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春花秋月  作者: きさらぎ
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15/26

彼と彼女 ~僕だけの秘密~

「んっ・・・」


 ブルリと寒さに震え、僕は目を覚ました。

 そして、あたりを見回す。


 見慣れた部屋の中。


 隣には陽菜。


 そばには携帯が転がっている。



 そうだった。

 新しいゲームアプリを手に入れたから、陽菜に教えたくて来たのだ。

 そしたら、陽菜の趣味に合ったらしく、夢中になって遊んでいるうちに、二人とも眠ってしまったらしい。


 陽菜はすやすやと眠っている。

 一度寝てしまったら、大抵のことでは起きないからね。


 陽菜の携帯を手に取って、画面を開く。

 何件かの電話の着信履歴とメールの着信履歴。


 航太かな? それとも理玖? 名前を一応確かめてみる。


 画面に映ったのは、初めて見る名前だった。



 白河悠斗しらかわはると

 

 誰だ? こいつ。

 知らない男。

 いつの間に、新しい男を携帯に入れたんだよ。速攻、


 着信履歴を消す。

 それから、アドレスも消しておく。


 ぐっすりと眠っている陽菜を恨めしい気持ちで、軽く睨むように見つめた。


 そのくらいで陽菜が起きるわけはないけど。


「ホント、目ぇ、離せねえな」


 速攻、着信履歴を消す。

 それから、アドレスも消しておく。



 ぐっすりと眠っている陽菜を恨めしい気持ちで、軽く睨むように見つめた。

 そのくらいで陽菜が起きるわけはないけど。


「ホント、目ぇ、離せねえな」


 あおむけになって、赤ん坊のように、手をあげて眠っている陽菜を見下ろした。

 

「警戒心なさすぎ。小さい頃から一緒にいるからって、無防備に寝顔をさらしたらダメじゃん。誘っているようにしか見えないもん」


 勝手な理屈をつけて。


 陽菜の指に自分の指を絡めて、顔を近づけて、その柔らかい唇に触れる。


 軽く口づけて、陽菜を見つめたけれど、相変わらず眠ったまま。瞼さえ動かない。起きる気配がない。


「こんな状況でよく眠れるよなぁ」


 自分の所業は棚に上げて、勝手なことを思う。


 整った顔立ちに派手さはないけれど、美人というよりは、かわいいという言葉がぴったりの陽菜。明るくて、優しくて、僕にはとことん甘い性格。


 お互い、一人っ子で姉弟のように育ったから。


 僕はもう一度顔を近づけて口づける。

 さっきよりもしっかりと。

 陽菜の唇の心地よさを何度か味わって、顏を離した。


「ホント、よく眠れる。どんだけ、熟睡してんだろ?」


 呆れるように陽菜を見ながら、ちょっとがっかりしたりもする。

 眠っているたびに陽菜にキスをするけれど、起きたためしがない。

 起きてもらっても困るけど。


 男としての警戒心ゼロ。僕は男のうちに入らない。

 弟だからね。仕方ないけど。そんな風に育っちゃったからね。

 今はそれを有効活用するしかないか。


 弟だから、陽菜の部屋にも入り浸れるし、一緒に眠っていても誰も変には思わない。


 だから、陽菜にキスをしているなんて誰も思わないよね。

 陽菜のファーストキスの相手が僕なんてね。

 誰も知らない。 


 航太も、理玖も、陽菜でさえ。


 これは、僕だけの秘密。

 僕だけの楽しみ。


 時計を見ると、午前三時近く。

 もう一眠りできる。


 ベッドから毛布を一枚はぎとって、陽菜に着せ掛ける。

 電気を消して、僕も同じ毛布にくるまった。


 弟の特権。


 陽菜の体の柔らかさと温もりが気持ちいい。


「おやすみ」


 僕はもう一度キスをして、目を閉じた。



  

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