彼と彼女 ~僕だけの秘密~
「んっ・・・」
ブルリと寒さに震え、僕は目を覚ました。
そして、あたりを見回す。
見慣れた部屋の中。
隣には陽菜。
そばには携帯が転がっている。
そうだった。
新しいゲームアプリを手に入れたから、陽菜に教えたくて来たのだ。
そしたら、陽菜の趣味に合ったらしく、夢中になって遊んでいるうちに、二人とも眠ってしまったらしい。
陽菜はすやすやと眠っている。
一度寝てしまったら、大抵のことでは起きないからね。
陽菜の携帯を手に取って、画面を開く。
何件かの電話の着信履歴とメールの着信履歴。
航太かな? それとも理玖? 名前を一応確かめてみる。
画面に映ったのは、初めて見る名前だった。
白河悠斗
誰だ? こいつ。
知らない男。
いつの間に、新しい男を携帯に入れたんだよ。速攻、
着信履歴を消す。
それから、アドレスも消しておく。
ぐっすりと眠っている陽菜を恨めしい気持ちで、軽く睨むように見つめた。
そのくらいで陽菜が起きるわけはないけど。
「ホント、目ぇ、離せねえな」
速攻、着信履歴を消す。
それから、アドレスも消しておく。
ぐっすりと眠っている陽菜を恨めしい気持ちで、軽く睨むように見つめた。
そのくらいで陽菜が起きるわけはないけど。
「ホント、目ぇ、離せねえな」
あおむけになって、赤ん坊のように、手をあげて眠っている陽菜を見下ろした。
「警戒心なさすぎ。小さい頃から一緒にいるからって、無防備に寝顔をさらしたらダメじゃん。誘っているようにしか見えないもん」
勝手な理屈をつけて。
陽菜の指に自分の指を絡めて、顔を近づけて、その柔らかい唇に触れる。
軽く口づけて、陽菜を見つめたけれど、相変わらず眠ったまま。瞼さえ動かない。起きる気配がない。
「こんな状況でよく眠れるよなぁ」
自分の所業は棚に上げて、勝手なことを思う。
整った顔立ちに派手さはないけれど、美人というよりは、かわいいという言葉がぴったりの陽菜。明るくて、優しくて、僕にはとことん甘い性格。
お互い、一人っ子で姉弟のように育ったから。
僕はもう一度顔を近づけて口づける。
さっきよりもしっかりと。
陽菜の唇の心地よさを何度か味わって、顏を離した。
「ホント、よく眠れる。どんだけ、熟睡してんだろ?」
呆れるように陽菜を見ながら、ちょっとがっかりしたりもする。
眠っているたびに陽菜にキスをするけれど、起きたためしがない。
起きてもらっても困るけど。
男としての警戒心ゼロ。僕は男のうちに入らない。
弟だからね。仕方ないけど。そんな風に育っちゃったからね。
今はそれを有効活用するしかないか。
弟だから、陽菜の部屋にも入り浸れるし、一緒に眠っていても誰も変には思わない。
だから、陽菜にキスをしているなんて誰も思わないよね。
陽菜のファーストキスの相手が僕なんてね。
誰も知らない。
航太も、理玖も、陽菜でさえ。
これは、僕だけの秘密。
僕だけの楽しみ。
時計を見ると、午前三時近く。
もう一眠りできる。
ベッドから毛布を一枚はぎとって、陽菜に着せ掛ける。
電気を消して、僕も同じ毛布にくるまった。
弟の特権。
陽菜の体の柔らかさと温もりが気持ちいい。
「おやすみ」
僕はもう一度キスをして、目を閉じた。




