遭難29日目
船が過ぎ去ってしまった翌日。
「ミーアさん。生活もかなり安定してきたし、この島を探索してみない?」
トーマは島の探索について切り出した。
「探索・・・ですか?」
「うん。船を待つだけっていうのもなんだし、なんか建築に便利なものや食料がないかも探してみたいんだよね」
トーマ達が無人島に漂着してから今までの間に行動した範囲はこの島の1割にも満たない。
「そうですね。気もかなり扱えるようになってきたので移動できる距離も長くなっていると思います」
「うんうん。もし魔物や獣に襲われてもこれだけ気を扱えるなら逃げるくらいはできると思うからさ」
「探索のプランはどうしましょうか?」
「そうだなあ、まずは海岸線をぐるっと回ってみるのはどう?」
「良いですね。どのくらいかかるのでしょう・・・」
「ぅうん、前に山の上からみた感じだとかなり早いペースで2、3日くらいかかるかも知れないね」
それから二人はさらに計画を練り、次の日の朝に出発することを決めた。
持ち物は木で作った水筒と魚の干物だ。野草や木の実等現地調達が可能なものは現地で採取。
今の装備では水を大量に持ち歩くことは難しいため水場が途中にない場合は行けるところまで進んで、1泊して帰ってくる。
水場を途中で見つけた場合はそこで水を補給してさらに進むという計画だ。
「この島では食料の調達には困らないけど水の調達は場所が限られているからそこが探索で一番の問題だね。島に漂着してからすぐに沢を見つけることができた俺たちは今考えると本当に幸運だった」
「当たり前ですが水がないと人は生きていけませんもんね。この島で生活して初めて水の大切さを知ったような気がします」
「俺も同じ気持ちだよ。今日は食料調達が終わったら探索の準備に専念しようか」
「わかりました」
翌日二人は計画通り朝から探索を開始した。
「結構岩場や崖みたいになっていて砂浜じゃないところも多いですね」
「そうだねえ。そう言ったところは海が急に深くなっていたりするから大きい魚がいたりするかも知れないね。釣りができたらやってみたいなあ」
「港町でやった釣りは楽しかったのでまたやりたいです」
「昔は動物の骨を釣り針にして釣りをしていたらしいから、やろうと思えばできないこともないかもね」
「動物の骨ですか!?昔の人も色々考えていたんですねえ・・・」
他愛もない会話をしながら途中で昼食の休憩をしたりしてさらに探索を続ける二人。
「気を足に集中させているので全然疲れないです」
「そうだね。気の訓練をしておいて正解だったよ」
トーマも最初はミーアに気の扱いで置いてけぼりを食らっていたが、今となってはそれなりに扱えるようになっていた。
そうして夕方まで探索した二人は水場を見つけることもできなかったためそこで辿り着いたところに印をつけ、夜を明かしてから次の日に拠点に戻ることにした。
「うーん。水場がないと移動を制限されてしまって難しいね。もっと進むとなると倍の量の水を持ってこないといけないし」
「そうですねえ。水場があればよかったのですが・・・」
「結構大きい島だから沢みたいなものがあってもおかしくはないと思うんだけどね。次回の探索は拠点から今進んできた方向と反対方向に探索をしてみよう。水場があれば万々歳だね」
「反対方向に水場があればもしかすると島を1週できるかも知れませんね」
「あると良いねえ。今日は拠点もないし初めての場所だから交代交代で寝ようか」
「わかりました。あの・・・提案があるのですが」
少し恥ずかしがりながら提案をするミーア。
「ん?提案?」
「はい。そ、その、寝ている時に地面に頭を付けないように、お互い膝枕をして寝ませんか?」
「ひ、膝枕!?えっと、ぜっ全然良いけど!」
トーマは動揺しながらも断る理由がないため賛成する。
「本当ですか!?絶対そっちの方が安心して眠れると思っていたんです!どちらから先に寝ましょう?」
「も、もちろんミーアさんが先に寝て!俺はまだ眠れそうにないから!」
「わかりました。では失礼しても?」
「は、はい不束者ですがどうぞ」
トーマが意味不明なこと言って太ももを差し出す。
「では失礼します」
そうしてミーアはトーマの太ももに足を乗せて目を瞑る。
女性に膝枕をするなんてとんでもない経験はもちろん初体験のトーマ。
緊張のあまり時間感覚が麻痺してしまい気づいたらミーアは自分の足の上で静かに寝息を立てていた。1日中歩きっぱなしだったため疲れていたのだろう。
・・・ミーアさんの寝顔かわいいなあ。本当に安心したように寝てるや。
トーマは悟られないようにミーアを見つめる。
しばらく見つめた後に勇気を出して頭を撫でてみることにした。場合によっては怒られるかもれないが・・・。
そっとミーアの頭を撫でる。
「んんぅ」
くすぐったそうに身じろぎするミーア。
トーマは驚いてさっと手を頭から離す。心臓が爆音で鳴り響いている。この鼓動が足からミーアに伝わってしまうのではないだろうかと思い冷や汗を流してトーマは気を沈めるために瞑想を始めた。
焚き火が時折出すパチパチという音を聞きながらトーマはミーアが目覚めるのを待った。
それから数時間が経ちトーマもかなり眠たくなってきてうとうとし始めた時にミーアは目を覚まして体を起こしてグッと伸びをする。
「あぁ。安心して眠れました。ありがとうございます」
寝癖を少しぴょんと立てながら微笑むミーア。
「ん・・・あぁ。それはよかったよ。ふあっ」
「では交代しましょう。どうぞっ」
太ももを差し出すミーア。
「ありがとう。おやすみミーアさん」
「おやすみなさい。トーマさん」
トーマは眠さの限界が来ており初体験の膝枕に興奮する間も無く眠りについた。




