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9 誤解の真相

フィオナに会わずに1週間過ぎた頃、仕事の帰りに2番目の兄のマクシムが訪ねて来た。

マクシムはこの街で医師をしている。

医師は常に不足しており、忙しく働いているマクシムがこんな風に訪ねて来るのは珍しい。


「やあ、アレックス。元気か。」

「マクシム。」

ミューラー家の子供は全員青い瞳をしている。自分と同じ瞳の兄弟を見ると、いつも心が落ち着いた。


「先週、帰って来なかっただろう。母上が心配してね。様子を見に来たわけさ。」

忘れていた。父の誕生日を家族で祝う日だったのを、フィオナとのゴタゴタですっかり忘れていた。本当はフィオナを婚約者として紹介するはずだったのに。

「ちょっと、いろいろあって、行けなかったんだ。実家にはまた近いうちに顔を見せるよ。」

「元気ならいいんだ。最近かわいい女の子と一緒にいるって、噂だけど。紹介してもらえるのかと思ってたよ。

母上も、お前にも早く落ち着いて孫を見せてほしいって伝えるように言われたんだ。」


アレックスが固まる。


「母上が。どうしてだ。」

「どうしてって。。。別におかしいことじゃないだろう。親は子供が落ち着いて家庭を持つと嬉しいんだよ」

「そんな、だって、俺は、、、、。」


エリオットとの会話が甦る。

『確かなのか?』

母は俺に子供ができてほしいと思っている。

と言うことは。

急に青ざめたアレックスの様子に、ただ事ではないと思ったマクシムが声をかける。

「アレックス、本当に大丈夫か。どこか悪いなら・・」

「マクシム! 検査をしてくれ。」

「お? おお。いいとも。、、、、何の検査?」


*********


検査の結果、アレックスの体は普通以上に健康であることが証明された。もちろん子作りの能力も全く問題なかった。


アレックスの必死な様子や、恋人の紹介がドタキャンされたことなどから、何となく事情を察したマクシムは、検査結果を知らせるのを妻に頼んだ。

マクシム自身が次にいつ休めるかはっきりしなかったからである。

マクシムを心から愛している妻のエリンは、夫の頼みを快く引き受けた。

義弟の働く騎士団事務所まで、早速知らせに走ったのだ。


エリンも検査の内容を知ってはいたが、結果を聞いたアレックスは想像以上に歓喜し、エリンも少し引くほどだった。

感謝を込めて帰りの馬車までエスコートされたが、いつもクールな義弟がここまで感情を露わにするなんて。

「大切な方に、早く会わせてくださいませ。仲良くさせて頂きたいわ。」

エリンの言葉にアレックスはさらに嬉しそうに頷く。

「近いうちに必ず」

「お名前だけでも教えてくださる?」

「フィオナ。フィオナ・トールセン男爵令嬢だ。栗色の髪の天使だよ。」

「素敵なお名前ね。楽しみだわ。」

エリンは輝くばかりの笑顔を見せた。


その様子をフィオナが見ているとは知らずに。

しかも致命的な誤解までされて。



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