第70章:帝都、クーデターが起こる(前編)
第70章:帝都、クーデターが起こる(前編)
ルーセン交通の「第一号試作型メガEVバス」が中央大通りを颯爽と走り抜け、市民や学生たちの度肝を抜いたあの日から、わずか二週間の月日が流れていた。
大学地下の量産ラインでは、カロンの設計図のもと、ガロニアから移住してきたドワーフ鍛冶親方衆と工科大学の学生たちが一体となり、二号車と三号車のフレーム溶接や「雷氷複合魔石バッテリー」の組み込みが急ピッチで進められていた。
春の穏やかな陽射しが降り注ぐ、ルーセン大公邸の最上階執務室。
カロンがハインリヒ大公と向かい合い、市内のバス停設置計画と運賃設定についての打ち合わせを終えようとしていた、その時であった。
ドタドタドタッ!
絨毯を踏み荒らす激しい足音とともに、執事長のセバスチャンが青ざめた顔で執務室の扉を押し開けた。
その手には、泥と汗にまみれた帝都からの緊急飛脚便――真紅の封蝋に「至急・国家存亡」の刻印が押された羊皮紙が握りしめられていた。
「だ、大公閣下! 帝都グランツより、王宮近衛府の極秘早馬が飛び込んでまいりました! 乗り継ぎの馬を三頭潰し、使者は門前で吐血して倒れる寸前でございます!」
「何事だ、セバスチャン!?」
ハインリヒ大公が椅子を蹴立てて立ち上がる。
震える手で受け取った書状の封を裂き、目を通した瞬間――大公の顔から、さっと血の気が引いた。
「……な、何ということだ……! 帝都で……大規模な軍事クーデターが勃発した……!!」
「クーデターですと!?」
カロンの眉が跳ね上がった。先日の公式行幸でルーセンを訪れ、ロイヤルEVを喜んで駆って帰還した国王セルセデス3世の穏やかな顔が脳裏をよぎる。
ハインリヒ大公は机に両手をつき、脂汗を滴らせながら内容を読み上げた。
「反乱の首謀者は……帝都の『メリス教総本部』、そして『ゲスハルト帝国大学』の連合体だ! 先月消息を絶った大司教バルデスとマンハイム総長(※地下で石像中)の失踪を『王室による不当な暗殺』と決めつけ、王宮を包囲! 帝都警備兵の半数と、中央の保守派貴族の私兵団を抱き込み、国王派の官邸や近衛兵の詰所を奇襲・占拠したというのだ!」
「総本部と帝国大学が……」
カロンは唇を噛んだ。行方不明になった二人の重鎮の件を、中央の権力亡者たちが王権打倒の格好の口実として利用し、暴発したのだ。
しかし――。
この執務室に、もう一人「絶対に聞かせてはならない人物」が同席していたことが、事態を予測不能の超展開へと叩き落とすこととなった。
部屋の隅の高級ソファで、ルーセン特製アップルパイを優雅に頬張っていた金髪の美女――駄女神メリスである。
「……は? ちょっと、今なんて言ったの、ハインリヒ?」
パイを飲み込んだメリスが、フォークを皿に置いた。
その声は、いつもの気の抜けたトーンとは全く異なり、背筋が凍りつくほど低く、地を這うような冷気を孕んでいた。
ハインリヒ大公がビクッと肩を震わせる。
「め、メリス様……ですから、帝都のメリス教総本部が、帝国大学と組んで国王陛下に対し反乱を――」
「ふざけんじゃねえわよおおおおおおおおっっ!!!!」
ドッゴォォォォォォンッッ!!!
大公邸の頑丈な石造りの執務室が、直下型地震のような激しい衝撃で激震した。
メリスの全身から、目も眩むような純白と黄金の神聖闘気が爆発的に吹き荒れ、窓ガラスにピキピキと無数の亀裂が走る。
カロンとハインリヒ大公、セバスチャンの三人は、暴風のような神のプレッシャーに押され、壁際まで吹き飛ばされそうになった。
「な、何なのよそれ! 私の名前を騙ってる教会が、何でクーデターなんて起こしてるのよッ!? だいたいねえ、王宮の晩餐会! 王様が『帝都が復興したら、王宮で一番豪華な宴会を開いて、特大のケーキをご馳走する』って私と約束したじゃないの!! その王宮を襲撃するってことは……私の極上ケーキとフルコースの晩餐を邪魔するってことじゃないのよッッ!!」
(……そっちか!!)
カロンは壁にへばりつきながら、心の中で激しくツッコミを入れた。
教会が反乱を起こした宗教的背信への怒りではなく、王族から約束された豪華な食事がフイになることへの怒り。動機の九割が底なしの食欲であった。
しかし、激怒した神の行動力は、いかなる軍隊よりも迅速であった。
メリスは仁王立ちになり、カロンとハインリヒ大公をビシッと指差した。
「ハインリヒ! カロン! ボーッとしてんじゃないわよ! 今すぐ帝都へ乗り込んで、あの不届きな反乱分子どもを全員叩きのめしに行くわよ!!」
「えええええっ!? 今からですか!?」
ハインリヒ大公が裏返った悲鳴を上げる。
「当たり前でしょ! カロン、あの大きい鉄の箱車――バスを用意しなさい! あれなら大勢乗れるんでしょ!? 戦える奴らを片っ端から詰め込んで、帝都へ突撃よ!!」
「カ、カロン殿……!」
助けを求めるように視線を送ってくる大公に対し、カロンは覚悟を決めて頷いた。
「……大公閣下。セルセデス3世陛下には大恩があります。それに、中央の反乱軍が実権を握れば、このルーセンも『反逆の温床』として標的にされるのは時間の問題です。……迎え撃つのではなく、機先を制して叩くべきです」
「う、うむ……! 相分かった! ルーセン大公の全権をもって、直ちに緊急遠征軍を編成する!」
こうして、駄女神の怒りの号令のもと、前代未聞の「高速バス電撃出兵」の火蓋が切って落とされたのである。
出動命令からわずか一時間後。
ルーセン工科大学のガレージ前には、極限の緊張感と熱気を帯びた錚々たる面々が集結していた。
青と白のツートンカラーに輝く、全長十一メートルの「第一号試作型メガEVバス」。
その車内へ、次々と規格外の乗客たちが乗り込んでいく。
運転席:整備用ツナギに身を包み、ハンドルを握る学長カロン。
助手席:道案内と軍団指揮を執るハインリヒ大公。
最前列:腕組みをして殺気を放つ駄女神メリス。
二列目:愛弓を抱えたリアリスと、不安げに尖った耳を揺らす風の神シルフ。
中央座席:巨大なミスリル戦槌を抱えたバログ大親方、父ガイル、そして選りすぐりの屈強なドワーフ親方衆二十名。
後方座席:スコップを担いだ大地の神トーラ、大剣を膝に置いた冒険者ギルドマスターのギルバート、そして東門警備隊長のガース率いる領地精鋭兵二十名。
最後尾:救護物資と兵糧を管理するゲオル商会のマリアベル。
総勢五十名以上。神が三柱、高位冒険者、ドワーフの重鎮、正規兵――まさにルーセンの全戦力を一網打尽に詰め込んだ、動く要塞であった。
「全員、シートベルトを締めろ! 舌を噛むなよ!」
カロンがメインスイッチを叩き込む。
床下に敷き詰められた「雷氷複合魔石バッテリー」から、超高圧の直流電流が四輪のインホイールモーターへと一気に流れ込んだ。
キィィィィィン……ッ!
けたたましいモーターの唸りとともに、十トンの巨体が矢のように飛び出した。
東門の跳ね橋を轟音を立てて駆け抜け、舗装された東部幹線街道へと躍り出る。
「シルフちゃん、頼んだわよ!」
メリスが叫ぶと、シルフが小さな両手を窓の外へかざした。
「は、はいっ……! 追い風さん……バスを、かるーく押してください……!」
ヒュオオオオオォォォッ!!
シルフの神聖な風の加護がバスの車体を包み込み、空気抵抗をゼロどころか背後からの猛烈なジェット気流へと変換した。
ガンドルゴルの超剛性タイヤがアスファルト同然の街道を噛み、バスの速度計は時速六十キロ、八十キロ、そして時速百キロメートルへと跳ね上がった。
通常、馬車であれば不眠不休で飛ばしても一週間、早馬の特急便ですら三日を要する、ルーセンから帝都グランツまでの五百キロメートルの道のり。
大型メガEVバスは、途中の宿場町にも目もくれず、街道の夜闇をヘッドライトの光条で切り裂きながら、猛烈なスピードで爆走し続けた。
床下のバッテリーは、カロンが道中に設置していた実験用充電ポストによる急速交換と、カロン自身の『サンダーボルト』による走行中の車内直接給電によって、一度たりとも足を止めることはなかった。
そして――。
出発からわずか6時間。
東の地平線が白み始める夜明け前、霧の向こう側に、帝都グランツを取り囲む巨大な外郭城壁が姿を現したのである。
「……見えたぞ。帝都グランツの西門だ」
助手席のハインリヒ大公が双眼鏡を下ろし、唇を噛んだ。
その光景は、帝国の首都とは思えないほどの凄惨な混乱を極めていた。
普段であれば近衛兵が厳重に警備しているはずの巨大な石造りの城門は、閂が叩き折られて半開きになり、煙が立ち上っていた。
門からは、財産を風呂敷に包んだ貴族や着の身着のままの市民たちの大群が、我先にと押し合いへし合いしながら市外へと逃げ出していた。
警備兵の姿はない。城壁の上からは、時折金属のぶつかり合う甲高い音と、怒号が響いてくる。
「完全に内乱状態ですね……」
カロンはクラクションを鳴らした。
ファァァァァンッ!!
夜明けの空を切り裂く、聞いたこともない重厚な電子ホーンの音。
逃げ惑う群衆が一斉に振り返り、線路もないのに地響きを立てて疾走してくる青と白の巨大な鉄の怪物を見て、悲鳴を上げて左右へと割れた。
「ひ、ひぃぃっ!? なんだあの巨大な荷馬車は!?」
「魔獣か!? 鉄のゴーレムか!?」
カロンは巧みなハンドル捌きで群衆の隙間をすり抜け、開け放たれた西門を突破して帝都の内部へと突入した。
市街地に入ると、惨状はさらに色濃くなっていた。
帝都の中央通りには、破壊された荷馬車がバリケードのように積み上げられ、石畳には血痕が点々と残されている。
あちこちの路地で、白銀の甲冑を着た王宮近衛兵と、黒い鎧を着た帝都警備兵、そして白い法衣をまとった教会の僧兵集団が入り乱れ、槍と魔法を突き合わせる小競り合いを繰り広げていた。
しかし――。
ズズズズズ……ッ!
十トンの重量を誇る鋼鉄のバスが、一切の馬を繋がずに唸りを上げて直進してくると、戦っていた兵士たちも僧兵たちも、一瞬にして戦闘を止め、呆然と口を開けて後ずさった。
誰も、この正体不明の巨大兵器のような鉄の巨躯に近寄ろうとはしなかったのである。
「カロン殿、右へ曲がれ! 冒険者ギルドの帝都本部が見えてくるはずだ!」
ハインリヒ大公の指示に従い、バスは大きな広場へと滑り込み、重厚な石造りのギルド本部の前に停車した。
プシューーーッ!
エアブレーキの排気音とともにバスの扉が開き、ギルバートが単身、ギルドの建物へと飛び込んでいった。
数分後、額に青筋を立てたギルバートが、荒々しい足取りで車内へと戻ってきた。
「ギルバート、中の様子はどうだった!?」
ハインリヒ大公が身を乗り出す。
ギルバートは荒い息を吐き、車内の全員を見渡して吐き捨てた。
「……最悪だ。帝都ギルドの参事から裏を取ってきたぜ。反乱を起こしたのは、大公閣下の言った通り『メリス教総本部』と『帝国大学』、それに結託した中央警備府と保守派貴族どもだ。奴らは『大司教と総長を謀殺した暴君セルセデスを廃位する』と称して王宮を完全包囲し、王宮前広場で近衛兵と激しい攻防戦を繰り広げてやがる」
「国王一家は無事なのか!?」
カロンが問う。
「ああ、王宮の防壁は頑丈だからな。ハミル王子がロイヤルEVを盾にして奮戦し、なんとか持ちこたえてるらしい。……だが、問題はそこじゃねえ」
ギルバートは視線を、最前列で不機嫌そうに腕を組むメリスへと向けた。
「……メリス様。耳をかっぽじって聞いてくだせえ。総本部を動かしている連中……奴ら、メリス教の僧兵を名乗っちゃいるが、中身は別物だ。大司教バルデスが消えた後、総本部の実権を裏から完全に牛耳ったのは――隣国の邪教徒、『アストル教』の潜入幹部どもだ!」
「「な……何ですと!?」」
カロンとハインリヒ大公が声を揃えて叫んだ。
アストル教。それは、大陸西方において「絶対の神権による人民の完全統制」を掲げ、メリス教を「生ぬるい偽りの神」として激しく敵視している、過激派の狂信的宗教国家の国教であった。
「アストル教の暗殺部隊と呪術師どもが、バルデスを失って混乱していた総本部の枢機卿たちを脅迫・洗脳し、傀儡に仕立て上げたんだ。奴らの狙いは、帝国大学の知識層と組んでゲスハルト帝国を内部から崩壊させ、この大国をアストル教の属国へと変えることだ!」
ギルバートの言葉が終わるか終わらないかのうちに――。
バチィィッ!!
車内の魔導蛍光灯が一斉にショートして火花を散らした。
メリスの瞳から、黄金の光を通り越して、暗黒のプラズマのような凄まじい怒りの雷光が迸っていた。
「……へえ。私の教会を乗っ取った上に……私の信者を操って、私の晩餐会をぶち壊そうとしたのが……あのアストルのクソ野郎どもの差し金なわけね……?」
静かな、しかしこの世の全ての生物を塵へと変えんばかりの神の憤怒。
シルフが怯えてリアリスの後ろへ隠れ、トーラ神すらも「うむ……メリスがあれほどキレたのは数千年ぶりだな」と腕を組んで感心している。
メリスはカロンの襟首を掴み、狂気配の笑みを浮かべた。
「カロン。進路変更よ。王宮の前に……まずは総本部のメリス大聖堂へ行きなさい。私の家で勝手に泥棒ごっこをしてるネズミどもを、一匹残らず叩き潰してやるわ!!」
「り、了解しました! 大公閣下、大聖堂への道を!」
「まっすぐ進んで大噴水広場を左だ! 行け、カロン殿!!」
アクセルが床まで踏み込まれた。
メガEVバスは猛烈なタイヤスモークを巻き上げ、石畳を砕かんばかりの勢いでメリス大聖堂へと急行した。
十分後。
帝都の中心部にそびえ立つ、巨大な白亜の巨塔――メリス教総本部、メリス大聖堂の前の大広場へとバスが滑り込んだ。
広場は、まさに地獄絵図の様相を呈していた。
大聖堂を拠点とする数百名の武装僧兵やアストル教の黒装束の暗殺者集団が、大聖堂の奪還を試みて突入してきた国王派の正規兵や、正統派のメリス教修道士たちを取り囲み、今まさに皆殺しにしようと刃を振り上げていたのである。
「反逆者どもめ! 大司教様を殺した偽りの王に死を! アストルの大いなる神の御名において、帝都を浄化せよ!」
黒い法衣をまとったアストル教の司祭が、禍々しい紫色の呪術杖を掲げて叫ぶ。
そこへ――。
ズザザザザザザッッ!!!
カロンの操る巨大な青と白のバスが、広場の噴水スロープをドリフトしながら強引に割り込み、両者の間に横付けの鉄の防壁となって割り込んだ。
「な、何だこの鉄の巨体は!?」
「伏兵か!? 構わん、焼き払え!」
黒装束の暗殺者たちが火炎魔法の詠唱を始めた、その瞬間。
プシューーーッ!
バスの前扉が開き、そこから一人の女性が、静かに、優雅に石畳の上へと降り立った。
黄金の長い髪を風になびかせ、神聖なまでの美貌に氷のような冷笑をたたえた美女――主神メリスであった。
「……おい、誰だあの女は?」
「関係ない、殺せ!」
弓兵たちが一斉に毒矢を引き絞り、魔法使いが業火の球を放とうとした。
メリスは、その光景をただ冷ややかな碧眼で見下ろした。
そして、小さく、右手の親指と中指を重ね合わせ――
「――失せなさい、羽虫ども」
パチンッ。
澄んだ指鳴らしの音が、広場中に木霊した。
次の瞬間。
大聖堂前広場を埋め尽くしていた数千人の視界が、眩い純白の閃光によって完全に真っ白に染め上げられた。
神の絶対の権能――『真理の選別』。
メリスは、広場にひしめく数百名の人間の中から、魂の波長を一瞬で完全にスキャンし分けた。
自らを純粋に信じる「正統なメリス教徒」、そして国を守ろうとする「国王派の兵士」たちを完全に無害な結界で保護し――
それ以外の存在――アストル教の潜入部隊、反乱に加担した腐敗貴族の私兵、そして帝国大学の息のかかった扇動者たち全員の脳内魔導神経に対し、ピンポイントで超高圧の神聖スタングレネードを直接炸裂させたのである。
ドサササササササササッッ!!!!
まるで刈り取られた麦穂のように。
あるいは糸の切れた操り人形のように。
五百人を超える反乱勢力の兵士、暗殺者、司祭たちが、一言の悲鳴を上げる暇すらなく、完全に白目を剥いて泡を吹き、石畳の上へと一斉にバタバタと倒れ伏した。
広場に残されたのは、傷一つ負わずにポカンと立ち尽くす数十名の国王派兵士と正統派修道士たち。
そして、地面を埋め尽くす、折り重なって倒れた反乱軍の絨毯であった。
「………………………………」
バスの窓からその光景を見ていたカロン、ハインリヒ大公、ギルバート、そしてドワーフ親方衆全員が、顎が外れんばかりに口を開けて完全硬直した。
ガース隊長が震える声で呟く。
「い、一瞬で……五百人以上の武装兵が……全滅した……?」
そこへ、メリスが踵を返し、大聖堂の巨大な鉄扉を蹴破って中を確認し、何事もなかったかのように戻ってきた。
大聖堂の内部でも、立てこもっていたアストル教の幹部たちが全員、床に転がって気絶していた。
メリスは髪をパッとかき上げ、バスのステップに足をかけて親指を立てた。
「だ〜いじょうぶよ! 手加減してあげたから死んでないわ! きっかり三日間は絶対に目を覚まさない深い昏睡状態にしておいたから☆」
「「「……………………」」」
手加減のスケールが狂いすぎている。
バスに乗ってきた全員が、神の絶対的な武威の前に、完全に言葉を失っていた。
しかし、メリスの怒りの矛先は、まだ半分しか収まっていなかった。
メリスは目をギラリと光らせ、運転席のカロンを指差した。
「さあカロン! 次はあそこよ! 私の大司教を誑かして、調子に乗って反乱を企てたインテリ気取りの総本山――『ゲスハルト帝国大学』へ突撃なさい!!」
「は、はいっ!!」
カロンは冷汗を拭いながら即座にシフトレバーを叩き込んだ。
青と白のメガEVバスは、気絶した敵兵の山を迂回し、次なる決戦の地――ゲスハルト帝国大学のキャンパスへと向かって、再び地響きを立てて爆走を開始したのであった。




