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僕はおならで無双する  作者: 温泉卵


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220/250

読める、読めるぞ

「あんた誰よ? 怪しいわね、スパイでしょ」

 

 ボコボコにした怪しい男の尋問は、竹井に一任した。

 最近たまに馬鹿っていいよねと思う。フリーダムなのがいい。

 

 腫れた瞼の下から、濁った灰色の瞳が僕達を窺っている。一体何を考えているのか、さっぱりわからない。

 

「黙ってないで何か言いなさいよ。ちょん切っちゃうわよ!」

 

「あひゃい!」

 

「え? 何こいつ、ちょっと喜んでる? キモッ」

 

 あっち系の人なのかな?

 うわあ、そっちの方が気になってもう遺跡探検どころじゃない。

 

 竹井はまるで猫じゃらしを獲物を見つけた子猫みたいだ。そういやこいつイジメっこだった。全然更生してなかったのか。

 

 セーラちゃんの教育上良くないけど、こっちはこっちで好奇心全開で見物している。

 いいとこのお嬢様なのに、この子もわりと自由人。

 

「ボ、ボクはただ、古文書を探してただけなんだ。古いダンジョンには古代の文字とかも残ってるし、研究、そう研究してたんだ。ボクは考古学者の卵なんだ」

 

 怪しいなあ、嘘ついてるのが丸わかりだ。挙動不審だし。

 

「ミー君こいつ考古学者だって。いい奴みたいだよ」

 

 竹井はやっぱ馬鹿だった。

 

「えー、チョロ過ぎ」

 

「チョロ過ぎますねえ」

 

「誰がチョロインだ」

 

 このままじゃ夕飯までに帰れそうにないので、竹井とバトンタッチする。

 

 

 男はモリさんの部下の息子で三男坊。跡継ぎでも無く職も無く、暇に飽かせて古文書の解読を趣味にしていたらしい。

 いや、田んぼの仕事を手伝えよと思うんだけど、この世界の中流階級以上の人達はあまり働かない。それが当たり前なので誰も不思議に思わない。

 

 僕達のおかげで食っていけてるのに何の感謝もしていなかったようだ。説明していなかったモリさんも悪いよ。

 

 まあ、感謝云々はさておき、この男、満更馬鹿ではない。彼の手帳には、空島遺跡で目にする文字列が対訳つきでびっしり書き込まれてあった。

 

「古代文字の中では比較的研究が進んでいる鳥人文字と共通点が多く、解読は難しくありませんでした。例えばこの壁には、選ばれし者以外立ち入るべからずと書かれています」

 

「関係者以外立ち入り禁止ってことか」

 

「スタッフオンリーってことじゃない?」

 

 くっ、竹井の癖に生意気な。そういえばこいつ英語の成績だけはなんか良かった。

 

「ならこっちの看板は防犯カメラ作動中かなあ」

 

 目玉のイラストが描かれているし、壁から突き出している透明半球はレンズみたいなものだろう。

 

「えっ? 確かに、そうか。読める、読めるぞおっ!」

 

 手帳片手に大興奮している。どうやら僕の当てずっぽうは正解だったようだ。

 

「なんかクイズみたいで面白いね?」

 

「いや竹井よ、喜んでいる場合じゃないぞ。警備装置が作動する前にとっとと引き返そう。万一この島が目覚めたりすれば、異物を排除し始めるかもしれん 」

 

「あー、原状復帰? みたいな?」

 

「そうそう、田んぼも家も人間も、全部捨てられるかも。だから寝た子を起こすな」

 

「え? 空飛ぶ島が蘇るんですか? 素晴らしいじゃないですか」

 

 駄目だこいつ、肝心なところを理解していないのか死ぬのが怖くないのか、壁のレンズを叩き始めた。

 

 もう一度ボコってダンジョンから引きずり出す。自分の好奇心のためなら後先考えない奴だ。

 因果を含めてモリさんに引き渡そうか? いや、空島の秘密を知ったらモリさんまで妙な野心を抱くかもしれない。あの爺さんわりとそういうキャラだし。

 

 つくづく、モリさん達を空島に移住させたのは早計だったと思い知らされる。

 いや、昨日のことを悔やむより、明日のことを考えよう。前向きに、ポジティブシンキングだ……明日はどっちだ?

 

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― 新着の感想 ―
[良い点] 謎の男は某大佐のような事を言う考古学者という名のニート。好きに生きてて幸せそうだ。 [一言] 勇者や聖女並みの勝手さとある種の冷酷さを発揮した方が世界には合っているんですよね、やはり。モリ…
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