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CASE 010: 偽神の火を灯した者

記録者


GIAアルザレア支部


ミレイユ・カルディナ




基本情報


事件名: 偽神の火を灯した者


発生日時: アイオス暦1508年9月2日 午後9時45分頃


通報者: 博物院警備主任 ハンリ・ヴァルシュ


事件場所: アルザレア自由都市・旧神聖博物院・展示第七室


事件状況: 解決


被害者:


名前: ドクター・ゼノ・ハイルス


年齢: 61歳


職業: 考古研究者・元聖典改訳委員


住所: アルザレア自由都市・霊火区イグリス通り12-9


死亡時刻: 午後9時30分ごろ(推定)


死因: 焼死(局所的発火装置による全身火傷)




事件概要


旧神聖博物院で開催されていた特別展「神々の遺産と偽典展」の最終夜。


閉館後、目玉展示である“太古の聖火像”の前で、著名な考古学者ゼノ・ハイルスの焼死体が発見された。


彼の身体は像の前で跪くように倒れており、まるで“火の神に祈りを捧げた末に焼かれた”ような状況だった。


だが捜査により、事故ではなく細工された機構によって発火が引き起こされた計画的な殺人であることが判明した。




現場到着と検証


22:05 警備主任より通報。現場へGIAアルザレア支部が急行。


22:21 被害者は展示室中央に設置された“聖火像”の台座前で死亡。像内部から発火装置の残骸を確認。


22:35 焼損痕から、被害者の足元に“導火用の金粉”が撒かれていた形跡。


22:50 展示物管理記録に不審な改変があり、事件前日から展示室に“追加パーツ”が搬入されていた。


23:10 搬入指示を出した名義が、文化局展示課のルヴァン・クレイスであると判明。




現場検証の結果


・聖火像内部に改造が施されており、特定の姿勢で台座に触れると発火装置が作動する構造。


・装置は特殊な着火金属「テルマニウム」と薬草灰を反応させて点火する仕組み。


・金粉は導火材であり、被害者が“指定された位置に跪いた”ことで発火経路が完成した。


・展示物の搬入記録は偽装されており、署名が偽造されていた。


・過去に宗教芸術に関する異端批判を受けた劇作家ルヴァン・クレイスの関与が疑われた。




犯人の特定と供述


犯人は、かつての劇作家にして現在は無許可宗教集団“真なる火の徒”の思想指導者であるルヴァン・クレイス(46歳)。


彼は旧神に関する展示を“神への冒涜”と見なし、かつての聖典改訳作業を率いたゼノ・ハイルスに強い憎悪を抱いていた。


展示最終日に、ゼノ宛に「特別な構図の検証協力」として匿名の依頼を出し、“像の前に跪く”という姿勢をとらせるよう誘導。


犯行は宗教的な儀式と見せかけた処刑演出だった。




犯人の供述


“聖火”は、人を照らすものではない。


偽りの知識を焼き尽くすためにある。


彼は火を冒涜し、神を研究の対象に堕とした。


かつて私は、彼の翻訳した聖典を信じて舞台を書いた。でも、その台詞は空虚だった。


私の信仰も、演劇も、あの人が壊した。




だから、彼を火に返した。


偽りの神を跪かせ、真なる火に口づけさせるように。


この火は、ただの物理現象ではない。これは――


“裁き”だ。




裁判結果


アイオス暦1509年4月10日、アルザレア大審問会にて以下の主文が下された。




主文


被告人ルヴァン・クレイスを、宗教扇動による殺人および公共機関への侵入・偽装の罪により有罪とし、死刑に処す。思想の自由を逸脱した宗教的殺意を重く処罰する。




所感


この記録において、火は二重の意味を持っていた。


知を照らす象徴としての火と、裁きを意味する火。


彼の中でそれが“同じもの”として燃え上がったとき、劇場は展示室へと姿を変えた。


人が神に跪くとき、それが信仰か、処刑かを見分ける術は、記録の中にしか残されない。




アイオス暦1509年4月20日 GIA本部にて事件記録受理。

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