43話 ずっとずっと一緒にいような
「シトエン、次はどれ食べる?」
「うう……。迷うところです……! あのチョコケーキか……。チーズケーキも捨てがたいですよね⁉」
「う、うん」
シトエンの菓子への熱量。半端ない……。気圧される勢いだ。
「じゃあ、とりあえずふたつとも、テーブルへ……」
立ち上がり、ふたつの皿を両手に持った時、ひゅーっと風切り音が鳴った。
なんだなんだと窓を見ると、どぉおおおん、と夜空に花火が上がった。
「打ち上げ花火?」
「あ! そういえば王妃さまがサプライズを企画しているって……!」
目を丸くするシトエン。
……あー……。そういえばなんか言ってたな。シトエンが王城に閉じ込められているから楽しませる企画がどうとかこうとか……。
あ!!!!
それにあれじゃないか⁉ ラウルが言ってたよな! 母上が火薬を開発しているって!
それ、花火じゃ……!
なんかいろいろ、セーフ!!! 俺の団的にセーフ!!! よかったあああああ!!!!
火薬の平和利用だった!!!
「バルコニーで見ませんか?」
シトエンが待ちきれないとばかりに立ち上がる。
「そうだな」
俺はテーブルに皿を置き、またシトエンを横抱きにして室内を歩く。途中シトエンが花をふたつ手に取った。気に入ったのかな、と思っていたら、ひとつは自分の髪に、もうひとつは俺のシャツに差す。
「お揃いです♡」
そう言って笑うから、腰砕けになるかと思った……!
いかん、しっかりしろ、俺!! シトエンを落としてはいかん!!!!
歯を食いしばってガラスの扉を肩で押し開け、バルコニーに出る。
ちょうどまた、二発目が打ちあがったところのようだ。
黄色や青色、赤色の光が満天の空に広がり、まるで筆の先に絵の具を吸わせて散らせたようだ。
「きれい……」
シトエンが、光っては消えていく花火を見上げてつぶやく。その頬にも残光が潤んでいた。
「きれいだな」
俺はシトエンを見て言う。シトエンは花火のことだと思っているのか、また打ちあがった花火を指さして無邪気に笑っている。
「シトエン」
「なんですか?」
花火の色を銀色の髪に乗せ、シトエンが不思議そうに俺を見上げる。
「ずっとずっと、一緒にいような」
そう告げると、シトエンは大きく笑ってうなずいてくれた。
「もちろんです! ずっとずっと、一緒ですよ」
これから先、いろんなことがあるだろう。
こんなにきれいな……花火のような景色ばかりが広がっているわけじゃない。
だけど、ふたりならどこまでも行ける気がする。
ふたりなら、幸せだ。
この気持ちはずっと変わらない。
この先何十年もたって、ふたりとも年老いて。
それから俺の命が尽きても。生まれ変わっても。
俺の嫁は、ずっとずっと可愛い。
4章 了




