CASE 020: 監視されなかった部屋
GIA内部で起きた、静かなる殺人をお届けします。
記録者
GIAサイロス支部
ネイサン・クロフォード
基本情報
事件名: 監視されなかった部屋
発生日時: アイオス暦1515年4月9日 午前9時20分
通報者: GIAサイロス支部 職員ユルゲン・トール
事件場所: GIAサイロス支部 本館地下記録室 第17アーカイブ
事件状況: 解決
被害者:
名前:ミレイ・ストーン
年齢:37歳
職業:GIA記録局査問官
住所:サイロス市内公式宿舎 C区23棟3階
死亡時刻:午前8時50分頃
死因:薬物中毒(即効性神経遮断剤)
事件概要
GIAサイロス支部に勤務していた査問官ミレイ・ストーンが、記録室内で死亡しているのが発見された。
室内は立入許可制の密閉空間であり、監視カメラが技術的理由により一時的に停止していた。
被害者の持っていた端末には、ある特定ファイルの閲覧ログが残されており、それが死の直前にアクセスされたことが明らかとなる。
当該ファイルの内容は、GIA内で非公開とされていた過去事件の詳細であり、アクセス権を持たない者が閲覧することは本来不可能だった。
最終的に、別部署の技術職員であった**モーリス・カイン(41歳)**が関与を認めた。
現場到着と検証
09:20 通報により記録室に駆け付けた警備担当が遺体を確認
09:35 ネイサン調査官が現場入り、記録端末と室内の環境ログを解析
09:47 遺体の周辺から粉末状の薬物痕を採取、即時検査を指示
10:15 血中から“ジステリオンC-8”検出(GIA内でも流通制限されている神経遮断剤)
10:32 閲覧履歴により、非公開記録『アルトシアン事件(未編纂)』へのアクセスが判明
11:00 出入り履歴から、技術部モーリス・カインが事件直前に同室にいたことを確認
11:40 カインの執務室から、同型薬剤および偽装カードキーを押収
現場検証の結果
・死因は内服型毒物による中枢神経遮断(自力摂取の痕跡なし)
・カインは現場端末の認証を外部から遠隔操作で解除していた
・記録ファイルには過去のGIA処分記録が含まれており、カインに関する懲戒情報も存在
・犯行動機は、自身の過去の記録の削除と、それを閲覧したミレイの“封じ”であったと推定
犯人の特定と供述
拘束後、モーリス・カインは最初こそ黙秘を貫いていたが、証拠開示後に以下の供述を行った。
犯人の供述
……ミレイは、知ってしまったんだ。
俺が何をして、どうして今ここにいるのか。
過去の記録は、消されると思ってた。いや、もう消したと思ってた。
でも、あの記録は残っていた。別ルートに。
彼女は正しかった。
彼女の仕事は、GIAの記録を守ることだった。
俺は、それを破壊した。
だけど……
もしあの記録が、正式に表に出ていたら、俺はもうとっくにこの席にいなかった。
あれは事故だった。あれも、今回も。
事故という言葉を信じてくれとは言わない。
だが、俺は生き延びたかった。それだけなんだ。
裁判結果
アイオス暦1515年11月28日、GIAサイロス管轄裁判所にて以下の主文が下された。
主文
被告人モーリス・カインを、記録改竄・情報工作・殺人の罪により有罪とする。
その立場を悪用し、組織内部の公正性を損なった点を重く見て、
終身禁固刑を言い渡す。
所感
記録を守る者が命を落とし、記録を消そうとした者が名乗りを上げる。
この組織にとって“記録”とは、命と等価である。
GIAの内部でさえ、完全な正義は保証されていない。
それでも――私たちは書き続ける。
アイオス暦1515年12月2日 GIA本部にて事件記録受理。




