モテ期 到来
「何よ? 今日はあいつ来ないの?」
竹井よ、僕はエスパーじゃないんだ。あいつって誰のことだろう?
「ジール室長なら、研究が忙しいから部屋から出られないって」
「考古学者は遺跡探検してなんぼでしょ? 馬鹿なの?」
適当に言ってみたら、どうやら正解だったようだ。ひょっとしたら僕は新しいタイプの人間なのかもしれない。
「ジールさんって、あの引き籠りの人でしょ? 食事くらいとらないとヤバいよ。そのうち自分がミイラになってそう」
「あの臭い人ね」
「夜中に水を求めて徘徊してた」
「なにそれ? モンスターっぽい?」
「あいつのお姉さんとかお母さんが、たまに食事を差し入れに来てるよ」
「マザコンはないわあ」
女子達にさんざんな言われようだ。というか、今日の遺跡探検には梅木さん以外の女子全員が参加している。みんな暇なの?
多分だけど、竹井の奴が前回のことを面白おかしく吹聴したんだろう。
どうせすぐに飽きて帰りたがると予想していたんだけど、まるで遠足気分で異様な盛り上がりをみせている。
たまにはこういう非日常感のあるイベントもいいのかな?
今回の遺跡は、かつてラピューター帝国が支配していた地上の大都市、その廃墟だ。
古文書を解読して場所を特定できたんだ。今では木々に覆われていて、ぱっと見じゃただの森にしか見えない。
「古代のレンガはっけーん」
「なんの、こっちは古代の漬物石だ!」
「それがありなら、もう何でもありでしょ」
「そろそろお弁当にしない?」
皆楽しそうだ。まるで遠足かピクニックだな。
ジール君からは古代の図書館跡を発掘してくれと頼まれてたんだけれど、この廃墟っぷりじゃあ紙なんてとっくに朽ち果ててそうだ。
「お宝は無いの? あとキモイお化けとか」
「お化けはいらないだろう?」
竹井は馬鹿だなあ。
「きゃあ、オバケいたあ」
吉田が芝居がかった悲鳴をあげながら走って来て、僕の背中にぴとっとくっついた。
「きゃあきゃあ」
「おばけだー、こわいー」
他の女子達も真似してふざけ始める。
「なんだよ、ただのオオトカゲじゃないか。2メートルもない」
このくらいのサイズなら日本の動物園とかにも普通にいそうだ。
「いやああっ! トカゲいやああっ!! 怖いっ!」
羽山は本気で怖がっているな。力任せに抱き着かれるといろいろ苦しいんだけど。
「こいつは……美味しくないやつです」
セーラちゃんが目を細めて品定めをしている。
美味しくないんじゃ仕方ないな。指パッチンして風圧で吹き飛ばす。
指を鳴らすのは演出、ただのかっこつけだ。なかなか上手く鳴らなくて、無人島で密かに何か月も特訓したんだ。
「「きゃあきゃあ! ミー君カッコいい!!」」
黄色い歓声? 女子にチヤホヤされるのはなんか嬉しいけど、これは何の遊びだろう?
「ちょっとあんた達! そんなのズルイ! 今のは大したこと無かったでしょ! 羽山の蜂一匹であんなの倒せるじゃない!」
竹井が怒ってるところを見ると、プリンでも賭けてるんだろうな。ルールはわからないけど。
「それじゃあ、図書館の痕跡を見つけてくれた人には、アイナおばさん特製の肉リンゴパイを出すよ! チョコソースのかかった超限定版だ! 美味しいよ!!」
あれ? リアクションが微妙だぞ? アイナ婆さんのパイは超美味しいのに。
「駄目だこりゃ、ニブチン過ぎる」
「それがミー君」
「アニメの鈍感系主人公でも、最近はもうちょっとマシかもしれない」
「どうよ! 思い知ったか!!」
竹井が何故か威張っているけど、一体どうなった?
エスパーするに、どうやら僕のデリカシーが足りず、女子の顰蹙を買ってしまったようだ。
「肉りんごパイを一皿丸ごと食べていいんですか? でもお腹壊しちゃうかも。困っちゃうなあ、えへへ」
セーラちゃんは涎をたらしながら葛藤している。
なんだそういうことか。つまりダイエットとかそっち系の話で……
カロリーの高そうなパイを賞品にしたのが不味かったな。
「絶対また妙な勘違いしてるし」
吉田がボソッと呟く。
大丈夫、問題ない。コンニャクの群生地は見つけてあるんだ。そのうち究極のダイエットフードを食べさせてあげるよ。




