天空の支配者
大陸中央より東南、高い塔が立っていた。リルの情報によれば最上階に磁場発生装置があるらしく四人は上を目指して登っていく。
内部はやや緑色をした石の壁で作られ冷たい雰囲気が漂っていた。その雰囲気を味わいながら塔をのぼりながらナダルは四天王について聞く。
「なあリル、お前ベヒモスの事知ってたよな。四天王って他にはどんな奴がいるんだ?」
「む?そうじゃのお、確かあいつらじゃ」
ゾウの体をもつ大食漢、大地の悪魔ベヒモス。シーサーペントを超える巨大な海蛇、大海の支配者リヴァイアサン。意志を持つ猛き焔、豪炎の魔人イフリート。
「そして・・・丁度来たようじゃな」
塔の壁、足場も無いはずの外に、何かがいる。荒々しく翼を振るうそのモンスターは、ナダルに気配を察知させそのまま最上階まで登って行った。
「誘ってるのか?ああ、乗ってやるよ」
風の塔最上階、そいつは居た。獅子の体に鷹の翼を持ったキメラ生物、天空の支配者が冷静にナダル達を見ていた。
「グリフォン、それが奴の名じゃ」
「蘇ってすぐにまた人間が塔にくるなんて・・・やはり僕は運が悪いな」
グリフォンはそう呟くと飛翔を開始する。グリフォンは禍々しい風を纏い、戦闘態勢をとった。飛翔しながらの戦闘は難易度が高く、ナダルが効率よく血が使えるようになったとはいえコストパフォーマンスがかなり悪い。不利な先頭体系ではあるが、やらねばならなかった。
「あの風、恐らく私の銃弾は弾かれますね・・・」
「ラザリエさん、下でユイレの警護を頼みます。グリフォンは俺とリルで討伐します」
「分かりました、ご武運を」
あの禍々しい風はグリフォンに見えない鎧を着せているようなものなのだろう。グリフォンの飛翔で舞った小石がグリフォンに当たる事無く弾かれている所から予測できた。
「剣じゃ不利だが・・・リル、やれるか?」
「あったり前じゃ、余に勝てぬ敵はおらぬわ」
リルは剣に炎を纏わせグリフォンに向かって跳躍し剣を振りかぶった。グリフォンはリルを凝視した後尻尾を薙ぎ払いリルを跳ね返えす。リルはこの尻尾を足場にして再び跳躍しグリフォンの目の前まで迫って行った。
「ほぉ・・・図に乗るな!!風清弊絶!!」
「ぬぅ!!」
グリフォンを中心に爆発が巻き起こり周囲を吹き飛ばす、リルもこれはくぐり抜けられず、ナダルの方まで後退してくる。
「流石に強いのお、まあ小手調べはこんな物でよいか」
「で?どうするんだアイツ」
「簡単じゃ、翼を切断する」
地面に降りた時に翼を切断する算段のようだが、グリフォンは空中から鎌鼬を連射してきた。これでは降りてくる事が無さそうなため、ナダルはどうにかして空中から引きずり下ろせないかを考える。
鎌鼬を踏んでいくのが手っ取り早いが、グリフォンの鎌鼬は真上から飛んできている上速度が速く上がるのは遅くなってしまいそうだ。
「並行なら自分のに乗れたんだがな!」
鎌鼬を防ぎながらグリフォンを見上げる、何発か真上にはじき返すが、余裕で回避されているか相殺されていた。
「うーん・・・皆、なんかいい魔法無いか?」
(無いねえ、せめて接近できればいいんだけど)
シルフ達にも有効な手立てはなく、このままではジリ貧になってしまう。ナダルはそこでリルに目をつけた。
「そうだリル、お前を飛ばす」
「いきなり何を言い出すんじゃお主、気でも狂ったか?」
「違ぇよ、近付けば翼破壊しなくて済むだろ」
リルを抱え作戦を伝える。剣の峰でリルをグリフォンの元まで飛ばし一撃で殺すのだ。風清弊絶の発動から爆発までには少しのタイムラグがあるため、その瞬間に間に合う速度で打ち上げればいい。
「気炎万丈と疾風怒濤を推進力に使う。血は足りるか?」
「血・・・おぉ!足りるぞ!足りる足りる!」
よし、と呟いてリルを下ろし、リルは剣の峰に片足を乗せる。ナダルは空に向かって威風を発動して鎌鼬を相殺させる。
「よし!乗れぇ!」
「ゆくぞぉ!」
ナダルがリルごと空にリルを打ち上げる。リルはグリフォンに向かって一直線に飛んで行くが、途中で推進力を失い落下しかける。
「行くぜリル!疾風怒濤ォ!」
「来い!気炎万丈ォ!」
疾風怒濤の上昇気流と気炎万丈の出力でリルは加速し、一瞬でグリフォンまで近づく。その胴体に潜り込み、リルは魔力を集中させた。
「炉火純青────」
青い炎が上空で飛び散る。グリフォンの体は爆発四散し跡形もなく消え去った。落ちてくるリルを受け止めると、リルは愉快そうに笑った。
「ぐはははは!!お主といると楽しいのお!!」
「そうかよ。まあ、よくやってくれたな。ありがとう」
リルを地面に下ろすと、様子を見に来たラザリエとユイレがやってくる。四人で塔の最上階を見ていると、既に破壊された磁場発生装置がそこにはあった。
「またか、ピラミッドのも既に壊れてたんだよなぁ」
「ふむ、誰かが先に破壊しているのか・・・まあよい、次は海底神殿じゃ。ウンディーネ、さぽおとを頼むぞ」
「相変わらず精霊使いが荒いどすなぁ、まあええや」
風の塔を下り、リルに案内されながら四人はエレイフルへ向かう。ノームと会った坂を歩きながら、遠方に見えるエレイフルの復興具合を考えていた。




