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CASE 024: 鳴かぬ鳥の館

記録者


GIA中央第二区支部


エドワード・ロッシュ




基本情報


事件名: 鳴かぬ鳥の館


発生日時: アイオス暦1513年2月1日 午前7時15分


通報者: 館管理人 ユディス・メルカロ


事件場所: ロルベン旧市街 第九区 旧フレイデン館


事件状況: 解決




被害者:


名前:ミレナ・クロード


年齢:26歳


職業:鳥類音声模倣師/幻声師


住所:ロルベン市 第三区 アンブレル通り12番館


死亡時刻:午前6時50分頃


死因:意識混濁後の呼吸抑制による窒息死(吸引性幻覚性植物由来毒素)




事件概要


音声芸術の古都・ロルベンにて、音響実験に用いられていた旧フレイデン館内で、幻声師ミレナ・クロードが死亡した。


発見時、館内は不自然な静寂に包まれており、音響録音装置の記録には“彼女の最期の声”が残されていた。


死因は、鳥類音声模倣訓練に用いられる希少植物「ルエル草」由来の毒素による窒息。


捜査の結果、同業者であり長年の競争相手だった**ファリス・ノエル(31歳)**が犯人として特定された。




現場到着と検証


07:15 館の管理人ユディスより通報


07:42 GIA中央第二区支部調査官エドワード・ロッシュ現地到着


08:05 録音装置より被害者の“幻声ログ”を抽出


08:22 吸入器具とルエル草の濃縮粉末を発見、検査を実施


08:55 死因が幻覚性中毒であると確定、吸入経路の意図的設置を確認


09:30 同館の鍵使用履歴からファリス・ノエルの入館を確認


10:10 ファリス拘束、追及の末に供述を開始




現場検証の結果


館内の空調機器に毒素入り霧状粉末を仕込むための装置が設置されていた




ルエル草は、摂取量と体質によっては呼吸中枢に幻覚性の負荷をかけ、沈黙と安堵を感じさせながら死に至らせる




被害者の吸入器に混入されていた毒素は、ファリスの研究施設から盗まれた調合と一致




被害者は、死の直前まで自身の声で「鳥たちはもう歌わない」と繰り返していた




犯人の特定と供述


ファリス・ノエルは、拘束当初は過失を主張していたが、録音記録と空調装置の構造が証拠となり、自ら語り始めた。




犯人の供述


……彼女の声は、美しかった。


だが、僕にはそれが呪いのように響いた。


僕がいくら機械で再現し、いくら音を操っても――


“生きた声”には敵わなかった。


でもね、あいつは“鳥の声”を使って人を黙らせるようになっていたんだ。


聴いた人が涙を流し、何も言えなくなる。


あれはもう、芸術じゃない。支配だった。


だから僕は、あの館を静かにした。


彼女の声が、二度と誰にも届かないように。


鳥が鳴かないなら、世界は静かで平和だ。


それでいいじゃないか。




裁判結果


アイオス暦1513年9月28日、GIA中央管轄裁判所にて以下の主文が下された。




主文


被告人ファリス・ノエルを、殺人および幻覚性物質の不正使用・隠匿の罪により有罪とする。


芸術的表現の場を悪用し、他者の表現を封殺した点を重く見て、懲役28年の刑を言い渡す。




所感


“声”は力であり、時に暴力にもなりうる。


幻声師という存在が証明したのは、音が魂を揺さぶるほどの力を持つことだった。


だがその力を恐れた者が、静寂を選んだ時――そこに残るのは、ただの空虚だ。


記録者として、私はその静寂に、確かに“声”が存在していたことを記す。




アイオス暦1513年10月1日 GIA本部にて事件記録受理。

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