表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/31

第十六話、友達は保留

第十六話です

よろしくお願いします

 遅刻したお叱りを受け、周りのクラスの視線に晒され、ようやく俺は自分の席に着くことができた。お約束のような担任の話を聞き流しつつ、俺はやっと一息入れることができることに安堵に似た感情を抱いていた。

 

『これがこの世界の教育機関かの。やはりわしらより進んでおるわい』

「(ミゼルさんよ、感心してんのはいいけど、本当にあれでよかったのかよ?)」

『しょうがあるまい。戦いを止めることはできんのじゃ。わしらはあやつらが納得する形で勝敗を決めさせねばならん』

「(だったらもう少しお前さん達の機能というか、そういうのの説明が欲しかったところだぜ? 増えるなんて聞いてねぇしな)」

 

 脳内での会話を繰り広げながら時間を潰していく。しかし、案外俺も順応が早いな。こんな状況で普通に会話できてる。周りのこともある程度聞き取れるくらいだ。

 

 そのままウダウダとミゼルと話しながらいると担任の話も終わったようで、俺はいつものように朝礼を終えた。

 

 授業の準備をしていると、教室に入ってくる人影、どうやら委員長のようだった。

 あの後どうなったか見ていないのでなったかは知らない。そう言えば結界も解いていなかったような? 外を確認したらなかったので、ミゼルが気を利かせてくれたみたいだ。

 

 委員長の様子は見た限りではおかしなところはない。いままで多少の疲れが顔に現れていたが今日はそれが見えない。おそらくだが昨日はそこまで戦っていなかったことが関係しているんだろう。

 

「(そういえばミゼル。なんで魔王ってあんな感じで活動してるんだ? 俺らみたいに協力しないの?)」

『それは制作者の性格に影響を受けておるのじゃ。あの方々はお互い仲が悪かったし、書式というか方向性の違いというか。勇者があくまで人の意思、力で平穏を目指すのに対し、人の脆弱な精神性を唾棄した魔王は、絶対的な支配をもって争いを治めることが目標なのじゃ』

 

 人の性善説、性悪説の違いといったところか。それに巻き込まれてボロボロになった異世界の奴等が可哀想だ。それ以上に俺が可哀想だけどな。

 でも、こいつも大変だよな。こんなことに駆り出されて後処理してた訳だ。俺だったらその無意味さに職場放棄してるわ。同情するなー(するとは言ってない)。

 

 グダグダと話し続けていると、授業が何個も飛んでおりいつの間にか午前の授業は終了し昼休みになっていた。あれ、ヤバくね。内容全然覚えてないぞ。慌ててノートを見返すがなぜかきちんと書き込んでいた。内容も間違っていないし、なにこれ怖い。

無意識の行動に怯えつつ、俺は教科書を片付けた。これから天道達に会いに行かなきゃいけないのだ。さっさと行こう。

 

 

 そう思って廊下に出れば間髪入れないようなタイミングで走り寄ってくる人影。どうにもそれは天道、左近司の二人だった。

 

「おっ、いたぜ天道! 早速確保だ!!」

「そうち~ん、一緒に逃げよ~」

 

 話しかけてくる彼らの背後から迫ってくるように見えるのは、群れをなす女子の軍団。その顔に正気の色はない。馬鹿な、奴等が行動を起こすような時期ではないはず。いったい何が?

 

「どうしてこんなことになっているんだ」

 

 走る二人に合わせ逃走に加わる。天道も小さい体躯でかなりの速度を出せているのは日頃の逃亡劇の賜物だろう。左近司は言わずもがな、アクション俳優志望は伊達ではない。

 

「いやな、昨日の会合がバレたみたいでよ。『天童くんを独占するとは許せん』って、あいつら暴れてるんだよ」

「ごめんね~」

 

 凄まじく迷惑だった。三十分程度しかしていない話し合いでここまでのことをする必要性を感じられない。なんなのあいつら、何様な訳?

 

「お前らのせいじゃねぇよ。情緒不安定なあいつらが悪い。ヤク中より質が悪いぞ」

「・・・お、おう。そうだな」

 

 俺の女子に対する発言に左近司が答えたが、なんだ? 意外って感じが言葉のニュアンスで分かるんだが。

 

「ねぇねぇそうちん」

「なんだ、天道?」

「そうちんてさ、そんな感じだったっけ?」 

 

 天道の指摘を受け、ふと自分の態度を思い返す。短いやり取りだったがいつもと違っていただろうか。

 

「なんか変か?」

「いや~、そうちん大体壁張って会話するじゃん」

「おう、しょうがなく話してる感じがなくなってんぜ」

 

 暴走した女子の追撃を交わしながら、あ、自分そんな風に会話してたんだな、と気付かされる。経験からそんな風になってたんだと思うが、自然とそうなっていたのか。

 

「ちょっと色々吹っ切れたんだよ。我慢は良い訳じゃなかったみたいで、容赦はしないことに決めたんだ」

 

 こんな風にな。

 

「(ミゼル。認識阻害の防壁展開。屋上へのルートを塞げ)」

『曲がり角から構築するぞ』

 

 お役立ち魔法、認識阻害パイセンおなしゃす。

 

 俺は昨日、ハイになりながら自転車を爆走させていたときに誓ったのだ。

 理不尽に対し、俺は今まで後手に回りながらも、双方に被害が出ないよう出来るだけ衝突を避ける努力をしてきた。

 それは自分を守る行為だった訳だが、はっきり言って労力に見合わない。一度止めたとしても今回みたいに繰り返すようではこちらが疲れるだけだ。あいつらの不満解消に付き合う理由だって存在しない。

 

「そこ曲がんぞ」

「は? そっちは屋上だぜ。追い詰められるだけだぞ?」

「いいから、ついてこい」

 

 こちらの指示に疑問の声をあげる左近司。なんの手段も講じてなければ明らかな失策、本来取るべき選択ではない。

 しかしファンタジーの力を手に入れた俺には、いくらでも覆せる。

 

「(説明ん時は頼むぞ)」

『記憶の消去かの?』

「(今回だけだ。誤魔化しは必要だろ)」

 

 もちろんこれは女子に対してだ。三人で屋上に繋がる廊下を曲がった瞬間、ミゼルの魔法が発動し、曲がり角から廊下を認識できなくする。

 

「あれっ? ここ曲がったわよね。なんで廊下がないの?」

「道がなくなってる。ここってこうだったっけ?」

「天童君の姿がないよ。あの虫どこに連れてったの!?」

 

 混乱し口々に疑問や怒りの声をあげる追跡者たち。今の彼女たちには廊下を認識できず一面の壁が目前に広がって見えているだろう。この混乱を見逃す俺ではない。

 

「(そんじゃ頼まぁ)」

『うむ。ほーれ、忘れい』

 

 すかさず畳み掛けるように飛ぶミゼルの魔法。今度はこの一週間俺の精神を削っていた記憶を消すあれが集団を包んだ。

 あれほど騒いでいた女子たちは皆一様に黙り、意識が感じられない顔でフラフラともと来た廊下を帰っていく。

 

「・・・・・・おいおいどうなってんだこれ?」

「ありゃま~」

 

 目の前で起こった摩訶不思議な事態に足を止めていた天道達から呆然とした声があがる。まあそういう態度が普通で、俺はもう耐性が付いて驚かないようになってる。あの連夜の怪奇現象に比べればどうってことはない。犯人は俺だし。

 

「行こうぜ。話、するんだろ」

 

 

 

 

「スゲーなおい、マジかよおい!?」

「かわい~!」

 

 廊下での出来事に驚く二人を屋上に連れて、俺はネタばらしと昨日起こったことの説明をしていた。

 朝は誤魔化すつもりだったが一応恩人と呼べるようなやつらだ。他のどうでもいい連中みたいに扱うのはなんか違うかと思い、どうせ今回だけのことになるだろうことなので話してみることにしたのだ。

 

「よかったなミゼル。大絶賛だ」

「・・・・・・その割には笑いを堪えているようじゃが?」

 

 昨日の顛末を話し、話題の魔神を見てみたいという二人にお披露目しているのだが、こいつ。こんな格好でいっちょまえに恥ずかしがってるもんだから笑いを止めるのに苦労している。

 

 嫌がりつつも紋様から出るまでは普通だったのに、二人の視線に晒さた瞬間俺の首の裏に隠れたのだ。最初はなんでかわからんかったが、脳内会話で聞き出した内容がなんともな結果だった。

 

「お前、人見知りったって、たった二人だぞ?」

「ふ、二人じゃろうが何人じゃろうが初対面のやつとまともに話せるか!!」

 

 魔神ミゼル、まさかのモミュ障。

 

 うー、呻くように身を強張らせるミゼルの姿に、左近司は床に伏し身もだえしている。かなり気持ち悪い。

 天道は両手を胸の前に構えて目を輝かせていた。女子かお前は。

 

「まあ、犯人はこいつの御同輩だったわけで、俺の準備は意味がなかった訳よ」

「そっか~、ざんねん。役立てるとおもったのに~」

「いやいや、こんだけ可愛い娘ゲットできたんだからかなりプラスじゃんよ!!」

「左近司口閉じろ」

「ひどくねぇ!?」

 

 変態臭い左近司は置いといて、ひとまずこれだけは言っておかないといけない。

 

「天道、お前との交換条件だが、悪いがこっちの決着が着くまで保留にしてくれ」

「あ~、そうなっちゃうか~」

 

 今の状態で友達認定はなんというか、どうにも気持ちの座りが悪い。全部片付けてからそういった関係になるべきだという考えもある。

 

「・・・・・・おい、なんじゃそれは?」

 

 しょうがないよね~、と了承してくれた天道。内容に気になる点があったのか、ミゼルが会話に混じってきた。

 

「朝にちらっといったと思うが、問題解決に当たっての武器をこいつに用意してもらってたんだよ。ほれ、侵入者対策の」

 

 思い当たることがあったのか、ぶんっ、と音がしたと思ったらいきなり俺の顔の前に躍り出てきた。

 

「そ、それは本当か!? というか、準備とはそれのことだったのか!? なぜそれを早く言わんのじゃ!!」

 

 虚偽は許さん、とでもいうような真剣な目でこちらを見てくるミゼル。なんだ、お前のせいで無意味になったものにそこまで本気だしてんだ?

 

「武器っつったってお前らみたいなファンタジーに通じるもんじゃないぜ? ほぼ鉄の棒ぐらいの価値しかねぇよ」

「て、鉄の棒!? 最高ではないか!! えーいこうしてはおれんぞ。わしは帰る!!!」

「待てやバカ魔神」

 

 鉄の棒にそこまで興奮するとか、こいつどうしたんだ? 身を翻し飛び出そうとする彼女の体を引っ掴み、その動きを止めた。

 

「勝手な行動すんじゃねぇ」

「ぬおー離せい!! わしは帰るんじゃ!!」

「お前んちじゃねぇんだけど?」

「とにかくわしは行きたいんじゃーーー!!!」

 

 まだ抵抗を続けるミゼルの様子にただならぬものを感じるが、まだ勇者どもが問題を起こすかもしれない以上、学校の間はこいつに居てもらわなければならない。俺には魔法は使えないからな。

 残念だがミゼルには諦めてもらわなければ。なに、学校が終われば帰れるのだ。それまでは我慢してもらおう。 

読了ありがとうございました

感想、批判等お待ちしております

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ