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大地の悪魔

ゾウはその太い腕を暴力的に振るう。ゾウが負っていた怪我も影響してか一撃一撃は遅い、だが破壊力は健在であり、床石に穴が出来上がった。


「お前も中々に早いのう!」


「・・・お前も?やっぱ誰かここに来てたのか」


「金色の剣士と金色の魔女と紫色の魔女と黒い槍使いじゃ!」


ゾウの挙げた人物像はナダルには心当たりしか無かった。金色の剣士はアレス、金色の魔女はリアン、紫色の魔女はリゼリアで間違いないだろう。だが、黒い槍使いだけは検討すらつかなかった。本来はサナがいるはずだが、パーティを抜けたのだろうか。


「まあいいや、もうここに用は無いしまた眠って貰うぞ!」


「ワシに勝てると思っておるのか?実に滑稽!その自信も身体も粉々に粉砕してくれるわ!」


ゾウは再びパンチを繰り出す。このまま躱しているだけではやがて地面が悪くなり、足が縺れてしまうだろう、ナダルにしてみれば早めに決着を付けたい所であった。


「せやあ!」


ゾウの三発目のパンチを躱し、一気に踏み込んで斬りかかる。しかしその太刀筋は見切られ、ゾウに防御されてしまった。


「ふん、その剣裁き、金色の剣士にそっくりじゃ。一度見た技、二度は通じぬぞ」


「あぁ、でもアレスさんも、こんな事はしなかっただろ?」


ナダルは剣に炎を纏わせる。アレスの技、纏火である。


「・・・お前、ワシを舐め腐ってるのか、そんなもの目を瞑っても防げるわ!」


「まだまだこれからだよッ!」


ナダルは走り出した。ゾウと距離を詰め飛んでくる拳を踏みつけて高く跳躍する。ゾウの上に位置を取ると、纏火を纏わせた剣へさらに鎌鼬を纏わせた。


「合成魔法ッ!?お前もあの紫色の魔女と同じかっ!」


「違ぇよ!焔風ェ!」


上から一気にゾウを切り裂く。剣の斬撃と鎌鼬の斬撃がゾウを襲い、傷口を次々と炎が焼いていった。

ゾウは膝をつき、体を振るわせて鎌鼬と纏火を払う。


「・・・やるのぉ、あの紫色と違う、四大精霊との契約者か。ワシも本気を出すとしよう」


ゾウの身体が縮んでいく。ぐんぐんと縮小していき、その体は人の形へと成る。ボサボサの灰色の髪と乾燥した肌、身長は140cm前後の女の子が立っていた。


「ワシの名はベヒモス、貴様ら人間は四天王などと呼んでいるのぉ」


ベヒモスはそう言うといきなりナダルに向かって走り、拳を振るった。突然の攻撃に回避が遅れ咄嗟に防御を取るが、その一撃は強力でナダルは壁に吹き飛ばされた。


「まだまだ行くぞ!はぁぁ!!」


さらに連撃を加えようとベヒモスは走り出す。人間化した事によりその機動力は上がっており、回避は困難なものになっていた。


「おらっ!」


回し蹴りをベヒモスに食らわせ、怯んだ隙にバックジャンプで距離をとる。ナダルのその行動にベヒモスは露骨に不愉快そうな顔をした。


「なぜワシがカウンター狙いだとわかった」


「お前、一度見た技は二度と喰らわないんだろ。俺は違う、何度も同じ技を食らう。でも何度も食らった技は食らわないように対策を作ってる。そのカウンターも、何度も食らった技だ」


黒くて小さい、あの武闘家の技。サナの武術はナダルはほとんど対策済みだった。

そんなサナの技とそっくりな動きをするベヒモスの格闘技は、ナダルにとって脳内マニュアルを読んで対応するだけの簡単な対応策があるのだ。


「お前の技全部、サナにボコボコにされて対策済みだよ、サナに馬乗りで食らったら死ぬようなパンチ寸止めされた事もあるし、腹に飛び膝蹴り食らった事もある」


「可哀想な奴じゃな」


「感謝してるよ。サナのおかげで俺も強くなったし、お前に勝てる」


ナダルは再び剣に火と風を纏い、剣を腰に当て抜刀の構えを取る。見た事のない構えに、ベヒモスは狼狽えた。


「──焔風・疾風迅雷」


その一撃に、音は無かった。ただベヒモスの体は真っ二つに切り裂かれ、傷口は発火した。

人化で耐久力は下がった事による致命傷、ベヒモスの体はゆっくりと死への道筋を辿った。


「・・・ワシが・・・負けるなんて・・・」


ベヒモスはそう言うと地面に倒れ、虚しく拳を振った。空振った腕はその後に何をするでもなく、力を無くして地面に倒れ込む。戦闘終了、ナダルの勝利だ。

部屋を出ようとした時、暗い廊下の奥から声が聞こえた。


「ナダルー!」


「ユイレか!おーい!ここだー!」


「助けてぇぇぇ!!」


廊下から走ってくる三人と大量のモンスター。彼女たちは今サソリ軍団に追われているのだ。


「ははははは!!失敗したのじゃ!」


「笑ってる場合ですかぁぁぁ!!」


三十分後、リルとナダルの二人でサソリ軍団を焼き払いなんとか事なきを得た。リルはベヒモスの死体を見ると、目を丸くしながら近づいた。


「なんじゃ、ベヒモスか。お主が倒したのか?やるのぉ」


「人間の模倣技ばっかりだったからあんま強くなかったな」


「人化術のでめりっとじゃな。まあよいわ、こんな薄暗い場所はやく出るに限る。出るぞ」


三人はピラミッドを後にする。砂漠の海をトバラに向けて歩いていた。次の目的地、トバラ付近の風の塔へ行くためである。


「風の塔に次の磁場発生装置がある。あと三つじゃな」


「もしかして、トバラからまたユンランまで歩くのか?」


「ルート的にはそうなるのぉ、不満か?」


「・・・まあトバラのギルドで報酬貰えるしいっか、エレイフルがどれぐらい再建してるかも興味あるな」


ピラミッドでの冒険を分かち合いながら、四人は風の塔へ進むのだった。

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