で現地入りの話をされて焦っちゃいました」と宮崎に泣き言を言っているところだった。

「先生、取材旅行、OKが出るかもしれませんよ。すごい反響です。明日の週明けの視聴率の発表が楽しみだ」西脇が二人の会話に割って入った。

「反響がすごいのですか?」宮崎が食いつく。

「問い合わせやらクレームやら、山ほど来ているらしい。それに~」と言って西脇はにやりと笑った。「他局が後追いに動いているようです。美嶽社長のところにも確認の電話があったそうだよ~取材をさせて下さいと」

「おおっ!」今度は宮崎が歓声を上げた。「いや~苦労した甲斐がありました」

 自分も苦労したと言いたいのだろう。西脇は如才なく「これも宮崎ちゃんの取材のお陰だよ~」と持ち上げておいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。