第一話 突然の出来事
どうも読者のみなさん、私こそがドイツ第三帝国の総統アドルフ・ヒトラーである。今、「げっ」って思った人は、今日あなたの家にゲシュタポが来ると思うけど、びっくりしないでね。
それはさておき、学校の歴史の授業で、第二次世界大戦は枢軸国が勝利したと習ったはずだ。偉大なるアーリア人なら知っていると思うので説明は省くよ。いずれにせよ、ドイツはロンドンからモスクワまでのヨーロッパのほぼ全てを手に入れているよ(イタリア、スペイン、ポルトガル、トルコは残っているがそれ以外のヨーロッパの国は大体ドイツ本土か直轄地または国家弁務官区だよ。ヨーロッパのややこしい地図が覚えやすくなっていて素晴らしいね)。
こんな感じで1950年現在、世界はドイツと日本に太平洋戦争で勝利したアメリカが冷戦を繰り広げているよ。
ちなみにドイツの軍事力は世界一で、すでに現代戦車(MBT)やロケット、ジェット機が実用化されているよ。
それにしても、明日は楽しみだなぁ。明日はモスコーヴィエン国家弁務官区でドイツ初の原爆実験を行うんだ。アメリカは既に核実験をしているけど、これでアメリカの核の独占がやっと終わるね。
〜翌日、モスコーヴィエン空港〜
空港に着いたらばったり親衛隊のハイドリヒ長官に会った。
「久々だね、ハイドリヒ君。」
「これはこれは、総統閣下。お元気そうで何よりです。」
「いや、それが持病のパーキンソン病が次第に悪化しておってね。5年後までには、後継者すなわち二代目総統を決め、私は引退しようと思っている。」
「そうだったのですか。話は変わるのですが、親衛隊によるライヒの浄化作戦の許可をいただいてもよろしいでしょうか。」
「ライヒの浄化作戦とは?」
「私は二十年弱親衛隊に務め、第三帝国を千年帝国へ昇華すべく反乱分子を駆逐して参りましたが、それでもなおライヒの状況は良いものとは言えません。親衛隊の手で第三帝国に蔓延っている国際ユダヤの陰謀を取り除かねばならないのです。」
「うーむ。ハイドリヒ君、君の気持ちは分かった。じっくり考えておくよ。」
「ありがとうございます、総統閣下。」
「それじゃあ私は先に向かってるよ。」
「分かりました、ハイル・ヒトラー!」
「腐りきった老いぼれ頼みの今のライヒに先はない。例えどのような手段を持ってしても速やかに行動せねばならないのだ」
ハイドリヒの独り言がヒトラーに届くことは無かった。
〜核実験場〜
「ナチス高官の皆様方には核爆発から50km地点のところから爆発を観察していただけます。」
爆発までのカウントダウンが始まった。何だかワクワクしてきた。
「爆発まで10秒前!」
「5」
「4」
「3」
「2」
「1」
「爆発」
「おぉ〜」と多くのものから歓声が上がる。
「これは凄い兵器ですね」とハイドリヒ長官。
「これを量産して大陸間弾道ミサイルに乗せることができれば、国際ユダヤがうじゃうじゃ潜んでいるアメリカにも勝利することができるでしょう」
「あはは、そうだね・・・」
〜再びモスコーヴィエン空港〜
それじゃあ、ゲルマニアに戻りますか。
「総統閣下、しゃがんでください!」
「え?」
パーンという銃声が響いた途端、私は倒れていた。
ボディーガードが駆け寄ってくるのがうっすらと見えたが、私の意識はそこで途絶えたのであった。
〜3日後、モスクワ病院〜
「それでブラント、総統の容態はどうなっているのだ?」
「落ち着いて下さい、ゲーリング閣下にシュペーア閣下も」
「すまん、つい焦ってしまってな」
「総統は36時間にも及ぶ大手術の結果、何とか一命を取り留めました。しかし、銃弾が脳に直撃したため脳の摘出手術を行い、なるべく摘出箇所を最小限には抑えましたが・・・
「どうした?」
「大変言いにくいのですが・・・」
「もぞもぞするな、さっさと言わんか」
「現在のヒトラー総統の知能は5歳児レベルです。」
「へ?」