現状の確認〜2
遭難者の救援の為、理玖の案内の元密林内を移動していく愛莉珠達。
道中で四方から視線や気配を感じたが、側に理玖がいる為か姿を見せずただ観察しているだけで留めている様だった。
「そういえばさリク。その顔の傷って遭難者を見つけた時に付けられたの?」
「見つけたというか…他の部族から報告があって対処したらこうなった」
「へぇ……どんな?」
「それは───」
道のりは長く、理玖は目的地までの間これまでの経緯を話し始めた。
***
事は遡る事5日程前。やらかしたキャンプ場の管理人では無く、野外学習を担当していた引率の教師からの連絡が途絶えた事に学園側が疑問を感じ始めた頃まで遡る。
理玖はその日も普段と変わらず朝からの挑戦者をしばきながら朝食を食べていると挑戦者では無い来訪者がやってきた。
それは密林外でもよく知られている単一の魔法のみを極めて下手すると特級戦乙女とタメ張れるマジシャンドリルの一種、雷猿の長老であった。
雷猿の長老が来た理由はとある禁忌者が率いる一団を制裁して欲しいとの事。その一団は密林内の部族の中でも素行が悪く煙たがれ挙げ句の果て禁忌を犯して追放された者達が集まってできたもので数日前に人間の集団を攫って好き放題しているそうだ。
奥地に迷い込んだ人間なら別に気にするものではなかったが、あろう事かその一団……追放組は密林に棲む者達で決めた人間が立ち入っても咎めないとした非干渉地からそれも大人数攫って来たのだ。
非干渉地は外部との緩衝帯の役割がある場所。そんな場所から大人数攫って来てしまっては外部の人間達が攻めて来るかもしれない。流石の魔猿も核爆弾などの大量破壊兵器の前では無事ではすまない。
本来なら自分達で対処したいが、追放組は多種多様の種族からなる者でそれぞれの種族に合った処罰を与えなければならず手間が掛かる上にちょうど繁殖期で人手が足りない。
そこで魔猿の長として君臨している理玖に頼み込んで来たのである。魔猿の長なら処罰の選択を気にする必要は無く、何より実力者である為である。
雷猿の長老が提示した報酬……それぞれの魔猿の部族の特産品の数々で理玖は依頼に応じた。
そして雷猿の長老の補足で追放組のリーダーは長老の部族の出身の追放者でかつて雷猿にとって重要な果実である雷樹桃を食い尽くした罪で追放された者であると知らされた。
雷猿は幼少期に雷樹桃を食べて成長する。雷樹桃は名前の通り雷の魔力を帯びた桃であり、これを幼少期から食べることで雷猿は電撃に対して耐性を得て雷電魔法を使える様になる。
ちなみにこの雷樹桃は大人が食べると雷電魔法の質が向上するし、人間にもそれが適応される。
…………尚、この桃は当然ながらユグドラシルに送られており、雷電魔法の使い手である愛莉珠が独占して同じく雷電魔法の使い手の他の戦乙女達との取り合いという名のデスマッチを繰り広げたのは別の話である。
そんな雷猿にとって重要な果実を追放組のリーダーはあろう事か何を思ったのか雷樹桃を備蓄分まで全て食い尽くしてしまった。そして止めようとした雷猿達を殺して逃走し行方をくらました。
幸いな事に雷樹桃は他の雷猿の部族から譲ってもらえた事で赤子の分は確保できたがそれでも事な事な為に満場一致で永久追放が決定した。
追放後は今まで姿を消していた為のたれ死んだかと思われていたが、偵察の結果生きている事が判明したのである。
自身の部族からの追放者が率いる一団が引き起こした事件……本来なら逃走を許してしまった自分で対処したい所ではあるが自分はもう老年で思うように身体が動けないととても悔しそうに長老は話していた。
そうして理玖は長老から貰った情報から追放組が潜伏している場所へと向かった。




